家庭円満を強調するものの、「夫を好きなわけではないけれど」とつけ加える女性が多く、不思議だなあと思っていた。ところが深く聞いてみると、こういう女性は多いようだ。
「なくてはならない存在」ではなくて、「いてもいい存在」派
結婚して10数年たつと、女性にとって夫は「まあ、いてもいいよ、という存在になる」と断言するのは、ミナさん(45歳)だ。大手企業で中間管理職のミナさんは、塾講師の2歳年下の夫と結婚して14年、ひとり息子は有名私立中学に通う。
「息子も中学に入ったことだし、あとは本人次第。私は見守るだけだなと一安心しています。夫はもっと息子と一緒にいる時間がほしいようですが、息子は部活に夢中。『親の役割はひとまず終わったから、あとは本人に任せようよ』と私は夫に言ったのですが、言いながら、『あなたの役割も終わったのかもね』と心の中で冷たく思っていました」
とはいえ、夏休みや冬休みには家族で旅行に出かけるし、ときには外食もする。家族の形態が変わったわけではない。
「うちは家庭円満ですよ。夫婦ゲンカもほとんどしたことがないし。だけど私は夫が好きなわけではない。でも同じ部屋の空気を吸うのもイヤというほど嫌いでもない。まあ、同居を続けても害はないなという感じです」
ミナさんは、うちは互いに放置だからと言うが、話を聞くと、夫はもっとミナさんとの時間をとりたい様子だ。
「あまりベタベタするのが好きじゃないんですよ、私。犬がいるので犬とはベタベタしていますが(笑)。大人同士だから、困ったときには助け合えればいい。夫とはそういう関係でいたいですね」
結婚当初はともかく、子どもが生まれてからはずっとそんな感じだとミナさんは言う。
「もちろん、ここ10年くらいセックスレスです。夫はときどき誘ってきますが、疲れてるからごめんねと明るく拒否しています」
社内に"気になる人"がいるが、ミナさんはそれを片思いと称して楽しんでいる。恋愛に足を掬われて仕事に支障をきたしたら困るからだ。そんなクールな40代働く女性が増えているような気がしてならない。
「好きじゃないけど、しかたがない」派
「夫を好きかと言われると迷いますね」
笑いながらそう言うのは、トモコさん(40歳)だ。結婚して10年、10歳と9歳、年子の娘がいる。
「30歳間際の駆け込み結婚、しかもデキ婚だったんですよ。もちろん嫌いなわけではなかったけど、妊娠しなかったら結婚はしなかったかなあ。もっといい人がいたと思うから」
同い年の彼は頼りない。いざというとき「役に立たない」のだという。娘が高熱を発したときも、購入したマンションに不具合が起こったときも、いつも夫はおろおろするだけ。
「優先順位をつけて処理していく能力に欠けてるんですよね。私が彼の上司だったら、使えない部下だなと思う。ただ、人がいいから一緒に住んでも不愉快というほどではない、という感じ」
トモコさんも非常に冷たい言い方だ。彼女もまた、知人と起業した会社でバリバリ働く女性だ。
「仕事で人に会う機会が多いんですが、中には本当に仕事もできる上に、判断力が抜群に優秀な男性もいる。こういう人と結婚していたら人生変わっただろうなと思うこともあります」
ただ、満点の人間を見つけるのはむずかしいし、逆に満点の人間と一緒に暮らしたら疲れるかもしれないと自分を納得させている。
「家事も育児も夫には教え込みましたが、判断力や処理能力は教えてできるものでもない」
それでも家庭は円満だ。夫にイラッとすることも多いが、そこは「修行だ」と考えていると彼女は笑った。