活躍なるか!? ベテラン選手たちの人的補償

4年ぶりのペナント制覇に向けて、意欲的に補強に臨む巨人。丸佳浩らのFA選手たちを獲得する一方で、長野久義、内海哲也を人的補償で失いました。即戦力とも言える30代選手の人的補償ですが……過去の事例ではどんな成績を残していたのでしょうか?

巨人を“追われた”2人の功労者の今季はいかに

2018年日米野球 エキシビジョンゲームでの長野久義(​​写真:AFP/アフロ)


今オフは各チームの主力選手のFA移籍が目立ち、一方で、FA移籍の代償である人的補償で移籍を余儀なくされる選手も注目を浴びました。

中でも話題になったのが巨人。2年連続のセ・リーグMVPを獲得した丸佳浩に加え、好守で知られる炭谷銀仁朗らをFAで獲得し、4年ぶりのペナント優勝に向けて余念のない補強を展開しました。その代わりに長野久義、内海哲也という長年巨人を支えた功労者を人的補償という形で流出。関係者だけでなく、ファンからも賛否両論が巻き起こる騒動となりました。

FAの人的補償と言えば、未知なる素質のある若手選手を獲得することが多いように思われますが、今回の内海や長野のような30歳を過ぎたベテラン選手を取るケースも。ベテラン選手を獲得した場合は即戦力としての期待を込められているのは確かです。

丸の人的補償で広島に移籍した長野は丸が務めていたクリーンナップの座を、炭谷の人的補償で西武のユニフォームを着ることになった内海は先発ローテーション入りをそれぞれ期待されています。
 

しかし、プロ野球の世界で30歳を過ぎた選手はかつてのような伸びしろがないことがほとんど。実際に内海は31歳のシーズンだった2013年を最後に2桁勝利から遠ざかり、長野も3シーズン安打数は2年連続で下落しています。選手としては下り坂に入ってきたと言わざるを得ないでしょう。

果たして、30歳を超えたベテラン選手の人的補償は期待通りの成績を残しているのでしょうか?
 

長野久義と福地寿樹の意外な共通点

検証したのはFA制度が始まった1993年~2018年でFA移籍の際に人的補償として移籍した30歳を超えたベテラン選手たちの移籍前の成績と移籍初年度の成績。該当したのは10選手で、野手4人、投手6人だった。まずは野手の方から見ていきましょう。

年度 選手名 移籍当時の年齢(当時)  球団 移籍前年成績 移籍初年度成績
2005年オフ  江藤智 35歳 巨人→西武 81試合 打率.172 0本塁打 4打点 52試合 打率.242 5本塁打 19打点
2007年オフ  福地寿樹  32歳 西武→ヤクルト 117試合 打率.273 0本塁打 20打点  131試合 打率.320 9本塁打 61打点 
2013年オフ 鶴岡一成 36歳 DeNA→阪神 108試合 打率.250 3本塁打 40打点 77試合 打率.221 0本塁打 12打点
脇谷亮太 32歳 巨人→西武 49試合 打率.244 0本塁打 8打点 96試合 打率.263 2本塁打 20打点

※30歳以上の人的保障(野手/球団名は当時のもの)

4人中、出場機会を前年よりも増やしたのは福地寿樹と脇谷亮太の2人。中でも前年以上の活躍を見せたのが、石井一久の人的補償でヤクルトへ移籍した福地です。

俊足を武器に1番打者に定着すると、プロ入り15年目で初となる規定打席に到達して、盗塁王のタイトルも獲得しました。移籍前に100試合以上に出場していたのはこの福地だけ。これを見ると昨季116試合に出場した長野も新天地で前年以上の活躍をしても不思議ではありません。
 

内海哲也の復活を裏付ける2人の先例

年度 選手名 移籍当時の年齢(当時) 球団 移籍前年成績 移籍初年度成績
2006年オフ  吉武真太郎  31歳 ソフトバンク→巨人 60試合3勝2敗20H 防御率3.02 16試合2勝0敗 防御率1.89
工藤公康 43歳 巨人→横浜 13試合3勝2敗 防御率4.50 19試合7勝6敗 防御率3.91
2007年オフ 岡本真也 33歳 中日→西武 62試合5勝2敗33H 防御率2.89  47試合0勝2敗18H 防御率3.83 
2011年オフ 藤井秀悟 34歳 巨人→DeNA 1試合0勝0敗 防御率5.40 16試合7勝7敗 防御率3.75
2012年オフ 馬原孝浩 31歳 ソフトバンク→オリックス  一軍登板なし 3試合0勝0敗1H 防御率0.00
高宮和也 31歳 オリックス→阪神 1試合0勝0敗 防御率9.00 1試合0勝0敗 防御率27.00

※30歳以上の人的保障(投手/球団名は当時のもの)

投手6人を見ると、前年に故障で苦しんだ馬原孝浩、前年も一軍での登板がわずか1試合だった高宮和也はほぼ横ばいであまり戦力になっていません。ブルペンを支える中継ぎ投手たちは前年の登板過多が災いしたためか登板数を10試合以上減らし、さらに防御率も悪化しているケースが目立ちます。

その中で即戦力としてチームに貢献したと言えるのが工藤公康と藤井秀悟。両者ともに移籍前よりも登板数を増やしただけでなく、勝ち星も大幅に増加し、見事に先発ローテーションを守りました。

ちなみに工藤も藤井も巨人からFA人的補償で移籍してきた左の先発投手。これを見ると、先人2人とまったく同じプロフィールを持つ内海哲也も西武で前年以上の活躍を見せる可能性が高そうです。
 

FA人的補償の賛否はどうなる

いかがでしたか? 過去の例と照らし合わせてみると、内海哲也も長野久義も成功するデータが揃っていることがわかります。それだけに今季、2人がどんな成績を残すか…両選手の移籍を悔やむ巨人ファンでなくとも注目してみてみましょう。


 

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