5G時代の到来を視野に捉えた次世代ハーレーダビッドソンが登場

2019年1月8日から11日にかけて、アメリカ・ラスベガスにて開催された世界最大級の家電見本市「CES 2019」にハーレーダビッドソンの電動バイク「LiveWire」が登場しました。さらに、同じく電動モーターを動力とするコンセプトモデル2台もが展示。それぞれの特徴とそこから見えてくる電気バイクのこれからを読み解いていきます。

2019年1月8日から11日にかけて、アメリカ・ラスベガスにて開催された世界最大級の家電見本市「CES 2019」にハーレーダビッドソンの電動バイク「LiveWire」が登場しました。さらに、同じく電動モーターを動力とするコンセプトモデル2台も展示。それぞれの特徴と、そこから見えてくる電気バイクのこれからを読み解いていきます。
 

電動ハーレー「LiveWire」販売価格は300万円超え!

待ち望んだ販売価格は29,799ドル。2019年1月現在の平均レートで換算すると、約320万円というところ。同じハーレーならロードキング スペシャル(321万8100円〜)、独BMW K 1600 GT(311万7000円〜)、伊ドゥカティのスーパースポーツ「パニガーレV4S」(328万円 / 税込)と並ぶ価格帯です。ただ29,799ドルというのは北米での販売価格なので、日本に輸入されると関税がかかり350万円ほどになるのではないでしょうか。
 

販売開始時期も2019年冬(すでに事前予約受付中)とのことですが、これもあくまで北米エリアでのこと。日本を含む他の地域での販売は今のところ未定のよう。
 

今回新たに発表されたのは、ハーレー専用アプリとクラウドでペアリングさせられる最新の通信プラットフォーム「H-Dコネクトサービス」について。このサービスによって、以下のことができるようになります。
 

1.モーターサイクルの状態を随時確認

LiveWireのバッテリーの充電レベルおよび走行可能距離、周辺にある充電ステーションも探し出してくれる機能です。
 

2.警告機能と追跡情報

GPS機能の搭載により、車両へのいたずらやオーナー以外の人間による移動などをいち早く察知、ペアリングするスマートフォンにお知らせしてくれる機能です。
 

3.サービスリマインダーと通知

モーターやバッテリーはもちろん、タイヤやサスペンションといった消耗品のケアもモーターサイクルを所有する上で必須の項目。このケアに関するメンテナンス時期の通知も行ってくれます。
 

▼Harley-Davidson H-D Connect
https://youtu.be/exUDbWXi4Do


走行性能等については、1回の充電で走行可能な距離は推定110マイル(約177km)、さらに停車状態からスタートし、わずか3.5秒以内に60マイル(時速96km)に到達する機能を有しているとのこと。つまり、100メートル向こうに見えたバイクが数秒で目の前を通り過ぎていく感じですね。
 

電動モーターを基盤とする2台のコンセプトモデル

さらにハーレーダビッドソンは、電動モーターを動力とする2台の新たなコンセプトモデルをこの「CES 2019」にて公開しました。
 

パッと見た印象はBMX(バイシクルモトクロス)。細身のフレームながらモーターサイクルのそれに見られるようなテレスコピックフォークにサスペンション機能を備えたフレーム & スイングアーム。凸凹がついたオフロードスタイルのタイヤもまさにBMXのそれ(枯葉で埋め尽くされた公園という背景もBMXらしさ満載ですね)。
 

胴体部分に見えるのは、おそらくバッテリーと電動モーターでしょうか。元々BMXは徹底的に無駄を削ぎ落とした競技向けの軽量バイシクルで、アクロバティックなアクションを楽しめるところに大きな魅力を持つもの。バッテリーの重さもあってBMXらしいアクションは難しくなりますが、一方でストリートシーンでは人力を力強く手助けする働きを見せることは間違いないでしょう。
 

もう1台、サイズ感は間違いなくシティコミューター(スクーター)。フレーム下部に備わる大きくて黒いスクエアボックスにモーターとバッテリーが搭載されている模様。ちょうど胴体のところが空洞なのが斬新ですね、あえて跨いで乗る骨格になっています。スカートを履いては乗れませんね。
 

それでいて、カスタムハーレーの世界で言うところの"ロボットハンドル"のようなハンドルバーに中央が空洞ながら囲むようにLEDで照らすラウンド型ヘッドライト、ファットタイヤ & スポークホイールというフットワークに"ハーレーらしさ"を感じずにはいられません。両脚を置くフットボードがスケートボードスタイルなのも心憎い演出ですね。
 

これまで大型クルーザーを数多く手がけてきたハーレーダビッドソンの製品とは思えないほどコンパクトなモデル群。実際に市販されるときの姿が今から待ち遠しいですね。
 

5G時代の到来を見据えた"進化するハーレー"

同じく2019年1月に開催された「北米国際オートショー」(デトロイトモーターショー)とも連携している「CES 2019」。それゆえのハーレーダビッドソンの出展とも言われていますが、何よりこの「CES 2019」が注目されているのは、次世代通信システム「5G」元年最初のビッグイベントであること。そんな未来を占う主要メーカー群による最新機器のお披露目の場で、とりわけ自動車をはじめとする製造業にも大きな影響をもたらすと言われている5Gなだけに、どこよりも早く未来のモーターサイクルシーンを牽引しようとするハーレーダビッドソンの姿勢の表れでもあるのでしょう。
 

「5G」のイメージを見てみたい方は、総務省が手がけたこちらの映像をどうぞ。こんな世界が実現するかもしれません。
 

▼Connect future ~5Gでつながる世界~(総務省動画チャンネル)
https://youtu.be/ArRWXopUHAQ
 

2018年7月、ハーレーダビッドソン モーターカンパニーは「More Roads to Harley-Davidson」なる中期経営計画を発表、電動ハーレー「LiveWire」を含む4台の次世代型モーターサイクルのピクチャーを配信しました。
 

ガソリンエンジンから電動モーターまたは燃料電池を動力とする時代へ変わっていくなかで、米電気自動車メーカー「Tesla」(テスラ)のように、これまでの既存メーカーに代わって新規メーカーが続々と参入してくるのは間違いありません。ハーレーダビッドソンもメーカーとして、進化する時代に合わせた対応が求められるわけです。
 

日本にも押し寄せてくる5G時代。その普及とともにインフラがどんどん整備されていけば、今私たちの身の回りにあるものの姿もガラッと変わってしまうことでしょう。まずは自動運転システムに注目が集まるオートモーティブの世界でも、まったく違う次元の姿に変わる可能性すらあります。
 

ハーレーダビッドソンによる電動バイク「LiveWire」やこの2台のコンセプトモデルは、そうした未来への対応を常にアップデートしていくという姿勢の表れ。10年後、20年後のバイクがどんな姿になっているか今は想像するほかありませんが、この「LiveWire」をひとつの指標と見ることはできます。
 

モーターサイクリストとして気になるのは、その仕上がり具合でしょうか。実車と映像がお披露目されていますが、この市販用LiveWireに試乗したジャーナリストは未だいません。つまり、客観的な視点でインプレッションされた情報は出ていないのです。
 

ガソリンエンジンと電動モーターとでは、あらゆる挙動が異なります。もちろん最初から否定的に捉えるのではなく、"新しいモーターサイクルとしてどうありたいか"についてH-D開発陣がどのように想像したのかを知ることが、ポイントになると見ています。
 

雑に仕上げていたらその程度の情熱、ギャップはあれどライディングプレジャーを感じさせてくれる仕上がりなら「さすが!」。後者が味わえることに期待を抱きつつ、試乗できる日を楽しみに待ちたいと思います。

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