結婚したい。アラフォーの中には、焦燥感さえ覚えている女性もいる。だが、そのためにどこまで我慢すればいいのだろうか。
彼の浮気が発覚
結婚なんてしなくてもいい。ずっとそう思っていたアサミさん(40歳)だが、39歳の誕生日を迎えたとたん、なぜか気持ちがざわついた。
「やっぱり40歳までには結婚したい。その気持ちが強くなったんです」
4歳年下の彼とつきあって2年がたっていた。彼からは何度かプロポーズされていたが、そのたびに「今は仕事が忙しい」「部署が変わって覚えることだらけでまだ結婚できない」と先延ばしにしてきていた。
「誕生日の日、彼に『一緒になって』と私からプロポーズ。彼は『ようやくその気になってくれたんだ。もう諦めるしかないと思ってた』と喜んでくれました。すぐにでも婚姻届を出そう、いや、その前に親へは報告しなければとふたりでバタバタしはじめたんです」
うれしい忙しさだった。結婚式など挙げなくてもいい、友人や仕事でお世話になった人たちを招いてパーティーをしようとふたりで盛り上がった。
「彼でなければならないという気持ちではなかったけど、彼しかいないという状況ではありました。結婚したいと思ったときつきあっている人がいれば、当然、その人が候補になりますよね」
自分の選択を信じるような結婚ではなかったが、彼は「やさしくていい人」である。つきあっている2年間で、怒ったところを見たこともなかった。
「私がカッカときていても、『まあまあ』ととりなしてくれるタイプ。私には合ってるんじゃないかなと思っていました」
すぐに幸せな結婚生活が始まると思っていた。
女性からの電話
彼のほうが広いところに住んでいたので、彼女が彼のマンションに引っ越すことになった。荷物を整理していたある日、見知らぬ番号から携帯が鳴った。
「なんと知らない女性からでした。『私、彼と婚約してるんですけど』といきなり言うんです。はあ?と言ったら彼の名前を出してきた。もう5年もつきあっているって。『あのね、教えてあげるけど、もうひとりいるわよ。その子とは2年半くらいになるんじゃないかな。でも彼は私のものだから』と」
驚いたアサミさんはすぐに彼に連絡をとった。彼はアサミさんの元へ飛んできて、それは誤解であり、その女性は彼のストーカーなのだと言い張った。もうひとりの女性のことは存在すら知らないと言う。
「『ボクを信じてくれないの? きみの愛はそんな弱いものだったの?』と彼に涙目で詰め寄られて、信じると言ってしまった。そう言うしかなかったんです」
だが一緒に住み始めてからも、彼には女の影がつきまとっていた。休日なのに出勤したり、夜中に急にコンビニに出かけたり。それでも彼女は彼を信じようとした。お互いひとり暮らしが長いから、たまにはひとりになりたいときもあるよね、と夜中にコンビニに行って1時間も帰ってこない彼を責めたりはしなかった。
「ある日、ふたりで婚姻届を書こうとしたんです。だけどそのとき、彼の携帯が鳴った。彼は電話を無視したんです。出ればいいのにと言ったけど、表情は動かなかった。そのとき、何か憑きものが落ちたんですよね。『ごめん、これ、書けない』と婚姻届を破り捨てました」
結婚したかった。だけど「どうしても彼と」ではなかった。その事実を、彼女自身が初めて認めるときが来たのだ。
あれから半年、彼女は仕事に精を出している。あのときなぜ、あんなに結婚したかったのだろうと思いながら。
「結婚するのが普通だ、そして私は普通の人ができることができていないと思い込んでいたからでしょうね。ずっとそんな意見に反発しながら生きてきたはずなのに、40歳を意識したら急に結婚しなければいけないんだと思っちゃって。40歳になってみたら、別になんてことはなかったです。自分が本当に結婚したいと思っているわけでもなかった。まあ、結婚は人生のオプションってことにして、日々を楽しもうと思っています」
アサミさんは弾けるような笑顔でそう言った。