守備は評価されにくい? ゴールデングラブ賞受賞捕手と年俸の関係性

12球団ベストとなる盗塁阻止率を叩き出し、日本シリーズでも活躍を収めた甲斐拓也。その強肩ぶりは甲斐キャノンと称され、ベストナインに選出されましたが……意外にも年俸査定はシビアなものでした。果たして守備の巧さと年俸はどんな関係があるのでしょうか?

2年連続のゴールデングラブ賞受賞もアップ額は…


オフシーズンの恒例行事とも言える契約更改。各チームとも昨年中にほとんど終えて、今季に備えていますが、その契約更改で注目を集めたのが昨年の日本シリーズMVP、甲斐拓也です。

シーズン中から12球団一となる盗塁阻止率.447を記録するなど、強肩で知られる甲斐は日本シリーズでは新記録となる6連続盗塁阻止を達成し、福岡ソフトバンクホークスの日本一に大きく貢献。愛称の「甲斐キャノン」は今や全国区の知名度を獲得しました。シリーズ終了後の表彰では2年連続のゴールデングラブ賞を受賞。球界ナンバーワン捕手の座を不動のものとしました。

しかし、12月に行われた1度目の契約更改では掲示額の年俸5500万円を保留。前年の4000万円からアップしたとはいえ、アップ額1500万円は少々辛口な査定と言えるでしょう。結果的に2度目の交渉時に2500万円アップとなる6500万円でサインし一件落着となりましたが、近年のプロ野球選手は契約更改では一発サインがほとんど。甲斐の保留はちょっとしたニュースにもなりました。

華麗な守備ばかりが目立つ甲斐ですが、シーズン打率はわずか.213で、規定打席にも80打席足りないなど打撃的にはイマイチという評価も。もともと野手の年俸は打率、本塁打、打点の打撃3部門が評価される傾向があり、守備に特化した選手、特に捕手は年俸が上がりにくいという側面があります。

そこで、過去のゴールデングラブ賞受賞者をもとに年俸査定に影響があったかを検証しました。
 

2000万円アップがボーダーライン!?

検証したのは過去4シーズン(2015年~2018年)のゴールデングラブ賞受賞者でシーズン打率が.250を切っていた捕手たち。打率.259を記録した2018年のセ・リーグ受賞者梅野隆太郎(阪神)を除く延べ7人が該当しました。まずはセ・リーグの3選手を見ていきましょう。

シーズン成績    
受賞年  受賞者 (球団名)  試合  打率  本塁打  打点  盗塁阻止率  年俸推移
2015 中村 悠平 (ヤクルト) 136 .231 2 33 .315 4000万円→6700万円 (68%・2700万円アップ) 
2016 石原 慶幸 (広島) 106 .202 0 17 .333 1億円→1億2000万円 (20%・2000万円アップ) 
2017 小林誠司 (巨人) 138 .206 2 27 .380 5000万円→5400万円 (8%・400万円アップ) 

※球団名は在籍当時のもの ※NPB公式HPよりデータ引用

ゴールデングラブ賞獲得加え、さらにレギュラーとして100試合以上に出場していることもあり、全選手アップしているのが特徴的。加えて気になるのがそのアップ額です。2015年の中村、翌2016年の石原はチームがリーグ優勝した年ということもあり2000万円以上もアップしていますが、裏を返せば優勝しても2000万円前後が限度額とも言えそうです。

2017年の小林誠司に至ってはチームが4位に終わったこともあってか、増額とはいえわずか400万円。資金力が豊富なことで知られる巨人にしては厳しい査定になったと言わざるを得ないでしょう。やはり、守備がいいだけでは年俸は上がりにくい傾向があると言えそうです。
 

歴代受賞者の意外な共通点とは…?

続いてはパ・リーグの4選手を見てみましょう。

シーズン成績   
受賞年  受賞者 (球団名)  試合  打率  本塁打  打点  盗塁阻止率  年俸推移
2015 炭谷 銀仁朗 (西武) 133 .211 4 35 .361 9000万円→1億円 (11%・1000万円アップ) 
2016 大野 奨太 (日本ハム) 109 .245 5 35 .310 4500万円→5500万円 (22%・1000万円アップ)
2017 甲斐 拓也 (ソフトバンク) 103 .232 5 18 .324 900万円→4000万円 (344%・3100万円アップ) 
2018 甲斐 拓也 (ソフトバンク) 133 .213 7 37 .447 4000万円→6500万円 (62.5%・2500万円アップ) 

※球団名は在籍当時のもの ※NPB公式HPよりデータ引用

4人の中でチームが優勝しなかったのは2015年の炭谷のみ。セ・リーグは20%程度のアップ率で、2000万円台が相場と言えましたが、パ・リーグの方がややシビアな傾向がみてとれます。相場よりも高額な年俸となったのは2017年の甲斐のみで、これを見ると先述した契約更改で一度保留にした件のなんとなく頷けます。

他の特徴としては、炭谷も大野も後にFA権を行使して他球団に移籍しているところ。大野は翌2017年のオフに中日へFA移籍を果たして、3年総額2億5000万円で契約。そして炭谷も2018年のオフに巨人へFA移籍。1億5000万円の3年契約という好条件を勝ち取っています。

年俸の低評価がFA移籍につながったとは一概に言えませんが、2人ともゴールデングラブ賞受賞後に移籍したというのが奇妙な一致。そう考えると、2年連続で相場を超える甲斐への“大盤振る舞い”はそうした流失を防ぐためかもしれません。
 

2019年の受賞者はどうなる?

いかがでしたか? 打撃タイトルと違い、数字に直接現れるものではないためかイマイチ年俸に反映されにくい捕手のゴールデングラブ賞受賞者たち。こうやってみると、少々気が早い話ですが、2019年の捕手のゴールデングラブ賞受賞者の年俸査定が早くも気になるところです。今シーズンの受賞者は果たして、誰なのでしょうか…?

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