1月2日、3日に第95回東京箱根間往復大学駅伝競走(箱根駅伝)が行われ、東海大学が初の総合優勝を果たしました。本稿ではレースを振り返りたいと思います。
往路優勝は東洋大学!
◆1区
1区はモグス・タイタス選手(東京国際大学3年)のエントリーがあったこともあり、ハイペースが予想された結果、多くの有力選手が集まりました。
しかし、レースは予想に反し、スローペースで推移。終盤抜け出した西山和弥選手(東洋大学2年)が2年連続で区間賞を獲得しました。僅差の区間2位に中山顕選手(中央大学4年)が入りました。個人的には区間10位の藤木宏太選手(國學院大學1年)の健闘が印象に残りました。また関東学生連合の近藤秀一選手(東京大学4年)は4回目の学生連合選出で念願の出場となりました。
◎区間賞 西山和弥選手(東洋大学2年)
◆2区
花の2区、と言われるエース区間の2区。先頭の山本修二選手(東洋大学4年)、堀尾謙介選手(中央大学4年)がお互いにうまくハイペースで引っ張りあい、互いに区間上位をマークしましたが、終始両者の後方で気を伺っていたライモイ・ヴィンセント選手(国士舘大学1年)が終盤でペースアップ、2区終了時で国士舘大学がトップにたちました。
また、塩尻和也選手(順天堂大学4年)が1区19位で襷をもらいながら、10人抜きの快走で区間2位(日本人歴代1位の好タイム)を記録しました。区間賞は13人抜きを果たしたパトリック・マゼンゲ・ワンブィ選手(日本大学4年)が獲得しました。
◎区間賞 パトリック・マゼンゲ・ワンブィ選手(日本大学4年)
◆3区
3区は故障しているとの報道もあった森田歩希選手(青山学院大学4年)が区間新記録の快走で8位から首位へ浮上しました。
10000m27分台の自己記録を持つ阿部弘輝選手(明治大学3年)、遠藤大地選手(帝京大学1年)もそれぞれ好走し、下位に低迷していたチームを押し上げました。来年は区間新記録に挑んでほしいと思います。
◎区間賞 森田歩希選手(青山学院大学4年)
◆4区
4区は青山学院大学を追う相澤晃選手(東洋大学3年)が区間新記録の快走で首位へ浮上。旧コースの藤田敦史さん(現・駒澤大学ヘッドコーチ)の区間記録をも上回り、大きなインパクトを残しました。
下位でスタートした清水歓太選手(早稲田大学4年)と奈良凌介選手(大東文化大学3年)も区間3位、5位と好走しました。館澤亨次選手(東海大学3年)も1500mが専門ながら、区間2位の走りで2位まで浮上しました。
◎区間賞 相澤晃選手(東洋大学4年)
◆5区
山登りの5区には、初挑戦の浦野雄平選手(國學院大學3年)が区間賞、西田壮志選手(東海大学2年)が区間2位をマークするなど、新星が現れました。
一方で、実績者も多数出場。前回大会区間賞の青木涼真選手(法政大学3年)は区間3位。田中龍誠選手(東洋大学2年)は区間8位でしたが、首位でもらった襷をそのまま守り、2年連続で往路優勝のゴールテープを切りました。
◎区間賞 浦野雄平選手(國學院大學3年)
復路優勝は青山学院大学
◆6区
全体的にコンディション(道路状況や気温など)が良かった6区は、好記録が続出しました。
往路6位からの巻き返しを図りたい小野田勇次選手(青山学院大学4年)が区間新記録の快走も、区間3位の今西駿介選手(東洋大学3年)、区間2位の中島怜利選手(東海大学3年)も前年より記録を短縮し、思ったより差が詰まりませんでした。過去2大会を区区間上位で走った佐藤敏也選手(法政大学3年)が1区に回り、6区が未知数だった法政大学でしたが、坪井慧選手(法政大学3年)が区間4位で走り、次回大会にも期待が集まります。
◎区間賞 小野田勇次選手(青山学院大学4年)
◆7区
7区は事前の報道などで勝負のポイント区間としてあげられていた区間です。
区間記録保持者でもある林奎介選手(青山学院大学4年)が2年連続で区間賞を獲得し、5位から3位へ浮上。区間2位の阪口竜平選手(東海大学3年)は首位の東洋大学との差を1分以上詰め、優勝をぐっと近づける走りをしました。また、芳賀宏太郎選手(東京国際大学1年)は17位でスタートしましたが、区間6位と上位で走り切りました。
◎区間賞 林奎介選手(青山学院大学4年)
◆8区
最古の区間記録が残っていた8区ですが、小松陽平選手(東海大学3年)が21年ぶりに区間記録を更新し、東海大学が初めて首位へ浮上しました。鈴木宗孝選手(東洋大学1年)も区間2位の好走でしたが、小松選手のタイムが良すぎました。小松選手はこの活躍もあり、最優秀選手賞を獲得しています。また、7名の1年生が出走した区間でもありました。
◎区間賞 小松陽平選手(東海大学3年)
◆9区
今季、出雲駅伝・全日本大学駅伝で区間賞を獲得している吉田圭太選手(青山学院大学2年)が箱根駅伝でも区間賞を獲得しました。前を走る東海、東洋大学とは大きく離れていましたが、冷静なペース配分が印象的でした。
9区は区間3位の湊谷春紀選手(東海大学4年)、区間5位の堀合大輔選手(駒澤大学4年)など、各校のキャプテンが5名出走し、復路の重要区間と位置付けているチームが多い区間でした。
◎区間賞 吉田圭太選手(青山学院大学2年)
◆10区
最終10区は23kmの長丁場であり、最後に順位変動も考えられる区間です。
鈴木塁人選手(青山学院大学3年)は東海大学を追うため、途中まで区間新記録ペースで推移していましたが、10区特有のビル風などもありペースダウン。それでも区間2位で走破しました。
7位でスタートした星岳選手(帝京大学2年)が2人を抜く快走をみせ、区間賞を獲得。郡司陽大選手(東海大学3年)が区間3位で走り、初優勝のゴールテープを切りました。
◎区間賞 星岳選手(帝京大学2年)
大混戦の第95回箱根駅伝。東海大が初優勝できた決め手は?
終わってみれば東海、青山学院、東洋大学の3校が「11時間切り」を達成するなど、第95回箱根駅伝はハイレベルな大会となりました。
戦前は「青山学院大学が1強」という評判がありましたですが、往路を6位で終えます。このとき往路優勝の東洋大学とは約5分差、2位の東海大学とは約3分差がありました。しかし青山学院大学は復路では東洋大学を抜き、総合2位に浮上。復路優勝も果たしています。多少の誤算もあったものの、区間賞4つ獲得し、総合2位になった青山学院大学は、やはり力がありました。
東洋大学も戦前の予定通り、往路から逃げ切るレースを展開し、実力を発揮しました。上位2校との実力は紙一重の差だと思いますが、惜しくも総合優勝を逃したのは選手層の厚さが一歩及ばなかったところにあるのではないでしょうか。
優勝した東海大学の区間賞は8区の1つだけでしたが、全区間においてブレーキがかからなかったことが優勝した要因なのではと思います。また今大会では主力選手が不在であることに加え、16名にエントリーメンバーに入れなかった選手にも有力選手が多数いるため、次回大会の連覇にも期待が集まります。