今や夫たるもの、育児や家事に関わらないわけにはいかない。考えれば、夫婦ふたりで子どもを育て、ふたりで家庭をやっていくのは当然のこと。
電車の中で不在の妻が責められる
リョウジさん(39歳)は、6歳、4歳と1歳の子を育てる父親。先日、いちばん下をベビーカーに乗せ、上のふたりをともなって電車に乗った。
「その日は僕が休みで妻は出勤。真ん中の子の誕生日だったから、妻の実家に僕が子連れで行って、妻は会社から実家に直行ということになっていました。電車はそんなに混んではいなかったけど、6歳と4歳の男の子は静かにしていてくれない。ずっと『シーッ』『静かにして』と言いっ放しでした」
ただ、車内の客たちの中にはふたりの男の子のやりとりに笑っている人もいた。そんなとき60歳前後とおぼしき女性が声をかけてきたという。
「奥様は? いらっしゃらないの?」
リョウジさんが妻は仕事だと答えると、「ご主人に子どもを3人も預けて働いてるの? いいご身分ね」と返された。
「は?と思いました。働かなくていいほうがいいご身分なのではないか、と。その方は子どもを父親がひとりで見ていることに違和感があったんでしょうね」
それがわかったリョウジさんは、「うちはふたりで子どもを育てていますから」とやんわりと言った。妻が責められている気がしたからだ。
いろいろな偏見に満ちている
女性であろうと男性であろうと、子ども3人を連れて外出するのは大変なこと。だがそうせざるを得ないこともある。
「たとえば女性が日曜日に子どもを3人連れて出たら、夫は何をしているんだろうと思われる。平日に僕が子どもを連れていけば、妻は何をしているんだろうと責められる。ここにはいろいろな偏見があるんだなと思いました。夫婦ふたりが揃っていなければいけない、男が子育てしていると妻は何をしているんだと責める風潮。僕だって電車の中でその女性に妙なことを言われていい気持ちはしませんでした。人にはそれぞれ事情がある。もし僕がひとり親で育てていたら、もっと不愉快だったでしょうね」
世の中、何をしてもしなくても、いろいろなことを言う人はいる。だが、「男は外で働くもの」「女は家で家事や子育てをするもの」という固定概念に縛られている人がいる限り、穏やかに子育てをすることはむずかしい。
「どういう状況であれ、子連れのママやパパに優しい世の中になってくれればいいなと心から思いますよ」