今年も12月30日から冬の風物詩、全国高校サッカー選手権が開幕する。近年のサッカー界ではクラブユース出身選手の活躍が目覚ましいが、大会としての面白さで言えば高校選手権は全サッカーファンに観てほしい。
その日、その場限りの舞台
高校選手権の魅力の1つは、負ければ2度とそのチームで戦うことはなくなるという儚さ。このチームは上位にくるであろうという算段で観戦スケジュールを立てていると、活躍を観ぬまま敗退してしまうということもある。だからこそ高校選手権を見るならば1回戦を優先したい。
また、1つの会場ですべての試合を行う甲子園と違い、高校選手権は関東近郊の各地のスタジアムで同時刻に複数試合を開催。さらに、全試合がテレビ中継されるわけではない。
1回戦から3回戦までは各都道府県の放送局が自県の高校の試合、もしくは自県代表を破ったチームの試合のみ放送。だからこそ見たいチームや選手がいればスタジアムに足を運ぶ必要がある。
伝説となった1回戦
ここまでオススメするのは、1回戦ながらも強く記憶に残る試合が数多くあったからだ。その中の1つが2016年の聖和学園と野洲高校の1戦。
宮城県の聖和学園は超ドリブル特化型のチームだ。センターバックであろうと自陣深くであろうと、ボールを持ったら必ず仕掛ける。1人2人は平気でかわす。
そんな唯一無二な聖和学園と、同じく狭いエリアでのテクニックによる崩しを追求した野洲高校が1回戦で対戦した。
互いが「この相手は狭いエリアを崩しにくる。ロングキックなんて蹴らないだろう」と、相手の美学を信じたが故に、ピッチの1/8くらいのエリアに敵味方合わせて16人程度の選手が密集した中でテクニックを見せ合うブラジルのストリートで行われるような異質な試合だった。
このように、高校サッカーには名門の意地にかけて優勝を目指す常勝のチームもあれば、自分たちのサッカーを貫くことに重きを置く美学重視のチームもある。これは勝利や育成が義務づけられていない高校サッカーだからこそ見ることができるものだろう。
今大会は両校ともに全国出場を果たせなかったのも、この美学がリスクとなった結果かもしれない。勝利を取りこぼしがちなスタイルのチームも観られるため、1回戦はおもしろいのだ。
今年の注目カードは?
高校選手権の1、2回戦を見に行くのであれば、フクダ電子アリーナに行けば間違いないという説がある。都心から遠いのがネックだが、市立船橋、流通経済大柏、八千代高校など、全国で1番の激戦区である千葉県代表の試合があるからだ。今年は流通経済大付属柏高校が1回戦シードのため、1月2日の徳島市立戦で登場する。全国屈指の強豪の試合、是非ご覧いただきたい。
また、今年の高校選手権は好チームが同じブロックに固まっている。中でも桐光学園、大津高校、青森山田が固まった激戦のブロックは必見だ。最大の注目カードはニッパツ三ツ沢球技場で12月31日に開催される同ブロックの強豪対決、大津高校(熊本)対桐光学園(神奈川)になるだろう。
昨年の主力が数多く残り、湘南ベルマーレ内定の福島隼斗や世代別代表を数多く抱える大津と、今夏のインターハイ準優勝でU-16日本代表のエースストライカーの西川潤擁する桐光。今年必見の2チームの対戦は見逃せない。
チケット1枚で2試合観戦可能なので、同会場に行った際は、直後に開催される東山高校(京都)対丸岡高校(福井)も観ておきたい。東山高校もインターハイベスト4の注目チームだ。
高校サッカーの儚さ
筆者は今大会、埼玉県予選準決勝で昌平高校を見て今大会の優勝候補だと確信していた。しかしその1週間後、決勝で浦和南高校に敗れ敗退。あの技術、判断力に優れた洗練されたサッカーを2度とみられなかった。しかしそれこそが高校サッカーの儚さ。だからこそ読者の皆様には気になったチームの試合には1日でも早く足を運んでほしいと思う。
そして昌平を破った浦和南高校の初戦の相手は優勝候補の東福岡。こちらも熱い試合になることだろう。