「自分の居場所」はどこにある?

「自分の居場所」という言葉がある。居場所が見つからないと、常に精神的な放浪をすることになる。イメージとしては独身者に多そうだが、「私はどこにも居場所がない」とはっきり言うのはキヨカさん(40歳)だ。3歳年下の夫とは結婚して9年、7歳の娘もいる身だ。

「子どものころから親に否定されて育ってきたんです、私。だから親のいる家庭が、自分の居場所だなんて思えなかった。働き始めてひとりで暮らすようになって、狭いアパートの一室が自分の居場所だと思えるようになったけど、結局、居場所って場所のことではない、人とどれだけ関われるかの問題なんですよね」

仕事に邁進したけれど、職場の人間関係もうまくいっているとは思えなかった。妥協したり人に合わせたりすることが苦手なのだ。もちろん、自分が結婚して子どもをもつなんて考えてもいなかったという。

それなのに30歳のときに出会った年下の彼に熱烈に口説かれ、同棲。そして結婚を決意できないうちに妊娠した。

「子どもができてみたら、かわいくて。産休だけで職場に戻るはずが育休もしっかりとっちゃいました。だけどあの時期だけでしたね、私はこの子に必要とされている。だからここにいなければ、ここが私の居場所なんだと思えたのは」

子どもを育ててみて、子どもは思うようにはならない、別人格だと思い知らされた。同時に、どうして母親はあれほど自分を否定したのかもわかったような気がした。
 

夫もしょせん他人

夫とは仲が悪いわけではない。だが、しょせんは子どもを通してつながっているだけのような気がするとキヨカさんは言う。

「もともと他人ですからね。ときどき、夫の寝顔を見ながら、まったく知らない他人だなと思うことがあります。自分が夫として最終的には選択したはずなのに」

子どもを通じての母親同士のつきあいにも苦労している。

「あまりつきあいたくはないけど、つきあわざるを得ないこともあります。理不尽なことを言うおかあさんがいると、我慢できなくなって『それは筋が通らない』『論理的におかしい』なんて言っちゃうんですよ、私。長々と無駄話をしていて何かが決まらないことにいらいらするし。夫には『人づきあいってほとんどムダだけど、それを楽しむことが大事なんじゃないの?』なんて言われて、また怒ったりして」

常に息苦しいし、生きづらい。会社の産業医に相談したこともあるが、性格的なものは自分で変えていくしかないと言われた。

「どこにいても居場所だと思えない。こんな性格を受け継いだら娘に申し訳ないと思うから片手でしっかり現実世界を握っているつもりなんですが、もう片方の手ではいつも居場所を探している。私みたいな女って不倫に落ちやすいのかもしれませんね」

おかしなことを言うなと思ったら、予想通り仕事を通じて知り合った人に心をもっていかれているのだという。

「不倫の恋に居場所などないとわかっているから、今は必死に自分の気持ちを抑えています」

家庭が大事、娘が大事と毎日、自分に言い聞かせているそうだ。居場所を求めて心彷徨う女性にとって、不倫という名の恋は格好の逃げ道になりやすい。