秋になると、プロ野球界は出会いと別れのシーズン。今回は今季現役を引退する選手たちからファンに愛され続けた5名をピックアップして紹介。彼らのプレーと名シーンを中心に振り返っていきます。
2018年惜別球人その1:新井貴浩(広島)
広島ファンだけでなく、プロ野球ファンなら誰もが愛している選手と言えば新井貴浩。後輩選手たちからもたびたびイジられ、他球団のファンからも「新井さん」と呼ばれていたスラッガーは9月5日に今季限りでの引退を表明しました。
1998年のドラフト会議で6位指名された新井は、入団当初はあまり期待されていませんでした。しかし、並外れた努力でプロ入り1年目から1軍で活躍。2002年にはオールスターゲームにも出場し、2005年には初の打撃タイトル本塁打王を獲得しました。
そんな新井は2007年オフ、敬愛する金本知憲が在籍する阪神への移籍を目指してFA権を行使。移籍後も2011年に打点王を獲得するなどの活躍を見せましたが、不振に終わった2014年オフに自由契約となって、再び広島へ戻りました。
そして移籍2年目の16年、新井は主力としてチームを牽引しつつ、自身の通算2000本安打を達成。そして広島を25年ぶりとなるリーグ優勝へと導きました。20年目となる今季は63試合の出場にとどまりましたが、巨人と戦ったクライマックスシリーズ第2戦では代打で出場し、同点タイムリーを放つなどその勝負強さはいまだ健在。ファンが引退を惜しむのも納得です。
2018年惜別球人その2:岩瀬仁紀(中日)
通算1000試合登板。投手の分業制が定着した現在のプロ野球界ではまずなしえない大記録と言われていましたが、それを達成したのがNPBの通算最多セーブ記録保持者である岩瀬仁紀です。長年中日のクローザーを務めた彼も今季、ついにマウンドから降りることになりました。
プロ1年目から中継ぎ投手として活躍していましたが、落合博満が監督に就任した04年からクローザーに配置転換。自身2度目の日本一となった11年にはNPB史上初となる通算300セーブを達成するなど、中日の黄金期を支えていました。
引退登板となった10月13日の阪神戦では、伝家の宝刀スライダーを武器に相手打者の福留孝介から3球三振に仕留めるという“らしい”投球で幕を下ろしました。
2018年惜別球人その3:松井稼頭央(西武)
2002年、山田哲人の前に、プロ入り9年目で打率.332、36本塁打、33盗塁でトリプルスリーを達成したのが松井稼頭央。プロ入り間もなく野手に転向し2年目の1995年の後半戦からショートのレギュラーで活躍しました。
松井の名前が最初にプロ野球ファンに知れ渡ったのは1996年のオフに行われた日米野球。田中幸雄の代役として出場しましたが、いざプレーすると自慢の身体能力の高さを武器に大活躍し、打率.556のハイアベレージを記録しました。
2004年からはメジャーリーグでプレーし、当初は苦しみましたが、2007年にはロッキーズの1番打者を務め球団史上初のリーグ優勝に貢献。レッドソックスと対戦したワールドシリーズでは西武時代の同僚である松坂大輔との対戦も日本人ファンを沸かせました。
11年に楽天に移籍してNPBへ復帰すると、13年には精神的支柱としてチームを支え、楽天初の日本一に貢献。今季は15年ぶりに古巣西武に戻り、シーズンでは30試合に出場し、クライマックスシリーズでもベンチ入りしてチームを引っ張るなど、良き兄貴分としてチームに好影響を与えました。
2018年惜別球人その4:山口鉄也(巨人)
2005年から導入された育成選手制度。プロ野球選手の間口が広がったこの制度を生かして大ブレイクした選手と言えば山口鉄也でしょう。横浜商業を卒業後にマイナーリーグでプレーするという変わり種だった山口は、2005年に巨人の入団テストを受けて合格。
育成ドラフトで指名されて入団すると、2年後の2007年に支配下選手登録をされて一軍初登板しました。そして翌年にはセットアッパーとして台頭し、巨人の逆転リーグ優勝に大きく貢献。そして山口自身も新人王を獲得し、「育成の星」と称されました。
2016年まで毎シーズン60試合以上登板する鉄腕ぶりを披露。キャリアを通じて稼いだホールドは273と宮西尚生に抜かれるまでNPB史上最多の記録を持っていました。しかし2017年頃から故障が相次ぎ、今年の10月5日には現役引退を表明。馬車馬のごとく投げ抜いた鉄腕の姿は多くの育成選手たちに希望を与えました。
2018年惜別球人その5:本田雄一(ソフトバンク)
故障をもとに現役生活を断たれるケースも多くありますが、ソフトバンクのリードオフを長年務めてきた本多雄一もその一人。10月1日に首の痛みを理由に今季限りで引退することを発表しました。まだ33歳と若く、プロ入り13年目での決断でした。
ドラフト5巡目指名ながら、即戦力選手として注目された本多は1年目の2006年から一軍に帯同し、プレーオフなどの重要な場面でも重用される存在に。2年目からはセカンドのレギュラーに定着し、チームが日本一に輝いた11年には2度目の盗塁王のタイトルとともにベストナイン、ゴールデングラブ賞を獲得しました。
引退試合となった10月6日の西武戦ではスタメンでフル出場。第4打席にライト戦へのスリーベースヒット、そして最終打席も左中間にツーベースヒットを放って、全盛期を彷彿とさせる活躍ぶりでした。
スター選手たちの第二の人生に幸あれ!
今季はここで紹介した選手たちの他にも荒木雅博(中日)、浅尾拓也(中日)、西村健太朗(巨人)、杉内俊哉(巨人)小谷野栄一(オリックス)などの大物選手に加え、BCリーグの栃木ゴールデンブレーブスに移籍してNPB復帰を狙っていた村田修一も現役を去るなど名選手が現役を去るケースばかりが目立ちました。
寂しいという声が多く聞こえる反面、小谷野や後藤武敏(DeNA)は早くも楽天のコーチとして入閣するなど、第二の人生に歩みだした元選手たちもいます。今後の彼らの活躍に期待しましょう。