『フェイクニュース』は「食品に青虫が混入した」というSNSの投稿が、やがて社会を揺るがし、予想外の真実へとつながっていく物語。


人間の暗部をありありと描いた名作、松本清張の『天城越え』や向田邦子の『阿修羅のごとく』から、男たちの戦いを力強く描いた『クライマーズハイ』や『ハゲタカ』まで、NHK特有の社会派ドラマの遺伝子を継ぎながら、今をみごとに切り抜いた新しい土曜ドラマの誕生と言えそうだ。では、その新しさとは何だろう。
 

 『ハゲタカ』/出典:Amazon

1.不確かな要素を散りばめながら、現代社会のリアルに迫る視点

インターネット社会が進化を続けるなか、誰もが違和感を抱きながらも打つ術なく、怪物と化すSNSがテーマ。この作品では、どう切り込むのか。

SNSによる中傷やいじめは『4号警備』『やけに弁の立つ弁護士が学校でほえる』などにも登場するが、複雑な社会構造へと飛び火するのが本作。炎上、拡散、株価、世論、今を動かすいくつもの不安定な要素を散りばめ、それを凝縮、視聴者に問題視させる手腕は野木作品ならではだ。「黒幕は誰だ」的アプローチで終わらせないテーマは必見である。

 

 『4号警備』/出典:Amazon

2.社会派ドラマにおけるヒロインの戦い方とかわし方

『足尾から来た女』の尾野真千子や『精霊の守り人』シリーズの綾瀬はるかなど、戦う女性の作品は過去にもあったが、これほど「vs.社会」の構図を鮮明に描いた作品は希少である。

 『精霊の守り人』/出典:Amazon


正義とは何かを懸命に咀嚼しながら、フェイクニュースの真実を追う新聞社出身のネットメディア記者・東雲樹(北川景子)はもちろん、ネットメディア「イーストポスト」の編集長(新井浩文)と同僚の記者(矢本悠馬)が見せる拡散される悪意の「かわし方」も興味深い。
 

3.時代の空気感と軽さを表現するみごとな演出

ドラマの特性からか影が強調されることが多い土曜ドラマ。水面下で捜査を続ける『外事警察』や湿度が高い松本清張作品などでは、画面はいたって暗めだったが、今回の土曜ドラマは違う。しかし、洗練された空気をまといながらも、嗅覚捜査官の活躍を描いた『スニッファー 嗅覚捜査官』のクラシカルな車やファッションのそれとも違う世界観だ。

『スニッファー 嗅覚捜査官』/出典:Amazon


パソコン、携帯、常にデザインがあふれた時代の空気感と時代の軽さを映しながら、その軽さを怖さに変換させる見せ方はみごと。土曜ドラマに新しい感性が光る。
 

『フェイクニュース』は何を見せるのか

SNSが炎上し拡散、その後投稿内容がネット上でウソと確定され、特定された投稿主(光石研)へと矛先が向いた前編。物語を一気に加速させた展開は圧巻。息つく余裕すらなかった。1秒の蛇足も生まない作品は、徹底した取材と練り抜いたテーマの賜物だ。濃厚感とスピード感は失敗すると視聴者を巻き込めないが、野木作品はグイグイと引き込む。

たどり着くだろう真相、弱者の救済、ネットメディアの正義、後編はさまざまな着地が見えるはずだが、それは容易いハッピーエンドにはならないだろう。「私たちは、生きる時代の気味の悪さにどう向き合うのか」を痛烈にあぶり出した価値ある作品になることは間違いない。

後編は10月27日土曜よる9時から。