ロシアW杯後初となる日本代表の国際試合が、9月7日と11日に開催される。世界の16強入りしたメンバーが勢揃いするのかと思いきや、発表されたメンバーには若手や中堅がズラリ。その理由を解きほぐす。
経験のある選手はひとまずクラブに専念
サッカー日本代表はロシアW杯で指揮を執った西野朗監督が7月いっぱいで退任し、同大会でコーチを務めた森保一(もりやす はじめ)新監督のもとで新たなスタートを切った。8月に50歳になった指揮官は23人の選手を発表したが、そこにはW杯のレギュラーがひとりも含まれていない。
日本代表からの引退を表明した長谷部誠、引退を示唆している本田圭佑が選ばれないのは理解できる。本田はオーストラリアのメルボルン・ビクトリーへ移籍したが、リーグ戦が開幕していないために実戦から遠ざかっている。呼べる環境にないのだ。
GK川島永嗣もフランス1部のストラスブールへの加入が決まったばかりで、まだリーグ戦に出場していない。ドイツのドルトムントでプレーする香川真司も、2試合を消化したリーグ戦で出番がなかった。イングランドでプレーする岡崎慎司(レスター)、吉田麻也(サウサンプトン)、武藤嘉紀(ニューカッスル)の3人も、ポジション確保には至っていない。
いずれもコンディション不安を残すが、日本代表に合流すれば一定水準のプレーは見せてくれるだろう。それに、彼らのプレースタイルは森保監督も良く知るところだ。無理をさせる必要はない。まずはクラブでの立場をより良くするために、日々のトレーニングに専念してもらいたいとの配慮が働いたのだろう。長友佑都、乾貴士、酒井宏樹、大迫勇也、原口元気、柴崎岳らも、同じ理由で招集を見送られたと考えていい。
東京五輪世代も招集された
W杯で活躍した彼らを呼ばない代わりに、森保監督は若手と中堅にチャンスを与えた。19歳のDF冨安健洋(シントトロイデン/ベルギー)、20歳のMF堂安律(フローニンゲン/オランダ)、21歳のMF伊藤達哉(ハンブルガーSV/ドイツ)が初めて日本代表入りした。ケガ人が出たことによる追加招集の守田英正(川崎フロンターレ)も、初代表の23歳だ。
ハリルホジッチ元監督や西野前監督に招集されたことがあるものの、ロシアW杯のメンバー入りを逃した選手も多い。25歳のMF伊東純也(柏レイソル)、24歳のMF中島翔哉(ポルティモネンセ/ポルトガル)、23歳のMF南野拓実(ザルツブルク/オーストリア)とFW浅野拓磨(ハノーファー/ドイツ)、22歳のMF三竿健斗(鹿島アントラーズ)らだ。
国際経験の少ないこうした選手たちを支える存在として、森保監督は実績のある選手も呼び寄せている。ロシアW杯のメンバーだった32歳のGK東口順昭(ガンバ大阪)、31歳のDF槙野智章(浦和レッズ)に加え、森保監督がかつて指揮したサンフレッチェ広島から32歳のMF青山敏弘、28歳のDF佐々木翔が選出されている。青山は14年のブラジルW杯のメンバーで、佐々木は初代表だ。
ロシアW杯でレギュラーではなかった選手、すでに代表経験のあるJリーグ組、さらには国内外から初代表の選手を集めたのが、今回の日本代表ということになる。森保監督は2020年の東京五輪の監督を兼任しており、冨安、堂安、伊藤らは2年後に23歳以下で編成される五輪代表の候補でもある。2年後の東京五輪を見据えた強化と、4年後のカタールW杯へ向けた世代交代を同時進行させる第1歩として、今回は若手と中堅が主体の顔ぶれになったと理解できる。
日本代表は10月、11月にも国内で2試合ずつを消化し、来年1月にアジアナンバー1を決めるアジアカップに挑む。直近のターゲットとなるこの大会へ向けて、森保監督は積極的に選手をテストしていくに違いない。そのうえで、10月、11月と段階的にW杯メンバーを招集し、アジアカップに備えると考えられる。
フレッシュな選手たちが、指揮官の期待にどこまでこたえられるか。9月7日のチリ戦は、新戦力の躍動に注目だ。