フランスが優勝し、ビッグ3を擁した国は敗退…
ひとつの時代が終わり、新しい時代が幕を開けた──。ロシアW杯は7月15日に決勝戦が争われ、フランスが5大会ぶり2度目の優勝を飾った。世界のサッカーがこれから進んでいく方向性が、はっきりと見えてきた。
ロシアW杯は驚きに満ちた大会だった。
前回王者にして優勝候補筆頭と目されていたドイツが、まさかのグループリーグ敗退に終わった。決勝トーナメント1回戦では、10年優勝のスペイン、前回準優勝のアルゼンチン、16年欧州選手権優勝のポルトガルが散った。準々決勝ではサッカー王国ブラジルが敗れた。覇権を争うと見なされていた強国が、ベスト4を前に相次いで姿を消した。
アルゼンチンが優勝候補にあげられていたのは、言うまでもなくリオネル・メッシがいたからである。ブラジルにはネイマールが、ポルトガルにはクリスティアーノ・ロナウド(ポルトガル)がいた。14年のブラジルW杯以降のサッカー界は、彼らがいるチームをいかに倒すのかをテーマに進んでいたと言っていい。クラブでも、代表でも、である。
しかし、世界のビッグ3を擁するチームは、ロシアW杯で主役になり得なかった。
フランス、クロアチア、ベルギーの「共通点」
変わってステージの中心へ躍り出たのが、優勝したフランスであり、準優勝のクロアチアであり、3位のベルギーである。
ベルギーにはエデン・アザールが、クロアチアにはルカ・モドリッチが、フランスにはキリアン・エムバペ(キリアン・ムバッペ)がいる。彼らもまた、際立った「個人」である。チームのなかで取り替えの効かない選手だ。
ただ、頼れるパートナーがいたのは、メッシらとの違いだろう。H・アザールにはケビン・デブルイネやロメル・ルカクが、モドリッチにはイバン・ラキティッチやマリオ・マンジュキッチが、エムバペにはアントワーヌ・グリーズマンやポール・ポグバがいた。
フランスの象徴的存在はエムバペではなくグリーズマンだ、という意見もある。いや、ポグバの貢献度が高かった、エンゴロ・カンテの守備力は不可欠だった、との声も聞こえてくる。つまりは、エース格の選手が複数人いたわけだ。
これこそは、アルゼンチン、ポルトガル、ブラジルに欠けていて、フランスらにあったものである。
そのうえで、イングランドを含むベスト4のチームは、世界のトップ・オブ・トップのクオリティを持つ選手たちが、組織として機能しながら自らの役割を果たしていた。すでに地位も名声も築いたワールドクラスの選手たちが、チームのために惜しみなく汗を流す──当たり前のことだが、できないチームもあるものだ。
個に依存せず、攻守に柔軟に戦えるチーム作りの正当性
フランスとイングランドはコーナーキック(CK)やフリーキック(FK)などのセットプレーが、ベルギーは日本やブラジルを沈めたカウンターが印象深い。クロアチアはモドリッチとラキティッチを軸にしたパスワークに秀でる。
ただ、彼らはひとつの攻撃パターンに固執したわけではない。自分たちが得意とするスタイルを生かし、CKやFKも有効に活用し、カウンターも決定機に結びつけた。リードを守り切らなければいけない時間帯では、全員が守備の意識を高めてゴールにカギをかけることもできた。
違いを生み出す個人に依存せず、攻守に柔軟に戦えるチーム作りの正当性が、今回のロシアW杯で改めて証明された。同時に、メッシ、C・ロナウド、ネイマールらの「個」を持つチームが、これからどのような道を探るのかも興味深い。まずは、今月末から順次開幕をしていくヨーロッパ各国リーグに注目だ。