日本がベスト16で敗退…しかし世界に衝撃をもたらした
決勝トーナメントの戦いは、やはりレベルが上がる。そのなかで、日本は見劣りしないパフォーマンスを見せた。
7月2日に行われたベルギーとの決勝トーナメント1回戦で、日本は世界に衝撃をもたらし、自分たちも衝撃に見舞われた。
ベルギー戦であげた2つのゴールは大会ベスト10に入るかも?
後半開始早々の4分間にあげたふたつの得点は、大会のベスト10に揃って入るぐらいのファインゴールだった。
52分の先制弾は、柴崎岳のスルーパスがきっかけだった。リーチの長い相手DFが届きそうで届かない、それでいてパスの受け手のスピードを殺さない精巧な1本を、原口元気がこれまた鮮やかな技術でゴールへ結びつけた。ペナルティエリア右から逆サイドネットを突き刺したのはもちろん、シュートの直前のフェイントがまた冷静で、DFからすれば残酷だった。4分後の乾貴士のゴールは、ベルギーを戦慄させただろう。コントロールされた無回転の右足シュートは、ゴール右スミを鮮やかに射止めた。
身体のサイズは関係ない。自分たちが磨き上げてきた技術を臆することなく発揮すれば、世界のトップ・オブ・トップが相手でも戦える。攻められる、得点できる、ということを、日本は世界に示していく。アジアから唯一ベスト16まで勝ち上がった極東の島国が、16年9月から22戦無敗の“赤い悪魔”を追い詰めたのだ。予想外の展開に、世界が驚いた。
「2枚替え」で試合の流れを変えたベルギー…打つ手はあった?
ここから先は、様々な意見がある。
2点のビハインドを背負った直後の65分、ベルギーは2人の選手を同時に交代させた。「2枚替え」と言われる采配は、試合の流れを強引に引き込みたい局面で使われるものだ。
日本の西野朗監督も、ここで動くことはできた。2対0の時間帯はともかく、1点差に詰め寄られたあとは選手交代のタイミングを見つけられたはずである。しかし、指揮官は動かず、65分と69分に連続で被弾してしまう。4分で先制しながら、4分で追いつかれてしまったのだ。
「ラスト30分は本気のベルギーに対抗できなかった」と、試合後に西野監督は話した。同点に追いつかれてしまった試合の主導権は、もはやベルギーの手中にある。本田圭佑と山口蛍を投入した80分の2枚替えも、遅きに失した感は否めない。
そして、悲劇が訪れる。後半のアディショナルタイムが終了する直前に、日本はCKを得た。しかし、本田のキックは相手GKにキャッチされ、そこからカウンターを浴びる。日本の選手たちが危機を察したときには、すでにシナリオが出来上がっていた。高速のカウンターからゴールを割られ、日本はリードを許してしまうのである。もはや、反撃の猶予はなかった。
「あと一歩」の印象を色濃くした日本の戦いぶり
負けたけれど、2点も取ることができた。うまくいけば勝つことができた。ちょっとうまくいけば、延長戦には持ち込むことができた──こうした仮定は成り立つ。後半終了間際の失点がまた、悲劇性を強める。
ドラマティックなゲーム展開は、「あと一歩」の印象を色濃くする。西野朗監督が率いるチームは、およそどんな媒体でも「美しき敗者」として報道されている。彼らの戦いを否定する者は、極端な少数派と言っていい。
下を向く戦いではなかった。日本の戦いぶりについては、世界各国の評論家やメディアも称賛している。日本は良く戦った。すべてを出し切った。
だが、勝敗は必然だったのだ。