忘れられない「世紀の誤審」
1930年に第1回大会が開催され、今回が21回目となるサッカーW杯は、数多くの忘れ得ぬドラマを生み出してきた。今回はそのなかから、大会の歴史に記憶に刻まれた“世紀の誤審”を、ランキング形式でお伝えしよう。
5位:2010年南アフリカ大会 決勝トーナメント1回戦 ドイツ対イングランド
南アフリカW杯の決勝トーナメント1回戦で実現した因縁のカードで、判定が勝敗を分けた。
2点を追いかけるイングランドは前半37分に1点を返し、その直後にランパードのシュートがバーに当たって真下へ。ボールはゴールラインを割っていたが、明らかな誤審で見逃されてしまう。失意のイングランドは後半にも2失点を喫し、1対4で敗れたのだった。
4位:2002年日韓大会 準々決勝 スペイン対韓国
イタリアに疑惑の判定で勝利した韓国は、続く準々決勝でも審判を味方につけた。スペインのゴールが2度も取り消されたのだ。
延長前半2分のゴールは、得点につながるクロスがゴールラインを割ったあとに供給されたとの判定で取り消された。ところが、リプレイ映像ではボールは明らかにピッチに残っていた。
試合は0対0のままPK戦へ突入し、韓国が勝利する。
開催国に有利な判定が下されるのは、02年の韓国が初めてではない。それにしても、不可解な判定が続いた。相次ぐ誤審を受けて国際サッカー連盟(FIFA/フィファ)は、中立国から審判を選ぶ慣例を一時的に取り下げたほどだった。
3位:2002年日韓大会 決勝トーナメント1回戦 イタリア対韓国
1対1で迎えた延長前半終了間際、イタリアのフランチェスコ・トッティが相手ペナルティエリア内でDFともつれ合って転倒。イタリアにPKが与えられてもおかしくない場面だったが、主審はPK獲得を狙って故意に倒れるシミュレーションとし、トッティにこの試合2度目の警告を宣告して退場処分とする。
さらに延長後半5分、イタリアのゴールがオフサイドで取り消しに。エクアドル人主審が韓国に買収されたとの憶測も飛んだ一戦は、最終的に韓国が2対1で勝利した。
2位:1966年イングランド大会 決勝 イングランド対西ドイツ(当時)
2010年、勝敗を分けた「疑惑の判定」から、さかのぼること44年。1966年にも同じカードで、疑惑のゴールが生まれている(2010年の時、「因縁のカード」と呼ばれたのもこのため)。
2対2で延長戦に突入した一戦は、延長前半10分に動く。イングランドのハーストのシュートがクロスバーを叩いて真下へ落下する。ゴールラインを完全に越えたかどうかは微妙だったが、主審は線審(現在は副審と呼ばれる)と協議して得点を認めた。
ハーストは延長後半にもネットを揺らし、1試合3得点のハットトリックを達成する。W杯決勝では史上初めてであり、現在も彼ひとりしか成し遂げてない記録だ。
開催国だったイングランドは4対2で勝利し、初優勝を成し遂げる。一方、敗れたドイツのサッカー関係者やファンは、現在も延長前半10分の得点は「ゴールラインを割っていない」と主張する。
1位:1986年メキシコ大会 準々決勝 アルゼンチン対イングランド
0対0で迎えた後半6分、アルゼンチンのマラドーナが味方選手の浮き球のパスをイングランドGKシルトンと競り合う。シルトンは183センチで、手を使うことができる。170センチにも満たないマラドーナがコンタクトするのは難しいはずだが、ボールはコロコロとゴール内へ転がっていく。明らかなハンドによる得点はそのまま認められ、アルゼンチンは先制に成功する。
この得点について試合後に聞かれたマラドーナは、「マラドーナの頭が少しと、神の手が少し」と話した。手に当たったかどうかが微妙なゴールは、ここから「神の手ゴール」と言われるようになった。
イングランドはやりきれない思いを抱えたはずだが、4分後にはまったく違う感情に包まれる。W杯史上最高と呼ばれる6人抜きのゴールを、マラドーナに決められたからだ。
ロシアW杯では誤審を防ぐために、ビデオ・アシスタント・レフェリー(VAR)が導入される。主審の判定が正しいかどうかを、ビデオ映像で確認するのだ。果たして最新のテクノロジーは、誤審を一掃できるのか──。