意欲の連闘策で掴んだ、念願のG1レースを振り返る

レース後のモズアスコット
レースを制し、引き揚げてくるモズアスコット。会心の騎乗にルメール騎手もご満悦(筆者撮影)

東京競馬場5週連続G1レースの末尾を飾るだけでなく、「春のマイル王決定戦」としても知られる安田記念。68回目の歴史を誇るビッグレースだけに、今年も16頭の精鋭がマイル王に名乗りを上げるべく参戦してきました。
 

そんな大レースを制したのが9番人気の伏兵、モズアスコット。阪急杯、マイラーズC2着と重賞戦線で安定した成績を残していましたが、キャリアを通じて重賞未勝利と格下の存在。獲得賞金の関係で最終登録時点では除外対象になるなど、ギリギリの状態での出走でした。それでも直線ではクリストフ・ルメールの手綱に導かれるかのように鋭く伸びて、先に抜け出したアエロリットをゴール寸前でクビ差捕らえて、悲願のG1制覇を飾りました。
 

東京競馬場5週連続G1レースの末尾を飾るにふさわしい、そんな今年の安田記念を振り返っていきましょう。
 

多頭数出しに賭けた矢作芳人と、あえて絞った藤沢和雄

そもそもモズアスコットが最終登録の段階で除外対象になった理由のひとつに、オープンクラスに上がってからの「詰めの甘さ」がありました。
 

デビューは昨年6月と遅く、軌道に乗り出したのは3戦目から。そこから渡月橋Sまで4連勝を飾り、年末の阪神Cで重賞に初挑戦しましたが、ここは4着に完敗。今年に入ってからはG1出走のために積極的に重賞に出走しますが、阪急杯、マイラーズCともに2着。阪急杯では前を行くダイアナヘイローを捕らえられず、2番手に付けて積極的にレースを進めたマイラーズCではサングレーザーに並ぶ間もなく差されてしまい、賞金を積み重ねることができずにいました。
 

加えて、この時期は4歳馬にとってクラス編成の見直しがある時期。クラス決定賞金がそれまでの4400万円から2200万円と半分にさがってしまったことで、モズアスコットは安田記念への出走が危ぶまれることになりました。そのため、モズアスコットは安田記念出走を半ばあきらめる形で、5月27日に行われた安土城Sに出走。断然の1番人気に支持されましたが、ここでも2着に敗れています。
 

一方、最終登録の時点では4頭の管理馬を出走させようと目論んでいたのが関東の名伯楽、藤沢和雄。京王杯SCを制したムーンウエイクを筆頭に、サトノアレス、タワーオブロンドン、そしてスターオブペルシャと、オープン馬を堂々の4頭出し。いずれも勝機は十分で1998年のタイキシャトル以来の管理馬の制覇が期待されましたが、安田記念が行われる週中になって、突如として3頭を回避させることが決定。サトノアレスのみが出走することになりました。
 

管理馬を複数頭出走させるケースは勝つ確率が上がる一方で、騎手の確保が難しくなるという側面があります。実際、ムーンウエイク、タワーオブロンドンの主戦騎手はクリストフ・ルメール。当然ながらどちらかにしか騎乗できず、どちらかには代役を立てる必要があります。G1レースの前にそうした賭けをするのは難しいという判断、そして唯一出走を決めたサトノアレスの状態が抜群だったこともあり、藤沢和雄調教師は4頭出しを取り止めました。
 

そのため安田記念の出走枠が3つ空き、18頭立てになると思われていたレースは“定員割れ”を起こして16頭立てに。そのため獲得賞金で19番目だったモズアスコットも、晴れて出走することが可能になりました。このレースには同じ矢作芳人厩舎のリスグラシュー、リアルスティールも出走するため、第3の矢としてモズアスコットは安田記念に臨むことになりました。
 

連闘をものともせずに、レコードタイの好タイムを記録!

待ちに待ったG1レースの晴れ舞台ですが、モズアスコットはその1週前に安土城Sを走ったことが余計に。安田記念に出られないことを見越して走ったのが仇となり、決して本意ではないローテーションでしたが、矢作芳人調教師は共同記者会見で「連闘策は私が一番自信のあるローテーションのひとつ」と語るほど自信満々。


そして鞍上のクリストフ・ルメールも騎乗予定馬が複数いる中で、最終登録の段階では除外対象だったモズアスコットに乗ることを切望していたなど、関係者の評価は一様に高く、当日9番人気ながら、穴馬として不気味な存在になっていました。
 

レース当日は、モズアスコットの状態面が注目されましたが、パドックで発表された馬体重はマイナス6キロと、キャリアを通じて2番目に軽い馬体重。パドックもトボトボと歩く様子でさほど目立ったものではありませんでした。しかし、モズアスコットは本馬場に入ると一変。ストライドを広げて走る姿にルメール騎手もレース後、「返し馬で安心した」と語るほどでした。

 

返し馬のモズアスコット
返し馬のモズアスコット。ここでルメール騎手は「勝てる」と確信を持ったと言います(筆者撮影)

そんな中で迎えたレースは、スタートからウインガニオンとレーヌミノルが引っ張る形で、淀みない展開に。直線でモズアスコットは追い出しをギリギリまで待って、残り200mの地点でようやく右ムチが入り、エンジン全開。上がり3ハロン33秒2というメンバー最速のタイムを叩き出して、前を行くアエロリットを交わしてゴール。見事に重賞初制覇をG1レースで飾りました。タイムも1分31秒1とレコードタイという素晴らしい内容で、今後の活躍も期待されます。

 

安田記念ゴール前
ゴール寸前、前を行くアエロリットをモズアスコットを猛然と差す!(筆者撮影)

ちなみにこのレース、モズアスコットを筆頭とした4歳馬が5着までを独占。かねてから「強い世代」と称されていましたが、それを如実に表す形となりました。

 

ゴール後のモズアスコット
レース後、観客の声援に応えるモズアスコット&ルメール騎手(筆者撮影)
安田記念口取り
安田記念口取りの様子。調教師の矢作芳人(左から1番目)は是が安田記念初制覇

 
◆2018年安田記念全着順

着順  枠番  馬番  馬名 性齢  斤量  騎手 タイム/着差  人気  調教師
1 5 10 モズアスコット 牡4 58 C.ルメール 1:31.3 9 矢作芳人
2 2 4 アエロリット 牝4 56 戸崎圭太 クビ 5 菊沢隆徳
3 1 1 スワーヴリチャード 牡4 58 M.デムーロ 3/4 1 庄野靖志
4 1 2 サトノアレス 牡4 58 蛯名正義 1/2 7 藤沢和雄
5 8 15 サングレーザー 牡4 58 福永祐一 クビ 3 浅見秀一
6 3 5 ペルシアンナイト 牡4 58 川田将雅 1 1/4 2 池江泰寿
7 8 16 ウインガニオン 牡6 58 津村明秀 2 14 西園正都
8 7 14 リスグラシュー 牝4 56 武豊 クビ 6 矢作芳人
9 5 9 レッドファルクス 牡7 58 田辺裕信 クビ 8 尾関知人
10 4 7 ウエスタンエクスプレス  セ6 58 S.クリッパートン  1 1/4 11 J.サイズ
11 4 8 キャンベルジュニア 牡6 58 石橋脩 1/2 10 堀宣行
12 3 6 レーヌミノル 牝4 56 和田竜二 3/4 15 本田優
13 6 12 ヒーズインラブ 牡5 58 藤岡康太 1 12 藤岡健一
14 2 3 ダッシングブレイズ 牡6 58 北村宏司 アタマ 16 吉村圭司
15 6 11 リアルスティール 牡6 58 岩田康誠 アタマ 4 矢作芳人
16 7 13 ブラックムーン 牡6 58 秋山真一郎 アタマ 13 西浦勝一