『花男』とは違う魅力!『花のち晴れ』は視聴者の心をつかめるか?

大人気だった『花より男子』から10年、F4が卒業した英徳学園の高校生たちが繰り広げるラブコメディー『花のち晴れ~花男Next Season~』。『花より男子』と比較してしまいがちですが、「花男」シリーズ初心者も楽しめるドラマです。

つくしとは違う
「らしさ」が光る、杉咲花(写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ)

大人気だった『花より男子』から10年、F4が卒業した英徳学園の高校生たちが繰り広げるラブコメディー『花のち晴れ~花男Next Season~』(TBS系・火曜22時)。『花より男子』と比較してしまいがちですが、「花男」シリーズ初心者も楽しめるドラマです。
 

『花のち晴れ』は、第6話を終えたところで視聴率は2桁台に届いていませんが、若い世代を中心に人気があります。この視聴率をどのようにとらえればよいのでしょうか。また、どんな点が『花より男子』と違い、魅力があるのか、分析してみました。
 

大ヒットした『花より男子』

ドラマも映画も大ヒットし、たくさんの人が胸をキュンとさせながら夢中になった『花より男子』。煌びやかで華やかなマンガの世界の映像化は、成功が意外に難しいものです。視聴者の夢や憧れを大切にしなくてはいけないものの、作りこみすぎて視聴者を興醒めさせてもいけない。そういう意味でも『花より男子』の世界観は圧巻でした。

 

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◆F4につくし、登場人物たちの完成度が高い

超セレブな4人組「F4」と、何者にも屈しない主人公の牧野つくし(井上真央)の存在が作品の魅力。非日常の世界に笑いながらも、視聴者をグッとつかんで引き込んでいく力を感じます。


学園ドラマといえども勉強や部活をさしおいてラブストーリーだけに特化していることも、視聴者を夢中にさせた要因と言えそうです。


◆女子高生だけじゃない!大人も楽しい「花男」シリーズ

憧れの王子様が登場するシンデレラストーリーは古い時代から女性たちをうっとりさせてきました。映画や舞台、バレエの世界にも登場し、全世界で愛されるシンデレラストーリー、楽しむ年代は幅広いのです。「花男」シリーズはまさにシンデレラストーリー、イマドキを描きながら、建物、インテリアや車などこだわりのクラシカルな世界を堪能できる一面も人気の秘密です。

 

『花のち晴れ』は視聴者のハートをつかめるか

2018年4月にスタートした『花のち晴れ~花男Next Season~』。『花より男子』の世界観そのままに、こちらも恋のゆくえをコメディタッチに描き胸がキュンとするドラマに仕上がっています。
 

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◆視聴率をどう考えるか

第6話をおえたところで視聴率は2桁台に届いていません。しかし、これを低いと言いきるには躊躇があります。


『花より男子』がスタートした2005年は『ごくせん』『野ブタ。をプロデュース』『ドラゴン桜』『3年B組金八先生』など学園ドラマが人気だった時代。激しい競争のなか平均視聴率19.8%は大健闘と言えますが、社会が学園ドラマを求めた時代であり、テレビが大きな存在だった時代とも言えます。コンテンツが一気に増え、視聴スタイルが多様化した2018年と視聴率を比較して優劣をつけるには、少し無理があるかもしれません。


◆気になるのは「F4」と「C5」

『花のち晴れ』スタート当時はC5の存在が弱いという意見も散見できましたが、実際のところどうなのでしょう。

『花より男子』では、すでにドラマの現場で経験を積み演技に磨きがかかっている松本潤や小栗旬ら俳優陣を「F4」に起用しており、「好き」という気持ちをまっすぐに届ける甘さから、ぶつかり合う緊張感まで、視聴者をグイグイ引き込む技術を持っていたと感じます。そこに知名度や実績が加わり、みごとなスタートダッシュを見せることができました。


一方、『花のち晴れ』の「C5」のメンバーはドラマの経験がまだ浅く、F4への憧れから結成したチームであることを考えると、同じものを求めるべきではなさそうです。

もちろん、F4の西門総二郎(松田翔太)や美作あきら(阿部力)の描き方に比べると、C5の成宮一茶(鈴木仁)や栄美杉丸(中田圭祐)について、もう少し掘り下げてほしい気持ちもありますが、それはこれからのお楽しみかもしれません。また、花沢類のようなナイーブで謎めいた雰囲気を持つ存在がいないことで、物足りなさを感じる視聴者もいそうです。


とは言え、ミドルエイジから20代まで『花より男子』に夢中になっていた視聴者が『花のち晴れ』も楽しんでいるという声が聞こえているのも事実。完全無欠の王子様、中川大志の登場など、新しい楽しさもふんだんです。
 

おもしろくなってきた!『花のち晴れ』

◆C5は、オーラではなく親近感で魅せる?

ヘタレではあるものの、自分の行動を軌道修正する柔軟性は持っている神楽木晴(平野紫耀)、冷静かつ客観的に問題にアプローチする平海斗(濱田龍臣)らC5のメンバーにはなびくことなく個人の価値観で判断する力を感じます。


主人公の江戸川音(杉咲花)に冷酷な仕打ちを見せた紅一点の真矢愛梨(今田美桜)は、第5話で人気モデルのメグリンに対し「この女に地獄の苦しみを与えていい?」と言い放ち、共感度が急上昇。視聴者にとっては勇ましい代弁者となった瞬間でした。圧倒的な存在だったF4とは違い、未熟だけど人間的な存在としてシンパシーを感じる「C5はのオリジナリティ」に期待したいと思います。


◆注目したい!江戸川音と馳天馬の存在感

主人公の江戸川音を演じるのは、若手実力派の杉咲花。自分の気持ちにイエス・ノーを明確にできる強さとやさしさは牧野つくしと重なる部分は多いものの、彼女らしさはちゃんと光っています。馳天馬を演じ視聴者を沸かせている中川大志は大河ドラマから映画、バラエティと幅広く挑戦し、グイグイ成長している注目株、今しか見ることができない旬の演技全開で楽しませてくれます。

なんなんだ、この世界観……と初めて見ると怯みそうですが、ドラマ初登場の神宮徴古館や重要文化財の大阪市中央公会堂など建物ファンにも見どころがいっぱいの『花のち晴れ』。『花より男子』ファンでなかった人も、ぜひのぞいてみてください。

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