ケイアイノーテックが直線一気! 第23回NHKマイルCレポート

5月6日(日)に行われた第23回NHKマイルC。例年になく粒揃いという前触れだった一戦ですが、結果は6番人気のケイアイノーテックが直線一気の末脚で差し切りG1レース初制覇。鞍上の藤岡佑介も悲願のG1ジョッキーになりました。その様子を改めて紹介します。

人馬ともに初G1。その内容をプレイバック!

NHKマイルC時のケイアイノーテック
直線で豪快に差し切ったケイアイノーテック。抜群の切れ味に鞍上の藤岡佑介も思わずこの表情(筆者撮影)

3歳マイル王の決定戦であるNHKマイルC。例年牡馬が多いレースですが、今年は重賞勝ちを果たした牝馬も数多くエントリーし、文字通り雌雄を決する一戦となりました。
 

1番人気に支持されたタワーオブロンドンをはじめ、実力馬が多くエントリーしたためか、今年のNHKマイルCはハイレベルな戦いになると目されていて、いい意味でどの馬が勝ってもおかしくない一戦となりました。
 

そんな中でこのレースを勝利したのは6番人気の伏兵、ケイアイノーテック。道中はシンガリを追走していながら、いざ直線に入ると大外から一気に伸びて先行馬をごぼう抜き。上がり3ハロンは33秒7という断トツのタイムを記録して差し切って1着。G1初制覇を成し遂げました。そして鞍上の藤岡佑介は騎手生活15年目にして初のG1勝ちとなり、悲願のG1ジョッキーとなりました。
 

人馬ともに初のG1制覇となったNHKマイルC。その様子をレポートしていきます。
 

「内の先行馬有利」という傾向が仇になった人気馬たち

今年のNHKマイルCは戦前にG1勝ち馬がいたわけではないですが、一方で重賞勝ち馬は出走馬の約半数の8頭。連対した馬も含めれば13頭も当てはまるという例年にないほどに豪華なメンバーに。それだけにパドックにも多くの競馬ファンが詰めかけ、3歳マイル王の誕生に期待していました。
 

そんなレースで1番人気に支持されたのは、前走でアーリントンCを制していたタワーオブロンドンでした。ここまで6戦して[4・1・1・0]という好成績を収め、中団からの差し脚は見るべきものがありました。さらに馬名に引っ掛けてか、このレース後にはイギリスへの遠征も予定されていたため、このレースはまさに壮行戦の趣すらありました。パドックでの落ち着き払った様子を見て、安心してこの馬から馬券を買ったファンも多くいたことでしょう。
 

しかし、この日の東京競馬場の芝レースは先行馬有利のコンディション。NHKマイルCまでに行われた芝レース5戦中4戦が4コーナーを3番手以内に回った馬が制していました。それを考えると差し脚を武器にするタワーオブロンドンには厳しい条件になる一方、先行する3番人気馬テトラドラクマには有利に働くだろうと考えられていました。
 

レースが始まると、テトラドラクマは予定通りに逃げ、最初の3ハロンは34秒4とまずまずのタイム。先行して粘るには最適とも思えるラップでしたが、テトラドラクマは道中でダノンスマッシュをはじめ他の先行馬たちに突かれていたことが響いて失速。さらにインコースに馬が密集したため、後方から差を詰めようとしていたタワーオブロンドンは進路を失い、騎手がほとんど追えないというアクシデントがありました。
 

これで勝負が決まってしまったと言えるでしょう。動くに動けなかったタワーオブロンドンは12着、そして逃げたテトラドラクマは14着と散々な結果に。これひとつとっても3歳マイル戦はハイレベルで難解な一戦であることがわかります。
 

馬の末脚を信じたことで生まれた、抜群の切れ味

パドックでのケイアイノーテック
パドックでの様子。人馬ともに落ち着いて好ムード(筆者撮影)

激戦となったNHKマイルCですが、それまでの傾向とは異なり、直線では外にいた馬たちが優勢になりました。
 

先に抜け出したのは2番人気のギベオンと伏兵のミスターメロディ。早めに動かないと届かないというこの日の馬場状態を読んだミルコ・デムーロ、福永祐一の2騎手の考えが如実に出ましたが、それよりもワンテンポ遅くに仕掛けたのがケイアイノーテックでした。
 

もともとはこの世代で最初に勝ち上がった馬で、素質の高さはピカイチの馬でしたが、近走はあと一歩届かないレースで惜敗ばかり。しかし、今回が初騎乗となった藤岡佑介はこの馬の末脚を信じて大外に回すと、追えば伸びるとばかりにグイグイと伸び、気が付けば先に抜け出したギベオンをクビ差交わして1着。藤岡佑介は86回目の挑戦でようやくG1タイトルを手にしました。
 

ちなみに藤岡佑介の弟、藤岡康太もG1初制覇を飾ったのは2009年のこのレース。藤岡兄弟にとってNHKマイルCは縁起のいいレースだと言えるでしょう。

レース後のケイアイノーテック
ウイニングランに向かうケイアイノーテック。鞍上の藤岡佑介は喜びをかみしめる(筆者撮影)

◆2018年NHKマイルC全着順

着順  枠番  馬番  馬名 性齢  斤量  騎手 タイム/着差  人気  調教師
1 6 11 ケイアイノーテック 牡3 57 藤岡佑介 1:32.8 6 平田修
2 5 9 ギベオン 牡3 57 M.デムーロ  クビ 2 藤原英昭
3 8 17 レッドヴェイロン 牡3 57 岩田康誠 アタマ 9 石坂正
4 8 16 (外)ミスターメロディ 牡3 57 福永祐一 3/4 7 藤原英昭
5 3 5 プリモシーン 牝3 55 戸崎圭太 クビ 5 木村哲也
6 5 10 パクスアメリカーナ 牡3 57 川田将雅 1 1/4 4 中内田充正 
7 4 8 ダノンスマッシュ 牡3 57 北村友一 クビ 13 安田隆行
8 1 1 カツジ 牡3 57 松山弘平 1 1/4 8 池添兼雄
9 7 14 (外)デルタバローズ 牡3 57 石橋脩 ハナ 16 堀宣行
10 7 15 カシアス 牡3 57 浜中俊 クビ 17 清水久詞
11 3 6 (外)リョーノテソーロ  牡3 57 吉田隼人 1 1/4 15 武井亮
12 4 7 タワーオブロンドン 牡3 57 C.ルメール クビ 1 藤沢和雄
13 2 4 フロンティア 牡3 57 内田博幸 クビ 12 中内田充正
14 2 3 テトラドラクマ 牝3 55 田辺裕信 クビ 3 小西一男
15 1 2 ファストアプローチ 牡3 57 蛯名正義 3/4 14 藤沢和雄
16 7 13 ルーカス 牡3 57 H.ボウマン 3 10 堀宣行
17 6 12 アンコールプリュ 牝3 55 藤岡康太 1/2 18 友道康夫
18 8 18 ロックディスタウン 牝3 55 池添謙一 大差 11 藤沢和雄
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