開発中の海老名に「鉄道ミュージアム」が誕生へ
小田急電鉄は4月27日、歴代のロマンスカーを一堂に集めた展示を中心に、小田急の魅力が詰まった各種コンテンツを提供する「“子ども”も“大人”も楽しめる鉄道ミュージアム」を建設し、2021年の開業を目指すと発表した。
建設場所は、小田急小田原線の海老名駅(神奈川県海老名市)に隣接したエリアだ。ここには、現在、広大な海老名電車基地があり、その近くには『ViNA GARDENS』という新たな街を開発中である。
『ViNA GARDENS』とは、小田急線&相鉄本線の海老名駅とJR相模線の海老名駅にはさまれた地区の名称で、タワーマンション、商業施設、オフィスなどを建設することになっている。そこに鉄道ミュージアムが加わり、新たな街のシンボルとして、賑わいを創出することになる。新宿駅から快速急行で45分、横浜駅から相鉄線の特急で25分。いずれも乗り換えなしで直行できる地の利の良さも集客には打ってつけだ。
車両基地で眠っていたロマンスカーが保存公開されることは意義ある
小田急の看板列車であるロマンスカーは戦前からその名称が使われていたとされるが、画期的な車両といわれるSE車誕生からでもほぼ60年の歴史がある。車種もそれ以来9種類を数える。
そのうち引退した車両については、車両基地で一部が保管されてきたのだが、以前「2017年夏に保存車両を解体する」という情報が流れてきたことがある。その内容は、「複々線化完成にともない増発用の車両を留置する場所を確保するため、保存車両を移動したり、余剰と思われる一部車両を解体する」といったものだった。その情報が流れた際、「喜多見電車基地が手狭であれば、どこかに博物館をつくって保存すればいいのに」との声も上がっていた。
今回、小田急は鉄道博物館の建設という発表と同時に、車両基地内に保存している退役車両のうち、同一車種で複数保有しているものに関して、その一部(中間車両)を2019年度までに解体すると発表している。当時の「車両解体の噂」に伴う「博物館をつくって保存をすればいいのに」との声が後押しとなったかどうかは不明だが、とにもかくにも車両基地の奥深くで眠っていた小田急の歴史的な車両を保存公開するミュージアムができることになるとは嬉しい話である。
展示予定の車両はどんなものがある?
詳細は後日発表とのことだが、展示が予定される車両は以下の通りである。
ロマンスカーについては、
- SE車3000形(画期的な流線型車両で、高速試験で当時の狭軌鉄道最速145km/hを記録した)
- NSE3100形(ロマンスカーの前面展望、運転台が2階という形状はNSEから始まった)
- LSE7000形(現存する前面展望車で、先頃デビューしたGSEの増備にともない引退が予定されている)
- HiSE10000形(ハイデッカーのロマンスカー。すでに引退していて、2編成は長野電鉄に譲渡され、「ゆけむり」として4両の短い編成で活躍中)
- RSE20000形 (2階建て車両2両を連結し、JR東海の車両とともに御殿場線に直通する「あさぎり」として活躍した)
ほかには、1927年の小田急開業時に使われた保存車両モハ1形。
車両展示のほか、沿線の風景を模した鉄道模型ジオラマや電車運転シミュレータといった鉄道ミュージアムの定番施設、子どもが自由に遊べるキッズゾーンを設けるだけでなく、2階建ての屋上には、小田急線を走る電車の走行を眺めることができるビュースポットの設置も予定している。
私鉄では最大規模の施設になる?
鉄道ミュージアムとしては、JR各社が鉄道博物館(さいたま市)、リニア・鉄道館(名古屋市)、京都鉄道博物館(京都市)、九州鉄道記念館(北九州市)といった独自のミュージアムを直接間接に運営しているほか、私鉄各社も独自のミュージアムを持っている。
関東地区の大手私鉄に限ると、東武博物館、京王れーるランド、東急の電車とバスの博物館、東京メトロの地下鉄博物館があるので、小田急のミュージアムはそれらに続くものとなる。ただし、展示車両の数から考えると、私鉄では最大規模の施設になるだろう。ミュージアムは文化施設であり、決して儲かるものではないだろうから、運営や管理の方法など最善を尽くして恒久的に発展するものであってほしいと思う。
開業予定は3年後の2021年春。どのようなミュージアムができあがるのか、今から楽しみである。
資料、画像提供=小田急電鉄