「夢の色」は年代によって異なる
皆さんの夢には色がついていますか?それとも古い映画のように色のないモノクロ映像でしょうか?
アメリカ心理学会(APA)で発表された「夢の色」に関する調査によると、被験者の年代によって顕著な違いが見られたそうです。
1993年と2009年に、10代から80代までの被験者を対象に行われた調査によると、カラーの夢を見ると答えた被験者は、1963年以降に生まれた人が約80パーセントを占め、1949年よりも前に生まれた人は20パーセント程度だったといいます。
アメリカでは、1930年代からカラー映画が制作されるようになり、1954年にテレビでカラー放送が始まりました。この調査を行った心理学者たちは、世代間における夢の色の違いは、カラーテレビの普及によるものではないかと述べています。
夢は記憶の断片から作られる
私たちが見る夢は、記憶の断片をつなぎ合わせたものだと考えられています。記憶の断片とは、その人が目覚めている間に各種感覚器を通して、脳に蓄積された情報のこと。視覚、聴覚、触覚、嗅覚、味覚といった五感だけでなく、痛覚、温度感覚、平衡感覚、落下感など、さまざまな情報が脳に蓄積されています。
夢とは、目覚めている間に取り入れた感覚の情報が再現されるものと考えることができますが、「夢を見る」というように、夢に感触や匂い、味を感じる人は少ないようです。
他の哺乳類と異なり、人間はさまざまな感覚の中でも、特に視覚、色覚が発達しています。周囲の様子を認識・理解する際、主に視覚を働かせます。そのため、脳に蓄積された視覚情報には、テレビ視聴による記憶も多く含まれています。さらに、実際に見たものだけでなく、想像によって創り出した情報も含まれています。
映像の色が与える効果
日本では、1970年代にはカラー映画が主流となり、一般家庭にカラーテレビが普及しました。当時のテレビはブラウン管でしたが、21世紀に入ると、液晶、プラズマなど薄型・大型カラーテレビが普及します。ハイビジョン、3D、4Kなど、私たちを取り巻く映像は、ますます美しくなり、パソコンやスマートフォンでも気軽に動画を楽しめるようになってきました。
その一方で、1980年代から、スティーブン・スピルバーク監督の『シンドラーのリスト』など、モノクロの映像が与える効果を狙って製作者側が意図的にモノクロを選んだ作品も登場します。モノクロ映像は、カラー映像が普及する前の時代を映し出すのに適した手法だと言えるでしょう。
1977年と1927年が交差する物語
映画『エデンより彼方に』『キャロル』などで知られるトッド・ヘインズ監督の新作『ワンダーストラック』も、モノクロ映像の効果を取り入れた作品です。本作では、1977年のミネソタに住む少年ベンと、1927年のニュージャージーに住む少女ローズという2人の子供たちを主人公に、2つの物語が交互に語られていきます。
1977年のベンは落雷で聴力を失い、1927年のローズは生まれた時から耳が聞こえません。ベンの物語はカラー映像、ローズの物語はモノクロ映像、2つの時代を行き来する壮大な世界観のなか、最後に2人の主人公を結ぶ謎が明かされていきます。
映画の楽しみ方は人それぞれですが、映像の色と記憶の不思議な関係に想いを巡らせてみてはいかがでしょうか?
【公開情報】
『ワンダーストラック』
2018年4月6日(金)より角川シネマ有楽町、新宿ピカデリー、ヒューマントラストシネマ渋谷他全国ロードショー
監督:トッド・ヘインズ
脚本・原作:ブライアン・セルズニック
出演:オークス・フェグリー、ジュリアン・ムーア、ミシェル・ウィリアムズ、ミリセント・シモンズ
配給:KADOKAWA
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公式サイト:http://wonderstruck-movie.jp