建築、現代美術を堪能できるミュージアム
全国的にも人気が高い「おんせん県おおいた」の由布院温泉。由布院盆地を中心とした温泉地で、気温が下がる秋から冬は、朝霧に包まれる景観の美しさに定評があります。豊後富士と呼ばれる由布岳は、5月末から6月初めにかけてミヤマキリシマが開花し、登山客の目を楽しまさせてくれます。
美しい自然に恵まれた由布院には、小規模な美術館が点在しています。2017年10月22日(日)、旧由布院美術館跡地に「COMICO ART MUSEUM YUFUIN(コミコアートミュージアムユフイン)」が開館しました。
こだわり抜いた黒と白の美学
この美術館の建築設計を担当したのは、隈研吾氏。東京大学教授で、東京オリンピックのメイン会場「新国立競技場」、パリ「サン・ドニ駅」、「V&Aミュージアムダンディー」など、国内外で大規模プロジェクトが進行中です。
東京港区の「根津美術館」、東京ミッドタウン内の「サントリー美術館」など、隈研吾氏が手がけた美術館は国内外にありますが、「COMICO ART MUSEUM YUFUIN」はその中でも規模の小さな美術館のうちのひとつ。由布院の町並みに溶け込み、由布岳や周辺の景色をくっきりと浮かび上がらせるために、黒色の素材「焼杉」が選ばれました。
ロゴを手がけたのは、原研哉氏。日本デザインセンター代表、武蔵野美術大学教授で、無印良品のアートディレクション、代官山蔦屋書店VIなど活動の領域は多岐に渡ります。
日本を代表する2人の作家の空間
「COMICO ART MUSEUM YUFUIN」は2階建ての建物で、1階に2つの展示室があります。2つの展示室は、自然光が入る水盤の空間を挟む形で配置され、ガラス越しにそれぞれの展示室が見えます。
GALLERYIには、村上隆氏のカラフルな作品6点。GALLERYIIには、杉本博司氏の作品5点が展示されています。展示室にはキャプションはなく、作品に関する情報は配布されるリーフレットに掲載されています。1時間のツアー形式で観覧するので、じっくりと作品と向き合うことができます。
自然と共存する「ムラ」の建物
2階には由布岳を眺望できる多目的ラウンジと屋上庭園があります。多目的ラウンジの天井と床は木材、壁が和紙で仕上げてあり、穏やかで寛げる空間となっています。
屋上庭園は、雲門禅師が説いた「山是山水是水」という禅の言葉から着想を得た枯山水の庭。活火山である由布岳の麓には、広大な緑の草原があり、黒い露岩が点在しています。露岩の黒と対比させるように、日田から取り寄せた白い岩を設えています。
敷地内には、3棟からなる研修施設「COMICO ART HOUSE YUFUIN(コミコアートハウスユフイン)」があり、それぞれの建物には、竹、土、木が用いられています。建物の表情に合わせて、日本庭園の樹木が選定されており、季節ごとに表情を変えて鑑賞者を楽しませてくれます。
作品数11点の小さな美術館ですが、日本を代表する才能が一同に会した特別な空間となっています。由布院を訪れる機会があれば、ぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか。
【取材協力】
COMICO ART MUSEUM YUFUIN(コミコアートミュージアムユフイン)