仮想ポーランドに敗戦…

日本代表
ウクライナに2点を決められた(写真:アフロ)

6月開幕のW杯へ向けてベルギーで合宿を行ってきたサッカー日本代表が、3月27日にウクライナと対戦した。W杯のグループリーグで対戦するポーランドを仮想した相手との一戦は、1-2の敗戦に終わった。この試合から見えてきたものを整理・検証しよう。
 

「選手のテスト」でアピールできたのは?

23日にマリ、27日にウクライナと対戦した今回の遠征には、ふたつの目的があった。
 

ひとつ目は選手のテストである。これまでチームのコアメンバーだったDFの吉田麻也と酒井宏樹、MFの香川真司と井手口陽介、FWの岡崎慎司と浅野拓磨らがメンバー外となる編成で、ヴァイッド・ハリルホジッチ監督はしばらく代表から離れていたMF本田圭佑と柴崎岳、FW宇佐美貴史を呼び戻した。さらに、初代表となる中島翔哉を招集した。
 

中島翔哉
ポルトガルで結果を出している中島翔哉は、日本代表でもアピールに成功した(写真:ムツ・カワモリ/アフロ)

W杯のメンバー入りへアピールをしたのは中島だ。デビュー戦で貴重な同点弾を決めたマリ戦に続いて、ウクライナ戦でも意欲的な仕掛けで攻撃に変化をもたらした。
 

マリ戦で起用された左ウイングのポジションには、乾貴士、原口元気、宇佐美と候補者が多い、一方で、ウクライナ戦で任された4-3-3のトップ下は、香川や井手口らの候補者が招集外だった。ハリルホジッチ監督がトップ下の候補として中島を考えるなら、この23歳はメンバー入りへ前進したことになる。
 

存在感を示せなかったのは本田と宇佐美だ。両者ともに分かりやすい解答としての得点やアシストを記録できなかった。また、ウクライナ戦に先発した柴崎は、槙野智章の得点につながるFKを供給したものの、流れのなかでは彼らしさを発揮できたと言い難い。
 

「チームの成熟度を高める」はずだったが…

今遠征のふたつ目の目的は、チームの成熟度を高めることだ。ヨーロッパでプレーする海外組を含めた活動は、昨年11月以来だった。マリ戦はW杯で対戦するセネガルのシミュレーションで、ウクライナ戦はポーランドを意識したものだった。そのうえで、チームとしての機能を取り戻し、さらに高めていく機会というのが2試合の位置づけだった。
 

ところが、である。
 

マリ戦でもウクライナ戦でも、チームとして戦う以前に「個人」のレベルの違いが浮き彫りになった。ウクライナ戦を終えたキャプテンの長谷部誠は、「W杯で戦う相手はマリ、ウクライナよりさらに強い。個々のレベルアップが必要だと全員が感じていると思う」と、厳しい表情で話した。W杯に出場できないマリ、ウクライナに勝ち切れなかった現実を、長谷部だけでなく多くの選手が重く受け止めていた。
 

個人でも組織でも対抗できないままW杯を迎えるのか?

個人のレベルアップはもちろん必要だが、W杯までの3か月弱で急激にレベルが変わるとは思えない。個の劣勢をカバーする手段が、より重要になっていく。
 

それこそは、現在のチームの最大の悩みだ。ウクライナ戦後の記者会見で、ハリルホジッチ監督は「日本を応援する人のなかには、ボールを持って仕掛け続けることを期待する人がいるかもしれない。しかし、そのようなぜいたくなことはできない」と話した。
 

ハリルホジッチ監督
マリ戦で、ピッチにいる選手に向けて指示するハリルホジッチ監督(写真:アフロ)

ハリル監督は現実的な手段として、タテに速いサッカーを志向する。自陣からショートパスをつないでいくのではなく、サイドチェンジのパスやタテへのロングパスを使って攻めていくことを求める。ところが、距離の長いパスを使うことで選手同士の距離感が遠くなり、1対1の局面が多くなってしまう。個の劣勢がかえって際立っているのだ。
 

ハリルホジッチ監督は5月下旬からの合宿で「課題を改善できる」と話すが、何よりも必要なのは目ざすサッカーの見直しだろう。このままでは個人で対抗できず、組織でも立ち向かえないまま、W杯を迎えてしまうことになる。