見たら一生忘れない!? 追い込み馬たちの名レース4選

数ある競馬の決まり手で難しいとされているのが追い込み。レース序盤は後方に控えて直線で一気に差し切るという芸当はなかなかお目に掛かれるものではない分、見たものに強烈な印象を与えます。誰もがスカッとする追い込みが決まったレースを紹介します。

ハラハラドキドキが止まらない、追い込み馬の魅力とは?

競馬に限らず、レースは得てして先行したほうが圧倒的に有利。それだけに、後方から差して来る馬があと一歩届かないというケースもよく見られます。実際に2017年にJRAで行われた平地全レースで逃げた馬は勝率18.0%を誇りますが、4角で10番手にいた追い込み馬たちの勝率はわずか5%にも達しませんでした。
 

しかし、あまりに珍しい決まり手だけに、現地で見たファンの印象に残ることは間違いなく、さらに馬券を買っているファンからしたら、直線で前を行く馬たちをごぼう抜きにするシーンはハラハラドキドキすることでしょう。
 

そんなレースを盛り上げるのには欠かせない、追い込み馬たちが見せた名レースの数々をご紹介します。
 

歴史に残る追い込みレースその1:2005年若駒S

日本史上最強馬の呼び声も高いディープインパクトが圧倒的な強さを見せつけたレースとは?(写真:アフロ)

史上2頭目となる無敗での牡馬クラシック3冠制覇を果たし、日本史上最強馬の呼び声も高いディープインパクト。その圧倒的な強さを見せたレースとして未だに語り継がれているのがこの若駒Sです。
 

新馬戦で記録した上がり3ハロンのタイムは33秒1という破格のもの。そのため当日の単勝オッズは1.1倍という断トツの1番人気に支持されましたが、レースではテイエムヒットベが作るスローな流れにハマり、道中は最後方に。そして直線を向いた時点では7頭中6番目という位置取りで、先頭からは7馬身差を付けられていました。
 

しかし、直線に入るとディープインパクトのエンジンは全開に。先に抜け出したケイアイヘネシーを残り200mの時点でかわして先頭に立つと、そのまま独走して圧勝。2着馬には5馬身の差をつけました。この勝利をキッカケにディープインパクトが競馬ファンに強烈な印象を植え付けたのは言うまでもありません。
 

歴史に残る追い込みレースその2:2000年根岸S

レースから20年近い時が経過しても、未だに語り継がれているのがこの年の根岸S。ブロードアピールの代名詞とも言えるピッチ走法が輝いたレースとして知られています。
 

根岸Sはスタートから出脚が付かず、道中は最後方に。ダートの短距離戦は先行した馬が圧倒的に有利なので、4コーナーを回っても14頭中14番手という位置にいたのではもう届かないと思われました。しかし、回転の速いピッチ走法で1歩ずつ前に迫り、前の馬を1頭、また1頭とかわしていきました。
 

そして200mを過ぎた時点で5番手にまで上がりましたが、ブロードアピールはそこからまたひと伸び。先に抜け出していたエイシンサンルイスを目掛けて追いかけ、ゴールまで100mを切ったところでとらえて勝利。上がり3ハロンのタイムはダートでは破格の34秒3を記録し、その豪脚は競馬ファンの記憶に残り続けることになりました。
 

ちなみに今年の3歳牡馬クラシック戦線の有力馬の1頭、ワグネリアンはブロードアピールの孫に当たります。ワグネリアンの豪脚は祖母譲りのものなのかもしれませんね。
 

弥生賞出走時のワグネリアン(筆者撮影)


 

歴史に残る追い込みレースその3:2014年桜花賞

ディープインパクトの産駒は父同様の鋭い末脚を武器にする馬が多いのですが、ハープスターもその1頭。もともと新潟2歳Sで重賞初制覇を飾った時からその末脚の鋭さは定評がありましたが、ファンにより強烈な印象を与えたのがこの年の桜花賞でした。
 

ディープインパクトの再来とばかりに注目されたハープスターは、このレースではスタート後にすぐに後ろに下げて、道中は18頭中18番手という位置取りに。フクノドリームが大逃げを打つ中でハープスターは直線でも最後方に位置していましたが、川田将雅騎手の手綱が動いた瞬間からグイグイと伸び出して、外から一気のごぼう抜き。
 

残り100mを切ったところで先に抜け出したレッドリヴェールを捕まえて見事に1着。着差はクビ差とあまり付きませんでしたが、直線を向いた時点では10馬身以上離されていたことを考えれば、衝撃的な勝ち方だったのは言うまでもありません。
 

歴史に残る追い込みレースその4:1998年4歳未勝利戦

最後に挙げたこのレースを知っているのはなかなかの競馬通。勝ち馬のリアルヴィジョンはG1レースどころか重賞すら勝ち星を挙げられずに引退した凡庸な競走馬でしたが、そんなリアルヴィジョンが強烈な印象を与えたのがこの未勝利戦でした。
 

デビュー時点で570キロもある大型馬だったこともあり仕上がりが遅れて、初陣を迎えたのは4歳の10月。4番人気で迎えたこのレースはスタートから馬群に全くついていくことができずに道中では先頭はおろか、馬群からも離されるという状態に。この時点で誰もがリアルヴィジョンのシンガリ負けを察したことでしょう。
 

しかし、3コーナーを過ぎたあたりからジワジワと上がって行ったリアルヴィジョンは4コーナーを回ると一気にエンジン全開に。外から猛然と追い込み始め、先頭に立って後続に2馬身差をつけていたリワードグランツを並ぶ間もなくかわし、3馬身差もつけて勝利しています。
 

ちなみにこのレースがよほどファンの記憶に残ったのか、その後リアルヴィジョンは全16戦中、1番人気に推されたのが9回を数えるなど、関東開催の条件戦でカルト的な人気を誇りました。
 

一度見れば記憶に残る追い込み馬たちのレースの数々。馬券を買っているとドキドキすること間違いないですし、思わず誰かに語りたくなるものになるだけに、ぜひとも競馬場でこの感動を体験してみましょう。

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