2016年大人気となった『99.9-刑事専門弁護士-』のSEASONⅡが早くも最終回を迎えます。松本潤演じる主人公の弁護士・深山大翔と、香川照之演じる室長・佐田篤弘の「迷コンビ」が、粘り強くもコミカルに難事件の事実を掘り起こすこのドラマの魅力に迫ります。
さまざまな手法で視聴者を取り囲む小ネタ
小ネタが話題になっている『99.9』ですが、その仕掛けは多様。第8話では、事件の鍵となる羊かんの包みには「水木屋のひとと羊羹」。はなみずきを歌う一青窈を思わせます。第7話では『銀河鉄道999』の作者松本零士が主人公・鉄郎のコスプレで登場、感動的な笑いでした。小道具に仕掛けられた小ネタあり、深山&佐田コンビによるギャグあり、ゲスト陣の存在そのもののネタあり、あの手この手の小ネタは実に巧妙です。
小ネタの多さを歓迎しない声もありますが、観ているうちにジワジワと効いてきて、いつの間にかプッと吹き出してしまう「笑い」には、わかる人だけわかればいいのスタンスよりも、なつかしくて温かい味わいを感じます。しかし、小ネタオンパレードがなかったとしても、99.9は「実験」「検証」を丁寧に行う法廷ドラマ、裁判官のスタンスまで浮き彫りにした骨太な社会派ドラマと言えます。
小ネタがなくてもおもしろい!骨太なのに軽やかな深山大翔がいい
3月11日放送の第9話「初めての敗訴!! 巧妙な罪… 裁判所の逆襲!! 葬られた事実とは…!?」では、笑福亭鶴瓶演じる裁判官・川上憲一郎によって被告人に無期懲役の判決がくだり、悔しさをにじませた深山大翔ですが、意外にも無実を証明するための次の行動にすんなり切り替わります。
深山の怒りは、見落としている可能性がある自分自身に対して。理不尽な判決に感情をひきずったところで、解決には至りません。つまり今の問題(無罪であろう人間の無期懲役判決をどうするのか)を解決するためには、次のステップへ向かうまで。クヨクヨしている場合ではないのです。
生きるハウツーが詰まった『99.9』
シンプルな思考に、物欲や出世欲から解放された心の自由さを感じる深山大翔。ファッションやインテリアにはミニマムな生き方さえ垣間見えます。彼のギャグは彼のリズム、独特のコミュニケーションツールであり、柔軟な思考を生むための助走にもなっているようです。
見習いたいのは彼の切り替え力。悔しがることはあっても、くじけてしまうことはありません。そもそも「くじける」必要がないからです。
深山大翔の軽やかさは松本潤の感性があってこそ。ケセラセラ、take it easy 、案ずるよりも産むが易し……。そうとうな努力をしているにもかかわらず、涼しい表情の深山大翔の風まかせの雰囲気は、私たちが日常生活で窮地に陥った時でも役立ちそうな気がします。
3月18日の最終回では、立ちはだかるさらに高い壁をどう切り崩していくかが気になるところ。まざまざと姿を現すはずのラスボスに、刑事事件専門ルームの、これまた軽やかなメンバーたちが一丸となって対峙する深山大翔の姿に期待したいと思います。
明日からまた仕事……なんて思う日曜日、人生はケセラセラと軽やかに笑顔でやり過ごす生き方を、ドラマはそっと教えてくれているのかもしれません。