銅メダルに輝いた「カーリング女子」を経営者が注目すべきワケ

競技史上初めての銅メダルに輝いた女子カーリングチーム。メディアでも注目されたLS北見のメンバーですが、本橋麻里選手を中心としたチームマネジメントは学ぶべき点が多かった。どの点がすぐれていたか、解説する。

経営者にとって勉強になる「LS北見のマネジメント」

LS北見
銅メダルに輝いた女子カーリング。中でも本橋麻里(右)のマネジメント手腕は経営者の手本とも言えそうだ(写真:長田洋平/アフロスポーツ)

13個のメダルを獲得し、日本代表チームとして冬季五輪史上最高の成績を残して平昌五輪が幕を閉じました。感動のシーンは数多くあったものの、明るいチーム特性とも相まって、競技史上初めての銅メダルに輝いた女子カーリングチームの注目度はひとしおだったのではないでしょうか。
 

既に多くのメディアで報道されているように、女子カーリングチームはLS(ロコ・ソラーレ)北見の5人。中心となっているのは、06年トリノ、10年バンクーバーと2回の五輪でそれぞれ7位、8位に入賞を果たし、マリリンの愛称でアイドル的人気も集めていた本橋麻里選手です。彼女は2回の五輪をチーム青森で出場した後に、出身地の北海道北見市常呂町に戻り地元で現チームを立ち上げ、現在も自らチームの主将を務めています。
 

注目すべきは本橋麻里の「起業家スピリッツ」

私が注目したのは、主将としての彼女よりもむしろ、チームLS北見のトップマネジメントとしての彼女の手腕です。彼女が選手は、地元常呂町を含む北見市の出身者。純血地元チームの組成こそ、このチームの最大、最強の特徴でもあります。練習場の確保から支援者開拓やスポンサー集めまで、全て彼女が起業家よろしく一人で手がけ、今の形を作り上げたのだと言います。
 

地元で盛んなスポーツを地域活性化に活かしつつ、チームとしては地域の支援を取り付けることで運営を成り立たせるという、地域共存型のビジネスモデルがまず何より奮っています。地方創世を地で行くような「起業家スピリッツ」に溢れているではないですか。過去に写真集を出すほどのアイドル的に人気者になった時点で、その目線が中央にしか向かなくなっても何の不思議もないのですが、自身の知名度を地域活性化に転用し地元の盛り上げに尽力したというのは、本当に素晴らしい発想であると思います。
 

なぜ「明るい」チームが作れたのか

さらにチーム運営においては、自身は主将を務める現役プレイヤーでありながら直接ゲームに出るのではなくリザーブとして一歩引きつつ、マネジメントの立場に立って若いチームをリードするやり方をとっています。彼女が重視をしたことはチームワーク。実績も知名度も圧倒的に高い彼女がチームに入ってプレーをすれば、若い選手たちが彼女を頼ってバランスが崩れる。自分が一歩引くことでチームワークを重視したのでした。
 

ちなみに4人という人数は、ワールドカフェ方式という意見出しを目的とした会議形式でも使われる、「指導的な立場の人間が加わらない限りにおいて、全員が対等に意見を交わしやすい人数」であるとされています。彼女がそのことを知って、試合の場から一歩引いたのか否かは定かではありませんが、メディアで盛んに「明るい」「楽しそう」と評された試合中の円滑なチームコミュニケーション形成に、大きく一役買ったことは間違いないでしょう。
 

「サーバントリーダーシップ」の手本を見た

今大会での彼女の主な仕事は、選手が引き上げた練習後のリンクで、ストーンの一つ一つを自ら投げて個々の滑りの違いを確認し、どの選手にどのストーンを投げさせるかを決めたり、氷の状態を確認して温度によるストーンスピードの変化などを記録・分析して、試合前の選手に適切かつ実践的な戦略アドバイスをしたり。さらにはテレビ中継で「もぐもぐタイム」として話題になった、ハーフタイムでの選手たちの栄養補給用に食べやすくカットしたフルーツを用意するのも彼女の仕事でした。マネジメント手法として近年注目を集める「サーバントリーダーシップ」の手本を見るかのような働きぶりには、本当に頭が下がる思いです。
 

LS北見の大活躍で幅広い層から国民的注目が集まったカーリングですが、企業経営者、特に地方の起業家や中小企業オーナー系経営者にとっても、注目すべき多くの勉強材料にあふれた銅メダル獲得だったと思います。

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