社長と連絡が取れない「はれのひ」

成人式
写真は成人式のイメージ。「はれのひ」の突然の事業停止に混乱があったようです

振り袖のは販売・レンタルを手掛ける「はれのひ」が突然事業を停止し、成人式で振り袖を着ることができない方が続出しました。ほかに今春の入学式などで使用する振り袖が入手できない方もいるようです。会社の事業停止自体はよくあることですが、問題なのは、会社の社長が「夜逃げ」よろしく全く連絡が取れないという状況に陥っていることです。
 

破産は会社の「終活」。実際にはどんな手続きをする?

事業を継続できない場合、会社が取るべき主な手段は破産です。破産は、事業を停止した上で、できる限り財産を換価して負債の返済に充てる手続きです。その手続きが完了したら会社は消滅します。つまり、破産は、事業を続行できなくなった会社が行う「終活」のようなものであり、関係者に対して全うする最後の責任とでも言っていいと思います。
 

通常、破産は自己破産、つまり破産する人(法人)が自ら裁判所に破産を申し立てます。会社のような法人の場合、実際にはその代表者(例えば社長)が、役員会(取締役会)での全員一致の決議を経て破産申立てをします。
 

役員がいない会社は破産できるのか

今回の場合、社長と連絡が取れない状況にあります。その他の役員(取締役)がどうしているのか分かりませんが、役員も連絡を絶ってしまっているのであれば、自己破産申立てをすることができる人がいないということになります。
 

ちなみに、代表者である社長がいないとか、役員会で破産するかどうか意見がまとまらなくとも、取締役が会社の破産申立てをすることができます。これを「準自己破産申立て」といいます。
 

役員が皆いなくなってしまった場合は、この準自己破産もできません。株主が役員を変更するなどして対処してくれればいいですが、役員と株主が同一人物ですとそのようなことは期待できませんし、そうでなくとも、株主に役員を変更させるといった対処をする義務があるわけでもありません。そうすると、(準)自己破産は期待できないということになります。
 

破産申立てには他に債権者破産の申立てといって、債権者が破産申立てをする制度があります。ただ、手間暇や費用がかかることですから、わざわざ債権者が破産申立てをするというのは稀です。
 

「はれのひ」から債権を回収する方法

債権者破産の申立てをしないのであれば、債権者は今後、会社の財産を個々に差押えて債権回収するほかありません。差押えをするためには、通常、訴訟などの法的手続を経たうえで、差押えの申立てをするというプロセスを取る必要があります(ただし、担保権を持っている債権者は別です)。
 

しかし、「はれのひ」に財産が残っているとは考えられませんから、そのような手続きをとることは現実的ではありません。
 

てるみクラブが破綻した際の記事で触れましたが、一般消費者を保護するための弁済保証金制度などがあれば一定の回収を図ることができますが、「はれのひ」の場合はそのような制度による救済も見込めないように思われます。
 

その他に考えられるのは、法人ではなく、役員(場合によっては従業員)個人を対象にして損害賠償請求をすることです。例えば、納品不可と分かっていながら晴れ着の代金を得ているような事情があれば、役員が損害賠償責任を負うことは十分ありえます。もっともその場合でも、役員が「納品不可と分かっていながら晴れ着の代金を得た事実はない」といったように争うのであれば、訴訟などの手続きを取る必要があること、賠償を得るには役員に資力がなければならないことといった問題は残ります。
 

「夜逃げ」は犯罪になるのか

会社の社長が「夜逃げ」をした場合、法的に何かペナルティがあるかというと、そのような制度はありません。もちろん「夜逃げ」をしたことで、債権者に損害を発生させたということであれば、その損害を賠償する責任を負うことは当然です。
 

現在、報道によれば「はれのひ」については詐欺罪で立件する動きもあるようです。これは、連絡がとれないことについて立件しようとしているわけではありません。代金の支払ができないとか晴れ着を納品できないことが分かっていながら、商品を仕入れたとか代金を得たという事実があれば詐欺罪になりますので、このような事実があるかどうかを捜査しようとしていると思われます。
 

いずれにしても「はれのひ」の社長は非難の対象に

いずれにしても、何の責任を取ることもなく、連絡を断ってしまった「はれのひ」の社長が、厳しい非難に曝されるのは当然というほかないと思います。