駅伝は「シューズ」にも注目が集まった!
陸上競技のロードレース・駅伝シーズンは、お正月の風物詩である、ニューイヤー駅伝(1日開催)、箱根駅伝(2日、3日開催)で盛り上がりを見せました。2018年頭の両大会は、戦前は混戦が予想されていましたが、終わってみればニューイヤー駅伝は旭化成が二連覇、箱根駅伝は青山学院大学が四連覇を達成しました。
今回は、各チームの優勝の行方もさることながら、昨秋のTBS系列ドラマ「陸王」の影響により、各選手が着用しているシューズにも注目が集まっていたように思います。
実際に、箱根駅伝のレースを見守っているとシューズに関する「ある変化」が気になりました。それは、総合優勝を果たした青山学院大学の8区走者、下田裕太選手(4年)は以前、他社のシューズを着用していましたが、今回の箱根駅伝では、ニューバランス社のシューズを着用していたことです。
また、総合8位の城西大学では、シード権獲得の原動力となった5区走者、服部潤哉選手(3年)も同社のシューズを着用していました。
シューズ職人、三村仁司氏とは?
実は、箱根駅伝直前の1月1日にニューバランスから、「三村仁司氏の主宰するM.Lab(ミムラボ)とのグローバル・パートナーシップ契約を締結し、三村氏をニューバランスの専属アドバイザーに就任する」という発表がありました。
三村氏は、かつて、有森裕子選手(バルセロナ五輪マラソン銀メダル、アトランタ五輪マラソン銅メダル)、高橋尚子選手(シドニー五輪マラソン金メダル)、野口みずき選手(北京五輪マラソン金メダル)のシューズを担当していました。
また、陸上選手にとどまらず、野球のイチロー選手、サッカーの香川真司選手のシューズも手がけていました。
参照:一流はなぜ「シューズ」にこだわるのか (青春新書インテリジェンス)/Amazon
『真のランニングブランド』になるために
1月17日、ニューバランスは新戦略発表会を行い、三村氏が主宰するM.Labとグローバル・パートナーシップ契約を締結した経緯などを説明しました。
ニューバランスによると、直近4年間で同社のランニングビジネスは特に成長しており、今後、よりランニングに踏み込んだビジネスを展開したいという意図を持っていると言います。
具体的には2020年に、「世界的に『ベスト』なランニングブランド」になり、目安として「日本のランニングシューズマーケットで20%のシェアを獲得する」ことを目標に掲げているとのこと(現在は約15%とのことでした)。
ニューバランスはこれまで、市民ランナー向けのシューズを展開していましたが、一方でエリートランナー層に向けの製品に弱みがあったといいます。アメリカのニューバランス・アスレチック・インコーポレイテッド グローバル・ランニング部門担当副社長のトム・カーリオ氏は「ランニングのトータルブランドであるならば、ランニングをつきつめたトップアスリートたちに向けたシューズを作れなければ『真のランニングブランド』になれない」と話し、さらに、「ベストブランドになるためには、職人的技巧が必要」ということで、三村氏に白羽の矢を立てたと説明しています。なお、三村氏との契約は、グローバル契約で、世界のランナーにアプローチをしていくといいます。
戦略発表会に出席した三村氏は、「選手を強くしたいという私の思いや方向性がニューバランスと一致したので契約した」と経緯を説明。契約期間は5年で、3年の延長オプションがあるとし「もう私も70歳の古希ですから、どうなるかわかりませんけれど、仕事をするからには夢を持ってやりたい」と抱負を述べていました。
今後のシューズブランド勢力図にも影響がある?
なお、三村氏は昨年までアディダスと契約をしていましたが、契約解消後は4社ほどからオファーがあったとか。ニューバランスについては、シューズに「まだ改善の余地がある」としつつ、「コミュニケーションがとれること」が契約の決め手だったとも囲み取材で明かしていました。
今回の契約を受け、今後のシューズブランドの勢力図にも影響があるかもしれません。というのも、三村氏のシューズを求めてくる選手がいるためです。実際に、ニューバランス ジャパンの冨田智夫代表取締役社長は「箱根駅伝でもやっと着用率が10%を超えた。これを皮切りに、エリートランナーからも、市民ランナーからも、信頼されるようになりたい」と話していました。今後開催される駅伝やマラソンは結果だけでなく、「シューズ」にも注目して観戦すると面白いかもしれません。
なお、ニューバランスとM.Labとの新作については11カ月ぐらいで商品開発を行うといい、2019年にはお披露目される見通しです。