ビジネス界にとっては衝撃的なニュース

2017年年末近くになって、ビジネス界にとっては衝撃的なニュースが飛び込んできました。トヨタ自動車とパナソニックが車載用角形電池事業における協業について検討を開始するというニュースです。
 

日本を代表する製造業の両社には、歴史的にも縁があった

トヨタ自動車とパナソニックと言えば共に日本を代表する製造業であり、業界分類は違うものの、それぞれ日本的経営の代表的企業として古くから海外の経営学者からも注目される存在でありました。と言うもの、トヨタ自動車は生産工程における徹底した無駄の排除を実現した「かんばん方式」で知られ、パナソニック(旧社名松下電器)は経営の神様と言われた松下幸之助氏起業の家電製造業として街の家電販売特約店を介しての三種の神器をはじめとした家電販売は、戦後日本の家電普及に大きな役割を果たしました。
 

そして、両社が共に日本的経営の代表格として取り上げられたもうひとつの理由には、「人を大切にする経営」を標榜し、高度成長を支えた終身雇用、年功序列制の基礎を作り上げた企業であったからでもあります。さらに、両社の源流には松下幸之助氏がトヨタ自動車の中興の祖である第三社長石田退三氏に師事したとの逸話もあり、両社は歴史的に見て決して浅からぬ縁があるのです。今から三十余年前の大学在学時代に、経営関連ゼミで日本的経営の両雄として研究題材にした私には、特に感慨深いものがあります。
 

「協業検討」に賭ける両社の思惑は?

今回の「協業」は非常に大きな話です。ハイブリッド(HV)自動車では世界的に大きなシェアを取りながらも、EV(電気自動車)開発では遅れを取っている感の強いトヨタが、一番の難関であった車載用蓄電池開発をパナソニックに委ね全面提携の下で、大々的なEV戦略に打って出ようということなのです。一方のパナソニックは、リチウムイオン電池生産では現在世界トップシェアを誇り、来年創業百年を向える同社にとってこの分野を確固たる事業の柱に育てたいという強い意向を持ってもいるのです。
 

いわばいとこ同士のような縁浅からぬ両社が、ようやく双方のニーズの合致を持って相思相愛となり百年越しの恋を実らせるかもしれない、という日本産業界における一大ロマンスが盛り上がりを見せている、ということでもあるのです。
 

自動車業界の大転換期はオールジャパンで乗り切る?

EV開発はどちらかと言うとヨーロッパ勢が先行気味で、日本においてもフランスのルノー社の実質的傘下にある日産自動車が数歩リードしている感が強くあります。しかし、この提携で流れは大きく変わるかもしれません。トヨタ自動車は今回の協業を他社にも広げていく考えを示唆しており、トヨタの提携先であるマツダ自動車やスズキ自動車が今回の協業に参加することは想像に難くありません。
 

さらには日産自動車にしても、どこかのタイミングでこの連携に加わらないとも限りません。ガソリン車からEVへという産業界の大転換期とも言えるパラダイムシフトが、オールジャパン体制での世界制覇という展開まで生み出す可能性もありうる、そんなロマンすら感じさせる提携でもあるのです。
 

揃って会見に臨んだトヨタ自動車の豊田章男社長、パナソニックの津賀一宏社長は、「100年に一度の大改革の時代、過去の延長線に未来はない」(豊田社長)、「社会発展のカギを握る事業を、スピード感を持って突き進む」(津賀社長)とそれぞれこの歴史的提携に賭ける思いを語りながら、握手を交わしました。
 

新しい年を前に発表された自動車、家電という共に裾野の広い我が国基幹産業の第一人者企業同士の協業検討は、オールジャパン構想含め「強い日本」の復権に向けた大きな第一歩になる、そんな予感すら感じさせる熱い握手に思えました。この提携の行方を、注目して見守っていきたいと思います。