公職選挙法とは
去る10月10日、衆議院議員総選挙が告示されました。選挙にもルールがあります。それが公職選挙法です。今回は、特に選挙運動についてのルールを少し紹介したいと思います(なお、以下は一部を除き衆院選の候補者に関してのルールです)。
選挙運動は制限だらけ
公職選挙法を見ると、選挙運動は厳格に制限されていることが分かります。
例えば、町でみかける選挙事務所ですが、設置できるのは一つだけです(ただし、選挙区による例外あり)。そして、選挙事務所には選挙管理委員会から交付される標札を入り口に掲示しなければならず、ポスターを貼るにしてもサイズは縦3.5メートル、横1メートルを超えてはなりませんし(ただし、縦を横にするのはOK)、枚数は3枚までです(ただし、他に立て札や看板を利用している場合は、合計3つまで)。
選挙カーは1台まで、選挙カーが走行中は選挙運動禁止!?
選挙のシーズンになると、候補者の名前を連呼する選挙カーが走りまわりますが、選挙カーは1台までしか使用できません。ただし、自動車の代わりに船舶を使用してもOKです。
乗車してよい人数は、運転手を含めて5人までとなっています。乗車している人は乗車用腕章を付ける必要があります。そして、意外なことに、走行中の自動車においては選挙運動は一切できません。
え?でも、選挙カーから候補者の名前を連呼しているのに……
このような行為を法律上「連呼行為」というのですが、連呼行為に限ってOKとなっています。
ちなみに連呼行為は、一定の時間内で演説会場等や自動車走行中に限ってOKとなっており、本来は原則禁止の行為とされています。また、学校や病院等の施設の周辺で連呼行為をする場合は、マイクの音量を落とすなどして静穏の保持に努めないといけません。
飲食物の提供は特に厳しいルール
選挙運動に関して飲食物の提供は禁止されています。法律上「何人も」となっていますから、候補者が有権者へはもちろん、有権者やそうでない第三者であっても禁止されます。
ただし、湯茶や通常用いられる程度の菓子は除くと規定されていますので、この範囲であればOKです。ちなみに「衆議院選挙の手引き(平成26年)」という書籍によると、OKの例として、「せんべい、まんじゅう等、いわゆる『お茶うけ』程度のものをいう」とあり、その他「みかんやりんご程度の果物や漬物等」もOKだそうです。NGの例として「酒、ビール、サイダー、サンドイッチのようなもの」とあります。菓子でも「高価な菓子」はNGです。
インターネットの利用は制限付でOK
厳格なルールにより行われる選挙運動ですが、平成25年の法改正により、インターネット等を利用した選挙運動が可能となりました。ウェブサイトはもちろんのこと、SNS、動画共有サービス、動画中継サービスも利用可能ですし、メールもOKです。
もちろんこれらも様々な制約があります。例えば、メールは特に厳格なルールがあり、候補者と政党のみしか送信が許されません。そして、送信先も送信に同意をした人等に限られます。
電話をかけるのはOK
ところで、知人や友人が選挙の時期になると電話をかけてきて、「●●(候補者の名前)さんを宜しくね」といったことを経験した方、逆に電話をかけている方もたくさんいらっしゃると思います。公職選挙法では戸別訪問といって家や会社等に直接訪問して選挙運動することは禁止されていますが、電話をかけることは許されています。
自由と公正な選挙を
かつて、戸別訪問禁止のルール自体が憲法違反ではないかということが裁判で争われたことがありました。最高裁判決(昭和56年6月15日)は選挙の自由と公正を確保することを目的とする戸別訪問を一律禁止する公職選挙法の規定は憲法違反ではないとしました。
一有権者としては、候補者や政党には公正な選挙運動を行ってもらいたいと願うばかりです。