最終戦はおぼろげなゲームになりがち

ロシアW杯への道のりにおいて、9月5日のサウジアラビア戦は消化試合ではあった。ただ、ロシアW杯での戦いを見据えると、無駄にはできない一戦だった。
 

過去3度のW杯予選で、日本は最終戦を待たずに突破を決めている。ハラハラもドキドキもせずに済んだ意味では、もちろん悪いことでない。ただ、消化試合となった最終戦に、明確な意義を見出せなかったのも事実だ。その結果として対戦相手や勝敗はともかく、試合内容は誰にとってもおぼろげなゲームになっていた。
 

今回はチーム全体が勝利を目指して戦っていた

W杯出場を決めた後のゲームは、決定から数日後でも数か月後でも、W杯本大会へ向けた強化のライン上になければならない。そう考えると、今回のロシアW杯最終予選の最終戦であるサウジ戦はこれまでと違った。
 

0-1でリードされたまま終盤を迎えると、交代した本田圭佑に代わってキャプテンの腕章を巻いた吉田麻也が観衆とやり合った。時間稼ぎをする相手にいらだったのかもしれないし、観衆の挑発に耐えられなかったのかもしれない。
 

日本代表
吉田(後列右から2人目)をはじめ、完全アウェーの中、ハリルJAPANの面々は勝利を目指したが…(写真:田村翔/アフロスポーツ)

いずれにしても、彼が勝負にこだわっていたのは確かだ。消化試合のメンタリティで臨んでいたら、ここまで感情を露わにしないだろう。吉田だけではない。チーム全体が勝利を目指して戦った。それは間違いない。
 

ならば、サウジのW杯出場をアシストすることになった理由は何だったのか。
 

サウジのW杯出場をアシストすることになった理由

■長時間のフライト+時差+蒸し暑さ

ひとつ目にして最大の理由は、蒸し暑さである。オーストラリア戦後に10時間以上のフライトで移動し、日本と6時間の時差があり、なおかつ蒸し暑さがずっしりとまとわりつく条件で、いいサッカーをするのはそもそも無理がある。
 

そうは言っても、条件はサウジも同じだ。暑さだけで勝敗を語ることはできない。
 

■サウジの興味深いゲームプラン

サウジのゲームプランは興味深い。オランダ人のヴェルト・ファンマルワイク監督が率いるチームは、前半から猛チャージをかけてこなかった。勝点で並ぶオーストラリアはタイを下しており、W杯出場には勝利が絶対条件だったにもかかわらず、前半は力をセーブしているようにさえ見えた。日本にボールを持たされているところもあったのだろうが、6万人を超える観衆をジリジリとさせる場面さえあった。
 

ペースが変わったのは後半だ。俊敏なアタッカーの投入をきっかけとして、攻撃のスピード感が増していく。62分には途中出場の選手がゴールネットを揺らし、スタジアム全体で日本を威圧するムードを作り出す。終盤は彼らが得意とするマリーシア──何かあるたびにピッチへ倒れ込み、時計の針を進める──を駆使して時間を稼ぎ、終了のホイッスルまでこぎつけた。
 

■日本は対照的な戦い方だった

日本は対象的だった。オーストラリア撃破に結びついた前線からの意欲的な守備を、立ち上がりから見せていったのはいい。ただ、サッカーをするには過酷なコンディションである。同じペースで最後までプレーできるはずはない。ペースダウンをできるだけとどめ、なおかつ勝負どころを逃さない戦いが求められたのではないだろうか。
 

疲労を蓄積しやすい条件が揃う本大会…上位進出には何が必要?

ロシアW杯は、酷暑の大会にはならない。サウジ戦のようなコンディションで戦うことはないが、勝ち上がることで移動が増える可能性は高い。試合を重ねていくから、疲労も蓄積していく。「この試合に勝てばベスト8」といった位置づけを持つゲームに、トップコンディションで臨むことは不可能と言っていい。
 

それだけでなく、対戦相手のレベルも上がっていくのだ。サウジ戦に似たフィジカルコンディションで、世界的強豪と真剣勝負を挑み、打ち勝っていかなければ、W杯での上位進出は叶わないのである。
 

自分たちが目指すサッカーだけでは、必ずしも勝利はつかめない。勝利から逆算した柔軟性を身に付けることが、ロシアW杯への強化ポイントになってくる。