オーストラリア戦で6大会連続6度目のW杯出場を決めた日本代表

これまでとは違う2つの価値観が生み出した、6大会連続6度目のW杯出場だった。
 

8月31日に行なわれたオーストラリアとのロシアW杯最終予選で、ヴァイッド・ハリルホジッチ監督は井手口陽介と浅野拓磨を先発させた。昨夏のリオ五輪に出場し、すでに最終予選のピッチに立っているふたりだが、21歳の井手口は日本代表で3試合目の出場だった。22歳の浅野は12試合目の出場でも、スタメンは昨年9月のタイ戦以来である。
 

ハリルホジッチ監督は大一番でも選手起用の基準を貫く

井手口と浅野
井手口陽介(左)と浅野拓磨を起用し、その2人が結果を残した(写真:JFA/アフロ)

W杯予選で一度も勝ったことがないオーストラリア戦に、負ければW杯出場の2位以内確保が難しくなる決戦に、本田圭佑や香川真司ではなく経験も実績も少ない選手を起用する。思い切った決断である。それでも、「名前でプレーする選手はいないと言い続けてきた」という選手起用の基準を、ハリルホジッチ監督はこの大一番でも貫いた。
 

試合の重要度が増すほど安定感や安心感が重みを増し、経験重視の采配が理解されてきた最終予選の歴史に照らすと、今回のハリルホジッチ監督の選択はリスクが大きいと見なされかねない。だが、本田も香川も出場せず、最終予選でチーム最多の4得点を記録している原口元気も、同2得点の久保裕也もスタメンに名を連ねないなかで、日本は2-0の勝利をつかんだ。41分に浅野が先制弾を決め、82分には井手口がオーストラリアの希望を打ち砕く2点目をもぎ取った。
 

「フィジカルコンディションが整っていないと、ハイレベルなゲームでは戦えない」と指揮官は言う。それはつまり、所属クラブで周囲を納得させるプレーを見せなければ、代表のスタメンはつかめないというメッセージである。「正当な競争原理」のもとでW杯出場を決めた今回の一戦は、世代交代の表れという事象に止まらず、これからの日本サッカーに影響を与える意味でも新たな価値観を提供したと言える。
 

日本のボール支配率は38.2%。押し込まれた印象がない理由

もうひとつの新たな価値観は、ボールを持つことに対する考え方だ。
 

オーストラリア戦のボール支配率は、日本が38.2%でオーストラリアが61.8%だった。自分たちがボールを持つことでゲームの主導権を握り、チャンスを増やしていこうとしたブラジルW杯当時のチームとは正反対と言っていい。
 

ところが、数字ほどに押し込まれた印象はないのである。日本は15本のシュートを記録したが、オーストラリアはわずかに4本だ。決定的なシーンも、1度しか与えていない。実効性に富んだ攻撃をしたのは日本だった。「ボールは持つが相手に脅威を与えられない」ブラジルW杯のチームとは違う姿を、ハリルホジッチ監督の日本は見せている。
 

浅野や井手口、大迫の起用が当たる

浅野や井手口の起用も、チームの戦略に沿ったものだ。スピード豊かな浅野は、DFラインの背後を狙ったボールに食いついていける。ショートパスを何本もつながなくても、相手守備陣にストレスをかけることができるのだ。
 

ボールを奪い取る能力に優れ、自陣から敵陣を何度も往復できる井手口は、相手ゴールに近いエリアでマイボールにすることを可能とする。原口が敵陣左サイドでカットしたボールを持ち込み、そのまま蹴り込んだ2点目のゴールは、ハリルホジッチ監督の戦略と井手口の特徴がシンクロしたものだっただろう。
 

大迫
大迫勇也(写真:アフロ)

多くのパス交換を必要としない攻撃を支えているのは、最前線の大迫勇也だ。ドイツの1FCケルンで長足の進歩を遂げているこの27歳は、ゴールに背を向けた状態でも確実にボールを収め、味方選手の攻め上がりを促すことができている。オーストラリア戦は無得点に終わったが、最終予選突破の立役者と言っていい。
 

5日のサウジアラビア戦は新たな競争の第一歩

すでにロシアW杯出場を勝ち取った日本だが、5日にはサウジアラビアとのアウェイゲームに臨む。最終予選のラストゲームだ。
 

日本にとっては消化試合でも、サウジはW杯出場を賭けている。6万人の観衆で埋まるはずの敵地には、これまで以上の覚悟で立つべきだ。
 

長距離移動と時差に直面し、予選突破の達成感も少なからずあるだろうが、今後を見据えると負けられない一戦である。19年のアジアカップや次回のW杯予選を精神的優位な立場で迎えるためにも、アウェイで強さを見せつけるのだ。
 

何よりも、サウジ戦は新たな競争の第一歩だ。ロシアW杯のメンバー入りへ向けた個々のアピールを見たい。とりわけ、オーストラリア戦で歓喜の中心から外れた選手の捲土重来が望まれる。本田、香川、岡崎といった経験者が結果を残すことで、若い力が台頭するチームはさらに逞しくなっていくからだ。