ジルパテロールが入った餌を食べた牛の肉を食べた?
世界ボクシング評議会(WBC)は、15日に開催された世界バンタム級タイトルマッチで山中慎介を破って新王者となったルイス・ネリ(メキシコ)が、試合前に行ったドーピング検査で禁止薬物ジルパテロールに陽性反応を示したと公式サイトで発表しました。
ジルパテロールは、筋肉増強剤クレンブテロールに似た性質を持つといい、ジルパテロールが入った餌を食べた牛の肉をネリが食べた可能性があるという報道もあります。WBCは引き続き調査を進めるとしています。
山中は、このタイトルマッチで4回TKO負けし、王座から陥落。日本最多記録の世界王座13連続防衛に失敗しています。
ドーピング(doping)については、医師の清益功浩さんがAll Aboutの『ドーピングとは…禁止薬物・検査の方法・選手の注意点』で解説をしています。
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ドーピング(doping)とは
ドーピング(doping)とは、スポーツをする際に薬を使って競技力を高めること。南アフリカ共和国の原住民であるカフィール族が、祭りのときに「ドップ」という強い酒を飲み、祭りを盛り上げていたことが言葉の由来とされています。
清益さんによると、最近は薬によるドーピングだけでなく、自己血液を輸血することによって酸素を全身に運ぶ能力を高める「血液ドーピング」、筋肉疾患を治すための遺伝子治療を悪用して細胞・遺伝子・遺伝因子・遺伝子表現の調整する「遺伝子ドーピング」などがあり、いずれもスポーツにおいて禁止されていると説明します。
ドーピングが禁止される3つの理由
世界的に「アンチ・ドーピング」の考えは徹底されており、国際的なスポーツの場ではドーピングは禁止されています。ドーピングが禁止される理由として、以下の3つを清益さんは挙げています。
1. 競技者や選手の健康を害するため
薬は病気の治療に使用されるもので、病気でもないのに薬物を使用するのは健康リスクが高くなる。薬は正しい量でその効果を発揮するが、競技力の向上という本来の目的ではない方法で使用する場合、過剰投与がされたり、長期間にわたっての乱用が起こったりする懸念がある。副作用や後遺症は深刻で、場合によっては致命的なものになる危険もある。
2. スポーツの公正さを損なうため
スポーツは一定のルールの中でその技能を競い合うもの。認められていない薬によって短期的に競技力を高めることはフェアプレイの精神に反する。ドーピングがスポーツ競技そのものの価値を損なわせ、ドーピングに頼ってでもスポーツによる金銭的な報酬を目的にするようになれば、スポーツの対する信頼性が無くなる。
3. 社会において悪影響があるため
ドーピングに使われる薬は、病院で処方される薬だけでなく、副作用などを無視して運動能力を高めることを追及すると、覚醒剤や麻薬、違法ドラックも含まれてくる。反社会的な薬を使用することは、スポーツ界にとどまらず、社会全体への悪影響が心配される。プロ選手が、違法な薬を使って違法な勝ち方で収入を得ていることは、社会的にも許容されない。
ドーピング検査は同性の立ち合いによる尿検査が基本
検査の方法は主に尿検査です。
検体である尿のすり替えを確実に防ぐために、「DC(ドーピング・コントロールの意味)ドクター」、「DC係官(DCO)」の立ち合いの下で尿が採取され、尿が本人から採取されたものかどうかを確認します。なお、採尿に立ち合うのは同性で、採取された尿は封印されて、検査室に運ばれるといいます。
ドーピング目的ではない、病気の治療で薬が使用している場合は、あらかじめ治療目的の薬物使用の適用措置申請書(TUE)を提出します。申請書の提出がない状態で、競技で認可されていない禁止物質が検出されると、ドーピング検査陽性となります。
市販薬や慢性疾患の治療薬にもドーピング検査で陽性となる成分を含むものがあるといいます。知らずにうっかり服用し、ドーピング陽性になってしまう可能性があることを忘れてはなりません。
「ドーピング検査で陽性が出てしまうと、選手としての活躍の場を失ったり、記録が無効とされたりします。そのときだけでなく過去の記録も疑われますので、選手としての信用も失うことになります」(清益さん)
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