冬を中心に流行する「RSウイルス感染症」患者が大幅増加
通常は冬を中心に流行する「RSウイルス感染症」の患者が大幅に増加しているようです。国立感染症研究所は15日、8月6日までの1週間の患者数が昨年同時期の約5倍となっていることが分かったと発表しました。
参照:
RSウイルス感染症は大人も感染しますが、特に注意が必要なのは新生児や乳児などの小さな子どもだといいます。一体、どのような病気なのでしょうか。医学博士の清益功浩さんがAll Aboutの『RSウイルス感染症の症状・治療・予防法』で以下のように解説しています。
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RSウイルスの感染経路・潜伏期間
RSウイルスのRSは「Respiratory Syncytial(=呼吸器の合胞体)」の略。ウイルスが感染すると、呼吸器の細胞が合わさって1つになるため、名づけられたといいます。原因となるウイルスは「パラミクソウイルス科ニューモウイルス属」で、麻疹ウイルスなどと同じ種類でメタニューモウイルスに似ているといい、ノドや気管支などの呼吸器に感染すると清益さんは説明しています。感染力は強いです。
- 感染経路……飛沫感染、手指を介した接触感染。最初に鼻に感染することが多い
- 潜伏期間……感染してから発症するまでの潜伏期間は2~8日。典型的には4~6日
- 感染期間……ウイルス排泄期間は7~21日と長いため、感染が広がりやすい
RSウイルス感染で起こる細気管支炎
1歳ぐらいまでの小さな子ども(赤ちゃん)、低出生体重児や心臓に病気を持っている子どもがRSウイルスに罹ると、細気管支炎を起こして重症化しやすいようです。さらに、肺に病気を持っている人も重症化するといい、注意が必要です。
細気管支炎は、肺に近い気道(細気管支)にRSウイルスが感染し、様々な症状を起こす病気。代表的な症状として清益さんは以下のものを挙げます。
- 水のような鼻汁
- 鼻づまり
- ひどい咳、むせるような咳
- 呼吸数が多くなる多呼吸や肋骨の下がへこむ陥没呼吸などの呼吸困難
- 呼吸をさぼる無呼吸
なお細気管支炎では38.5℃以上の発熱は少ないです。
学童・大人のRSウイルス感染は肺炎や喘息のリスク
小学生以上の学童や成人の場合、RSウイルスは鼻から感染し、風邪程度でおさまることが多いのですが、時に気管支炎を起こし、喘鳴を起こす気管支炎や肺炎を起こすこともあります。
また、気管支喘息の子どもは、RSウイルスに感染すると喘息発作が誘発されるといいます。
RSウイルス感染症の治療法
清益さんによると、RSウイルス感染症に特効薬はないのだといいます。ミルクの飲みが悪い場合は輸液をし、咳に対しては気管支を拡げる薬や痰を切りやすくする薬、炎症を抑えるステロイドが使われたりします。
呼吸状態が悪くなると、人工呼吸器をつけて、呼吸を助けてあげる必要があります。特に、早く生まれた低出生体重児や心臓に病気を持っている子ども、一部のダウン症の子どもの場合は重症化するので、予防が大切といいます。予防のためには、パリビズマブ(シナジス)という薬が使われます。この薬は非常に高価で、3kgの赤ちゃんで使うと1回約8万円弱になるといい、流行期の前に、1ヶ月毎に5回筋肉に注射すると清益さんは説明しています。
RSウイルス感染症の予防法
清益さんは予防法として以下のものを挙げています。
- 家族全員で手洗い
- 親子ともに、かぜをひいた人との接触を避ける
また、1歳以下の乳児にいかに感染させないようにするかが重要なポイントだとしています。RSウイルス流行期には、次のような場所や行動には注意が必要です。
- 受動喫煙の環境(タバコの煙は、子供の気道を刺激するため、咳症状が悪化し、喘鳴を起こす。また、感染後の症状悪化だけでなく、健康時にも気道の状態を悪くしてしまうため、感染するリスクも高くなるという)
- 人の出入りが多い場所
- 保育所の利用
- 乳幼児と兄姉(学童、幼稚園児)との接触
「感染しやすい乳幼児の寝室は他の風邪を引いている家族と別にした方がいいでしょう。というのも、大きな子ども、大人は風邪程度ですむため、RSウイルスが感染していても自覚症状が出ないことが多いためです」
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