キタキツネが市街地に?エキノコックスに注意を
キタキツネが北海道内の都市部の市街地に姿を見せ、住民を困惑させていると北海道新聞などが報じています。見た目がかわいらしく、北海道以外の住民にとっては珍しい存在のキタキツネですが、エキノコックスの感染の恐れもあるため、注意が必要です。
2017年5月に、動物園のテナガザルがエキノコックスで死亡したという報道もありました。医師の清益功浩さんによると、北海道では年間20人程度が発症しており、その感染の原因動物にはキツネが挙げられています。エキノコックスとはどのような病気なのでしょうか。All Aboutの『キツネ媒介?エキノコックス症の感染経路・症状・予防』の記事から読み解きます。
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エキノコックス症とは?
エキノコックス症とは、包虫症とも言い、エキノコックスという寄生虫によって起こる感染症です。
清益さんによると、エキノコックスの幼虫である包虫が人の身体に侵入し、肝臓、肺、腎臓、脳などの中で包虫が発育することで本来の臓器の機能が低下する感染症だといいます。
キツネだけでなくペットにも寄生する
エキノコックスの成虫は、キツネだけでなく、イヌやネコなどのペットにも寄生することがあるので注意が必要です。
体内にエキノコックスを持っているキツネやイヌであっても、触るだけでエキノコックスに感染するわけではなく、飛沫感染もしないようです。
「とはいえ、エキノコックスを持っているキツネやイヌの皮膚には、糞便などからの虫卵がついている可能性があります。予防法として後述しますが、やはり触った後には入念に手洗いをすることが大切です」
エキノコックス症の症状が出るまでに5年以上かかる場合も
エキノコックスは「単包性エキノコックス」と「多包性エキノコックス」に分類されます単包性エキノコックスは世界的に分布しており、多包性エキノコックスは北半球に分布するため日本では北海道に多く見られます(毎年数十人の発生)。
体内に入った虫卵は、幼虫である包虫になり、主に肝臓で発育し、増殖して、1つの塊(嚢胞)になっていきます。そのため、検査時に肝がんなどと間違われる可能性もあると清益さんは説明しています。
「肝臓だけでなく、肺で発育し増殖すると、結核や肺がんなどと間違われるケースもありますが、はっきりとした症状が出るまでに5~15年かかり、それまでは無症状です」
エキノコックスに感染したら…エキノコックス症の症状
エキノコックスは、寄生する臓器によって表れる症状が異なるようです。
<肝臓に寄生すると>
- 肝臓が大きくなり、腹痛、胆管炎、黄疸などが見られ、寄生虫の入った袋(嚢胞)が破裂して、腹部内に寄生虫がばらまかれる
- 血液検査で、AST、ALTなどの肝臓に含まれる酵素が上昇する肝機能障害が見られる
- 胆管にも影響が及ぶと黄疸、肝機能の低下により体の浮腫や腹水が溜まる
<肺に感染すると>
- 呼吸困難や咳症状が起こる
<脳に感染すると>
- 意識障害や痙攣が起こる
エキノコックス症の致死率は?治療法は外科手術が基本
現時点では、外科的に寄生虫を含む塊の切除が最適とされています。
「切除できない時には、5年で70%、10年で94%の死亡率となります。アルベンダゾールと呼ばれる駆虫薬を使用します。感染が判明した時点でしっかりと治療しないと、高確率で再発します」
エキノコックスの予防法―手洗いは念入りに
エキノコックスの予防法は、手や野菜などについた虫卵が口に入らないようにすることだといいます。エキノコックスの虫卵は、直径約0.03mmで、肉眼では見えないため、エキノコックスを含む、多くの寄生虫に感染しないためには下記のような対策を清益さんはすすめています。
- 野山などにから帰ったら、石鹸を使ってしっかりと手を洗う
- 衣服や靴についた泥をしっかりと落とす
- 沢や川などの生水は飲まない
- 山菜や野菜、果物などはよく洗って食べる。可能なら加熱する
- ペットのイヌを放し飼いにしない。野山などで放さない
- 野犬や野生のキツネに近づかない
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