過去最高の移籍金が動く…一体どんなスケールなのか?
ひとりの選手に290億円も払うなんて! と驚いた方も多いだろう。現地時間8月13日に行われたフランス・リーグアンで、パリ・サンジェルマン(以下パリSG)の一員としてデビューしたネイマールの移籍に動いた金額だ。
一般的にサッカー選手と所属クラブは、複数年契約を結ぶ。選手はその間のサラリーが保障され、クラブはその選手を引き抜かれる心配がなくなるため、複数年契約はどちらも利益を見出せる。
ただ、契約期間内でも「その選手が欲しい」と声を上げるクラブはある。その場合は、移籍金を支払うことになる。契約を解除してもらうための違約金、と言ってもいいだろう。
ネイマールがそれまで所属していたバルセロナ(スペイン)に対して、パリSGが支払った移籍金は2億2200万ユーロだった。1ユーロが130円なら288億8600万円(!)で、135円なら299億9700万円(!!)である。これまでは1億5千万ユーロが移籍金の最高額だったから、ネイマールとパリSGは歴代最高額を大きく跳ね上げたことになる。
ちなみに、2億2千万ユーロという金額は、バルセロナと楽天の間で結ばれた4年契約のユニフォームスポンサー料と同じだ。ネイマールの獲得による商業的な効果は、バルセロナという世界的ビッグクラブのユニフォームに4年にわたってロゴを入れる金額に等しい……ということか。
なんとJ1全18クラブの〇〇〇よりも高い
Jリーグと比較してみよう。
2016年度の各クラブの経営情報によると、J1全18クラブのチーム人件費の総額は283億4500万円だった。通過レートによって変動はあるものの、ネイマールの移籍金よりも少ない! つまり、2億2千万ユーロという金額は、J1リーグの全選手の給料を支払ってもおつりがくるスケールなのだ。
日本代表選手が移籍するといくらになる?
世界各国の選手を独自の視点で査定する『transfermarkt』で、日本代表選手の推定市場価格を調べてみる。
もっとも高額なのは香川真司で、1300万ユーロと算出されている。1ユーロ130円(以下、レートは同)なら16億9千万円だ。ただ、2012年には2200万ユーロ(28億6千万円)まで高騰したことがある。欧州での市場価値は年齢と密接に関係しており、23歳当時の香川は将来性も高く見込まれていた。
香川に次ぐのは岡崎慎司だ。31歳の日本代表には、700万ユーロの価値がついている。「30歳以上」の「ストライカー」に条件を絞ると、世界の37位にランクインするからなかなかのものだ。逆説すれば、経営規模があまり大きくないクラブが、移籍金を払ってまで獲得するのは難しい選手と言うこともできる。
日本代表のFW陣で、エース格となっている大迫勇也はどうか。ドイツ・ブンデスリーガの1FCケルンに在籍する27歳には、550万ユーロ(7億1500万円)の価値がつけられている。
今夏の移籍マーケットで、メキシコのパチューカへ加入した本田圭佑は?
『transfermarkt』は250万ユーロと推定する。30歳を越えた選手は、ほぼ例外なく市場価値が右肩下がりになっていく傾向にある。例外的なのはリオネル・メッシ(30歳)、クリスティアーノ・ロナウド(32歳)、ルイス・スアレス(30歳)で、メッシとロナウドは1億ユーロ(130億円)、スアレスは9000万ユーロ(117億円)となっている。『transfermarkt』によれば、ネイマールも1億ユーロだ。
眉をひそめるクラブ関係者がいるのも事実
パリSGがバルセロナに支払った移籍金について、ヨーロッパでは眉を歪めるクラブ関係者も少なくない。かの地には『ファイナンシャルフェアプレー』という規則があり、各クラブは収入と支出のバランスを取るように求められている。
選手の移籍がマネーゲームと化すことを阻止し、経営の健全化を推し進める狙いだが、大富豪や投資グループが収入を下支えすることで、抜け道を探し出すクラブもある。ネイマール獲得のためにパリSGがバルセロナに支払った移籍金も、クラブの筆頭株主であるカタール投資庁の子会社が用意したと見られている。
選手という「才能」はお金で買えるが、勝利もまたお金で買えるのか。パリSGとネイマールの今シーズンには、勝っても負けても批判がつきまとっていくかもしれない。