豊田真由子議員のパワハラ騒動
豊田真由子衆議院議員の秘書に対する暴言や暴行等のいわゆるパワハラが話題になりました。被害を受けたとされる秘書の1人が被害の様子を録音していたため、世間にはかなりのインパクトを与えたようです。
そこで、今回はパワハラとはどのようなもので、パワハラ被害を受けた場合にどのような対処法があるか考えてみます。
パワハラとは何か、法的にどうなるか
パワハラはパワーハラスメントの略で、「同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為」という定義が適切でしょうか。この定義は、厚生労働省「職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議」の「職場のパワーハラスメントの予防・解決に向けた提言」においてされたものです。
パワハラ行為があった場合は、通常、民法上の不法行為と評価されて、行為者は被害者に損害賠償責任を負います。業務執行の過程でされており、使用者がいればその使用者も使用者責任という損害賠償責任を負うことが多いです(他にも労働契約上の責任も負うのですが、実質はほぼ同じです)。例えば、ある会社の上司が仕事中に部下にパワハラに当たる発言をした場合、部下は、上司本人と勤務先の会社に対して損害賠償責任を追及できるということです。
パワハラ上司への対処法
パワハラ被害に遭った又は遭っている場合は、先ほど触れたように法的責任を追及するという対処法がありますが、他にも会社に一定の処置を求めることもあります。例えば、社内にハラスメント窓口があればそこで相談して一定の是正を求めるという具合です。
もっとも、上司がパワハラ行為を否定した場合、言った言わないの水掛け論になりがちです。それでも訴訟ではどのような事実があったか何らかの判断がされますが、証明する労力は被害者が負いますから大変です。
そこで、パワハラ行為を裏付ける証拠はないか、ということを考えることになります。すぐに思いつくのは証人ですが、証人がいても証言してくれるかどうかは別ですし、証言内容が時間が経って変わってしまうこともあります。そこで、他に証拠がないか考えるべきです。
日記・メール・SNSは証拠になるの?
被害者本人が被害内容を日々日記などに記録していることがあります。これも証拠になります。ただし、証拠として利用できるのと、証拠としてどれほどの価値があるかは別です。
もし、パワハラとは関係なく、また関係ないことも含めて日記をつけていれば、パワハラ被害を受け始めてから作成した日記と比べれば証拠価値は高いでしょう。結局、証拠価値があるかどうかはその都度個別に判断されます。
では、友人などにパワハラ被害について相談しているメールはどうでしょうか。これも日記と同様で、前後のメールのやり取りもふまえて証拠価値があるか判断されることになるでしょう。
SNSへの書き込みもこれらと同じです。最近は、裁判の証拠として提出されることも多くなりました。
録音は証拠になるの?
最近は、スマホ等のおかげで録音録画が簡単に行えるようになりましたので、録音媒体も証拠として利用されます。
上司とのやり取りを無断で録音してもいいの? という疑問を抱く方は結構多く、私もそのようなご相談をよく受けます。色々考えると様々な問題はあるものの、少なくともパワハラ上司との関係では問題になることはあまりないと思われます。民事裁判でも問題なく証拠として採用されることが多いです(事案によりますので、都度専門家とご相談することをお勧めします)。もちろん証拠としての価値は別ですが、日記やメールで触れたような問題はありません。つまり、作成される際に誰かの主観が入ることのない客観的な証拠だといえます。
証拠を集めてる場合ではない場合も。パワハラ問題は根深い…
私としては、日常的にパワハラ被害に遭っている方には録音をお勧めします。
ただし、パワハラ被害が極めて深刻な場合は録音している場合ではなく、早急に職場から離脱しないといけないこともあります。被害を受けない最も効果的な対処法はパワハラ上司と会わないことだからです。配置転換を会社に求めることになるでしょうが、そのような対応が速やかにされないこともありますし、そもそも不可能な職場もあります(事業所が一つしかなければ不可能です)。じゃあ退職するかということになりますが、生活のために退職できない方はたくさんいます。それゆえにパワハラの問題は深刻だといえます。