本田圭佑はなぜ新天地にメキシコの『CFパチューカ』を選んだのか?

イタリア1部リーグの強豪ACミランとの契約が6月末で切れた本田圭佑の新たな所属先が、メキシコ1部リーグの『CFパチューカ』に決まった。31歳の日本代表が、ヨーロッパのクラブではなくメキシコのクラブへ移籍した理由とは?

本田が移籍するCFパチューカとは?

本田圭佑
本田圭佑がメキシコのクラブに新天地を求めた理由とは?(写真:長田洋平/アフロスポーツ)

本田圭佑の新たな所属先が、メキシコ1部リーグの『CFパチューカ』に決まった。
 

首都メキシコシティの北東に位置するパチューカ市に本拠地を置くクラブで、1901年創立は国内最古である。ただ単に歴史が長いだけでなく、クラブのオフィスには数多くのトロフィーが並ぶ。
 

それがまた、錆びついたトロフィーばかりではないのだ。メキシコ国内リーグはもちろん、北中米カリブ海地区のチャンピオンズリーグで歴代3位タイとなる5度の優勝を誇る。さらに、オープン参加となる南米のクラブチームが集う大会でも、無視できない成績を収めているのだ。今年12月にアラブ首長国連邦(UAE)で開催されるFIFA(国際サッカー連盟)クラブW杯に、北中米カリブ海地区代表として出場することも決まっている。メキシコを代表するクラブ、それがパチューカなのだ。
 

メキシコリーグにビッグネームはいない

ならば、メキシコリーグのレベルはどうだろう。
 

メキシコ国内のクラブに、世界的ビッグネームは少ない。メキシコ代表でキャプテンを務めるアンドレス・クアドラードはスペイン、得点源のハビエル・エルナンデスはドイツ、守護神のギジェルモ・オチョアはベルギーのクラブでプレーしている。ブラジル、アルゼンチン、ウルグアイ、パラグアイなどから数多くの選手が流入しているが、代表クラスは少数にとどまる。
 

各クラブは堅調な経営をしており、選手のサラリーは世界的に見ても優良とされる一方で、ヨーロッパ各国のリーグに比べると刺激に乏しい印象は否めない。“都落ち”というわけではないものの、穏やかな環境を選んだ印象はある。
 

本田の真意はどこに?

ならばなぜ、本田はメキシコを新天地に選んだのか。
 

欧州進出の第一歩にオランダ・エールディビジのVVVフェンロを選び、フェンロが2部に降格すると本田は残留を表明した。1部復帰の立役者として表舞台に復帰すると、翌シーズンにはロシア・プレミアリーグの名門CSKAモスクワへ移籍した。
 

自分の価値に見合ったサラリーを提示されたクラブと契約を結ぶのは、プロフェッショナルとしての実利的な側面である。それにしても、本田の選択には“未踏”というキーワードが隠されている気がしてならない。
 

メキシコでプレーした日本人選手は過去にもいる。パチューカに在籍する日本人選手も、本田が初めてではない。ただ、イタリアの名門ACミランを前所属クラブとし、現役の日本代表として加入するのは本田が初めてだ。つまり彼は、メキシコリーグでいまだ固まっているとは言えない日本人選手のイメージを形作るプレーヤーとして、かの地のリーグへ飛び込んでいくことになる。
 

メキシコと日本には「共通点」がある?

本田がメキシコ行きを決めた理由は、もうひとつあるかもしれない。

パチューカの街並み
パチューカの街並み

メキシコ人と日本人は身体のサイズが似ている。ボール扱いに長けたところも共通点だ。
 

それでいて、メキシコは94年から6大会連続でW杯のベスト16入りを果たしている。いつの時代もメキシコは、“日本のお手本”となる存在と見なされてきた。2014年のブラジルW杯後にメキシコ人のハビエル・アギーレが日本代表監督に指名されたのも、両国の親和性を代表強化に生かしたいからだった。
 

メキシコリーグでプレーすることで同国のサッカーの本質に触れ、日本サッカーとの違いを認識する。国際的な競技力という観点から、日本代表の特性を再確認する。そこまで考えたうえで、本田はメキシコ行きを選んだのではないだろうか。
 

くしくもアギーレが監督を務めたこともあるCFパチューカで、本田は2018年のロシアW杯へ再スタートを切ることになった。昨年までのJリーグと同じ2ステージ制の17-18シーズンは、7月21日に開幕する。チーム内のポジション争いはゼロからのスタートとなるが、それこそは31歳になった彼が何よりも望んでいたものかもしれない。
 

逆境こそが、この男のエネルギーである。

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