欧州のクラブが来日するワケ
ヨーロッパ屈指の強豪クラブが来日した。ドイツ・ブンデスリーガのボルシア・ドルトムントが、7月15日に浦和レッズと対戦するのだ。
ヨーロッパのトップクラブの多くは、シーズン開幕前のこの時期に海外ツアーを開催する。トレーニングとプロモーションを兼ねたものだ。アジアにおいては後者の意味合いが強い。浦和戦の3日後、ドルトムントは広州(中国)でACミラン(イタリア)と顔を合わせることになっている。国際的な知名度を高めるためにも、各クラブはマーケットの掘り起こしを大切にしているのだ。
8月19日のシーズン開幕戦に向けて、ドルトムントは7月7日に始動したばかりである。コンディションは調整段階だ。時差ボケに悩まされる選手がいるだろうし、日本の蒸し暑さには誰もが顔をしかめるに違いない。
だからといって、観光気分でやってくるわけではない。2年前の7月に来日した際には、川崎フロンターレを6対0で粉砕しているのだ。各国代表クラスをズラリと揃える布陣は、コンディションのマイナスを補って余りあると言っていい。
ドルトムントで注目すべき選手は4人!
この試合はフジテレビ系列で生中継される。サッカーにそれほど興味のない方でも、15分ほど試合を観ていれば気になる選手が出てくるはずだ。ドルトムントの選手たちは、それぐらいキャラが立っている。
■ピエール=エメニク・オバメヤン
もっとも注目すべき選手は、ピエール=エメニク・オバメヤンだ。アフリカのガボン代表のストライカーで、16―17シーズンのブンデスリーガで得点王に輝いた。爆発的なスピードと高精度のシュートで、チャンスを確実に得点へ結びつけている。ドルトムントより予算規模の大きいヨーロッパのメガ(巨大)クラブが、獲得に関心を寄せる選手である。
■ウスマン・デンベレ
前線ではウスマン・デンベレからも眼が離せない。この褐色のフランス代表フォワードは、しなやかなドリブルで相手守備陣を切り裂く。オバメヤン同様に20歳のデンベレも、メガクラブが獲得リストの上位にあげる選手だ。
■クリスティアン・プリシッチ
中盤ではクリスティアン・プリシッチのプレーを追いかけたい。17歳でブンデスリーガにデビューし、9月にようやく19歳になる新進気鋭のミッドフィールダーである。
母国アメリカ代表では、エースナンバーの「10」を託されてロシアW杯予選に挑んでいる。これから様々な舞台で、プリシッチの名前を聞くことになるだろう。新世代のスター候補生のひとりである。
■アンドレ・シュールレ
ドイツ人のアタッカーも紹介しておこう。アンドレ・シュールレだ。彫の深い顔立ちが印象的な26歳は、14年のブラジルW杯で優勝したドイツ代表のひとりだ。
ゴールを決めることもアシストをすることもできるオールラウンダーだが、ドルトムントでは途中出場も少なくない。彼がポジションを確保できていないことから、ドルトムントの選手層の厚さがうかがえる。
香川にとっての浦和戦とは?
香川の立場はどうだろう。
ドルトムントでのプレーは通算6シーズン目を迎え、スタッフも、チームメイトも、メディアも、サポーターも、この日本人ミッドフィールダーを認めている。今シーズンから采配をふるうペーター・ボス新監督も、チームに欠かせない戦力として期待しているはずだ。
ただ、定位置は保証されていない。昨シーズンのリーグ戦では、わずか1ゴールに終わっている。周囲から寄せられる信頼に、応えたとは言い難い。
ドルトムントはリーグ戦とカップ戦に加え、欧州ナンバー1クラブを決めるチャンピオンズリーグにも出場する。代表選手としてW杯予選を戦う選手も多い。ボス監督は選手を使い分けながら、タイトルを狙っていくことになる。
それでも、よほどのことがない限りスタメンから外れない選手はいる。新シーズンの香川は、ボス監督にとって絶対に必要な選手となるのか。それとも、使い分けられる選手のひとりに止まるのか。自らの立場を決めるアピールが、浦和戦からスタートするのだ。
守備再建のきっかけにしたい浦和
浦和にも触れておこう。
18節を終えたJ1リーグで、浦和は9勝2分7敗の8位となっている。43得点はリーグトップだが、30失点はワースト5である。守備の立て直しは急務だ。
ミハイロ・ペトロヴィッチ監督にすれば、ドルトムント戦を浮上へのきっかけにしたいところだろう。高速カウンターを得意とする相手の攻撃をしのぐことができれば、守備に対する自信を回復することができるからだ。
ドルトムントが力の違いを見せつけるのか。ホームで戦う浦和が、Jリーグのレベルアップを世界に示すのか。注目の一戦は7月15日の19時10分キックオフ予定だ。