車いすの男性が自力でタラップをはい上ったと大きく報道
LCC(格安航空会社)バニラエアの奄美大島-大阪(関西)線で、車いすの男性が飛行機に搭乗する際、自力で階段式タラップを上っていたことや航空会社や空港側の対応が大きく報道され、議論となっている。
[参考]
障害男性、タラップはい上がる バニラ・エア、奄美空港で(共同通信)
バニラエアはこの件について謝罪している。また、奄美空港で未設置だった階段昇降機の導入を、7月末の予定から6月29日からに前倒しするなど対応した。
バニラエアでは事前連絡とフォーム提出を以前から義務付け
バニラエアでは、車いすを使用する乗客の利用は禁止していない。ただ、公式ホームページにある「お手伝いが必要なお客様」のページで、車いすで利用することで心配がある人に対し、搭乗日の5営業日前までに予約センターに連絡することを明記している。また、歩行状況や車いすの仕様、付き添いの有無などを「車椅子 仕様確認フォーム」に記入してFAXで送付するようになっている。
これは、車いすで利用する際だけでなく、目や耳、言葉が不自由な人、身体障害者補助犬を連れている人に加え、乳幼児連れや妊娠中、病気や怪我をしている人に対しても、事前に予約センターへの連絡を促している。
他の国内LCCでも公式サイトに明記している
他の国内LCCでの対応はどうなっているのか。
ピーチ・アビエーションは「特別なサポート」、ジェットスター・ジャパンは「特別介助が必要なお客様」、Spring Japan(春秋航空日本)は「お手伝いをご希望のお客様」というページが、それぞれの公式ホームページに掲載されている。
■ ピーチ・アビエーション
出発予定日の5営業日前までに「車椅子確認フォーム」のFAX送付が必要で、その後にコールセンターから連絡があるという流れ。
■ ジェットスター・ジャパン
「ご自身の車椅子をご利用になる場合でも、搭乗の際の階段の昇り降りなどに介助が必要な場合は、必ずご予約の際にお知らせください」とあり、介助する人数制限などもあるので注意が必要だ。
■ Spring Japan(春秋航空日本)
出発予定日の5営業日前までにコールセンターに連絡、各種診断書や仕様確認フォームをFAX送付。
なお、自身の車いすは受託手荷物として預かり、空港用の車椅子を利用するのは各社共通。また、国際線の利用だと上記と異なる場合もある。
ANAでは専用の相談デスク、搭乗までの動画まで公開
大手航空会社での対応はどうかというと、ANAの場合、公式サイトに「お手伝いが必要なお客様」のページがあり、「ANAおからだの不自由な方の相談デスク」も設置している。年中無休・フリーダイヤルで利用できる。(フリーダイヤルは携帯電話不可)
また、NPO法人と連携して「車いすユーザーのANAで気軽に快適 その旅」という動画も作成し、空港到着からチェックイン、空港用車いす乗り換え、機内や到着時に降機する様子までわかりやすく紹介している。機内での過ごし方などを予習できるオリジナルパンフレットも用意する。
ただ、ANAでも、1人で歩行や階段の昇り降りができるかなど「歩行状況チェックシート」に記入して連絡する必要がある。空港用車いすの貸出も事前申込を受け付けている。
一方、JALでも公式サイトに「JALプライオリティ・ゲストサービス」のページがあり、搭乗に関する案内や相談などで専用回線を設けるなど、対応方法はANAとほぼ同様だ。JALでは国内線で身体障がい者向けの割引運賃も設定している。
航空会社で対応異なることも。地方空港では特に注意が必要
まず、大手航空会社やLCCを問わず、飛行機に搭乗する際、以下に該当する場合は、早めに利用予定の航空会社に連絡、または相談して欲しい。
- 歩行が不自由
- 目、耳や言葉が不自由
- 上体固定用補助具が必要
- 身体障害者補助犬がいる
- 病気や怪我をしている
- 妊娠中
- 赤ちゃんや幼児を連れている
- 子どもが1人で搭乗する
- 高齢者
- ペットを連れている、など
航空会社によって、空港や機内などでの対応が異なることもあるので注意が必要だ。
さらに、大きな空港では多く設置されているPBB(パーセンジャーボーディングブリッジ、搭乗橋)が、地方の小さな空港では設置数が少ない、またはないこともある。奄美空港にはPBBがあり、筆者が昨年訪れた際は行き帰りともPBBだったものの、数が少ないのとバニラエアの便が増えたのもあり、PBBが利用できないケースも十分に起こり得る。
その際、飛行機への乗り降りは階段式タラップとなり、階段昇降機が必ず常備されているとも限らない。これらの有無についても、バニラエアに限らず、旅行が決まった早い段階で利用予定の航空会社に問い合わせるのを強くおすすめする。
今回、車いすで飛行機を利用する際のさまざまな問題点が浮き彫りになった。今後再び問題とならないよう、利用する際に公式サイトを改めて確認し、早めにコールセンターなどに相談するなど、正しい情報を把握して利用するのはもちろん、航空会社や空港などもよりわかりやすく利用方法を紹介する必要がある。