タカタの民事再生手続開始の申し立てで自動車業界に影響はあるか?

6月26日、東京地裁へ民事再生法の適用を申請したタカタ。エアバッグの不具合や異常破裂により米国など海外では死者が出ていて、日本国内でもけが人が出るなどして1兆円を超える負債(リコール費用)を抱えているという。今後の自動車業界への影響はどれくらいあるのだろうか。

1兆円を超える負債を抱えたタカタが倒産……業界に影響は?

6月26日、東京地裁へ民事再生法の適用を申請したタカタ。エアバッグの不具合や異常破裂により米国など海外では死者が出ていて、日本国内でもけが人が出るなどして1兆円を超える負債(リコール費用)を抱えているという。
 

今回の民事再生手続開始の申し立てで、裁判所の管理の下で再生を目指すが、中国の寧波均勝電子グループ傘下であるアメリカの自動車部品会社キー・セイフティー・システムズ(KSS)に、エアバッグやシートベルト、チャイルドシートといった健全な資産と事業を譲渡することで基本合意している。今後の自動車業界への影響はどれくらいあるのだろうか。
 

今後の自動車メーカーへの影響は軽微?

6月16日、「タカタの民事再生手続き開始の申立てに伴う当社への影響について」というタイトルで、日本の自動車メーカーで最初にプレスリリースを出したSUBARU。
 

SUBARUは、「タカタからシートベルトなどの部品供給を受けていますが、タカタは事業を継続しながら再生手続きを進めるため、部品供給は継続される見込みであり、当社グループの生産などへ与える影響は限定的であると考えております」と表明している。
 

マツダは、シートベルトに関しては、SUBARUと同じような声明を出しているが、「タカタ製エアバッグインフレーターのリコール費用について、マツダとタカタ社との責任割合は、現時点、一部の費用を除いてタカタ社と合意には至っておりません。タカタ社の責任割合については、今後の法的手続の中で引き続き主張していく予定です。しかしながら、タカタ社グループによる上記法的手続開始申立てにより、今後の求償の実現性については不透明な状況にあり、今後の法的手続の中で、取立不能または取立遅延が発生する可能性があります(中略)」と表明。

なお、トヨタやホンダ、日産、三菱自動車も多くが取り立て不能になる可能性が高いとしている。
 

ただし、国内6社の自動車メーカーは、2017年3月までに費用の多くを引き当て済みで、業績面への影響は大きくない、というスタンスを取っている。
 

供給面ではタカタ製から他社製に切り替え済み

最も採用が多かったホンダなどはすでにエアバッグのインフレーター(エアバッグを膨らませるガス発生装置)は他社製(世界最大手のスウェーデンのオートリブやダイセルなど)に切り替えていて、今後新規のエアバッグはタカタ製ではなく他社製のものになる。
 

しかし、SUBARUからのコメントからも分かるように、タカタはエアバッグだけでなく、シートベルトでも大手であり、シートベルトの供給はタカタ製のものでも品質に問題ないという見通しのようだ。
 

健全な事業はKSSに1750億円で売却

問題のエアバッグ(インフレーター)は旧会社が引き続き事業を進め、冒頭で紹介したように、タカタのほかの健全な事業、たとえばエアバッグ(組み立て)やシートベルト、チャイルドシートといった事業は、アメリカの自動車部品会社キー・セイフティー・システムズ(KSS)に、1750億円で売却。現時点でKSSは日本国内の開発・生産を維持するとしている。
 

それでも、経済産業省は、タカタの民事再生法の適用申請により影響を受ける中小企業への対策を行うと表明。相談窓口や「セーフティネット保証1号の発動」、政府系金融機関による対応が用意されるという。

参照:タカタ株式会社の民事再生法の適用申請により影響を受ける中小企業・小規模事業者対策を行います(経済産業省)
 

アメリカなどで死者16人を出したほか、日本も含めて多くのけが人を出したという今回のエアバッグのリコール問題。同族経営を原因として、対応が後手に回ったことにより、製造業では戦後最大の大型倒産になってしまった。
 

【関連リンク】

問題把握から約10年…タカタの倒産が日本企業につきつけた課題とは

エアバッグ問題のタカタが民事再生法を申請…「民事再生」とは?

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