夏に流行する「プール熱」、前週に比べても増加
夏に流行する「プール熱」の患者数が急増しています。
国立感染症研究所が6日に発表したデータによると、5月22~28日の1週間に、患者数は1医療機関あたり0.91人となっており、データが公開されている2007年以降最多となっています。また、前週の0.65人から比較しても急増していることが分かります。
プール熱とはどのような病気なのでしょうか。またどのように予防すればよいのでしょうか。それに関して、医師の清益功浩氏がAll Aboutの『プール熱とは?咽頭結膜熱の原因・症状・治療・予防法』で解説をしています。
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プール熱とは?
夏に流行する「プール熱」ですが、正式名は「咽頭結膜熱(いんとうけつまくねつ)」と言います。
文字通り、プールで感染することが多いため、一般的に「プール熱」と言われていますが、プール熱はプールだけではなく、いつでもどこでも感染する可能性があると清益氏は説明しています。よって、「プールに入っていないから、プール熱になるはずがない」という認識は間違いですので、注意が必要です。なお、プール熱は冬に流行することもありますが、主に夏に多い病気です。
プール熱の原因・感染経路・潜伏期間
■プール熱の原因
清益氏によると、プール熱はアデノウイルスというウイルスが原因で起こるといいます。
■プール熱の感染経路
感染経路は、
- 唾液などを介してうつる飛沫感染
- 密接に近くにいることでうつる接触感染
があるといいます。
「感染力はかなり強いので、家庭生活を共にしている兄弟姉妹間でうつることも多いです。眼やに(眼脂)などにも感染力があり、ウイルスはノドや目から体内に侵入します」(清益氏)
■プール熱の潜伏期間
感染から発症するまでの潜伏期間は、5~7日間と言われています。
なお、アデノウイルスには多くのタイプがあるため、1つのアデノウイルスに感染したらその後感染しないということはなく、何回か感染することがあります。
■主に感染するのは子ども?大人は感染しない?
感染は、幼児から学童までに多く見られますが、大人への感染も例外ではありません。
「大人への感染は、主に子どもからが多いようですが、子どものように集団で大人に流行することは少ないです。そもそも大人は何度かかかっていることが多いので、子どもに比べてかかりにくいと考えられます」
プール熱の主な症状……発熱・結膜炎・咽頭炎
主な症状は以下の通りです。
■発熱
40度前後の高熱で5日前後続くが、治ると一気に下がる
■結膜炎
- 結膜充血(眼の白みの部分が充血する)
- 目の痛み、かゆみ
- 涙や眼やに(眼脂)が多くなる
■咽頭炎
- ノドの痛み「咽頭痛」
- ノドの腫れや赤くなる「咽頭発赤」
この他、全身倦怠感、頭痛、食欲不振なども見られるといいます。また、時に肺炎を起こすことがあるので、注意が必要といいます。
プール熱の検査法・診断法
まず、アデノウイルスへの感染を調べる必要があります。アデノウイルスの確認は、迅速キットか血液検査によって行われます。
これらの検査でアデノウイルスへの感染がわかり、さらに高熱、ノドの赤み、結膜充血などの症状がある場合、プール熱と診断されます。
プール熱の治療法……処方される治療薬と家庭での注意点
清益氏によると、アデノウイルスに対する特効薬はないといいます。病院で処方される治療薬と自宅で休養する際の注意事項は以下の通り。
■病院で処方される治療薬
- 高熱でツライ時→解熱薬が処方される(※時間がたつと再び発熱する)
- ノドの痛み→うがいや鎮痛薬が処方される
- 眼やに(眼脂)や眼球結膜充血→抗生剤やステロイドの点眼薬が処方される
- 眼のかゆみの強い時→抗ヒスタミン薬やステロイドの点眼薬が処方される
■自宅で気をつけること
- 安静と十分な睡眠で免疫力が落ちないようにする
- 水分補給を行う
「特に、脱水を防ぐための水分補給は大切。ノドの痛みがあるので、ノドごしのよい飲料で、できれば電解質を含む飲料がお勧めです。下痢などの症状がない場合は、ノドが痛くて飲みにくいことがあるので、ノドごしのいい少し冷たい飲料の方がいいでしょう」
プール熱は予防が大切! 手洗い・うがい、消毒を
プール薬には特効薬がないため、予防が大事です。原因であるアデノウイルスは感染力が強く、手による接触感染やツバなどにより飛沫感染するため、第一に感染者との接触を避けることが大切だといいます。以下のような予防を心掛けましょう。
- 身の周りの消毒が大切(子どもの場合は、おもちゃなども消毒を)
- 手洗い、手指消毒(アルコールや石鹸で指の間までしっかりと洗浄消毒)
- ノドへの感染を防ぐため、うがいも忘れずに
- プールに入る際は、前後のシャワー、プールの後の目洗いやうがいを徹底する
- タオルや寝具などの共用は避ける
プール熱では出席停止になる?登校の目安は?
プール熱は学校保健法で第二種伝染病に指定されているため、感染がわかった場合は「出席停止」になります。
「発熱や眼球結膜の充血、ノドの痛みなどの主要症状が無くなってから2日間経過すると、学校などは登校可能です。主に、診療現場では解熱して2日後に出席可能とされています」
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