重症熱性血小板減少症候群(SFTS)の患者が相次ぐ
長崎県佐世保市は10日、マダニが媒介する感染症、重症熱性血小板減少症候群(SFTS)の患者が確認されたとして注意を呼び掛けている。共同通信によると、患者は70代の女性で4月に入院、今月に入って死亡したという(参照:マダニ感染、70代女性死亡 長崎・佐世保/共同通信)。
2日には、鹿児島県もSFTSに県内の90代女性が感染し、1日に死亡したと発表している(参照:マダニ感染、90代女性死亡 鹿児島/共同通信)。
重症熱性血小板減少症候群(SFTS)とはどのような病気なのか、また、マダニから身を守るためにどのような対策をするべきなのか。医学博士の清益功浩氏がAll Aboutの『ダニ感染症(SFTS)の原因・症状・治療』で以下のように解説している。
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重症熱性血小板減少症候群とは
重症熱性血小板減少症候群は「SFTS(severe fever with thrombocytopenia syndrome)」と呼ばれる新種のウイルス、ブニヤウイルス科フレボウイルス属に分類されたSFTSウイルスによって起こるという。
中国で初めて報告されたダニを介して感染する感染症で、原因のダニは、マダニ、オウシマダニと言われ、家にいるチリダニとは異なるという。
マダニは日本中に分布し、春から秋に活動が活発になるというので、注意したい。
重症熱性血小板減少症候群の潜伏期間・症状
SFTSウイルスに感染すると、6日から2週間の潜伏期間(感染から発症までの期間)を経て、発症するという。病名通り、発熱と血を止めるために必要な血液の成分である血小板が減少し、出血しやすくなると清益氏は説明する。SFTSの死亡率は約10%と高く危険なウイルスだとみなされている。
なお、発症すると以下のような症状が出るという。
- 発熱
- 食欲低下、吐き気、嘔吐、下痢、腹痛などの消化器症状
- 頭痛、筋肉痛
- 意識障害、けいれん、こん睡などの神経症状
- リンパ節腫脹
- 咳、咽頭痛の呼吸器症状
- 紫斑、下血などの出血症状
重症熱性血小板減少症候群の治療法と予防法
SFTSは新しい病気なので、特効薬もワクチンもなく、症状に応じた対処療法になるという。このため予防することを最優先としたい。
重症熱性血小板減少症候群(SFTS)を予防するためには、SFTSウイルスを持ったマダニに刺されない(かまれない)ようにすることが大切と清益氏は説明しており、対策として以下のポイントを挙げている。
- 不要な農作業や山林作業を避ける
- 長袖、長ズボン、手袋などを着用する
- 肌の露出部分には虫除けスプレーを使用する
- 草むらや地面に直接座らない。衣類を地面に置かない
- 野山、草むらに入った後は、すぐに入浴して新しい服に着替える
「マダニに刺されてしまった場合、そのことを医師に伝えてください。ダニに刺されて起こる病気は、今回の重症熱性血小板減少症候群だけでなく、日本紅斑熱、ワイル病、ライム病など、さまざまです。ダニに刺されて何らかの症状が出た場合、しっかり検査していく必要があります」(清益氏)
【関連リンク】
・ダニ感染症(SFTS)の原因・症状・治療