2年前に開業した「北陸新幹線」は完成していない
2015年3月14日、それまで通称「長野新幹線」と呼ばれていた新幹線ルートが長野から金沢まで延伸され、世の中では「北陸新幹線」という言葉が一般化した。しかし、北陸新幹線は、周知のようにこれで完成したわけではない。さらに、福井、敦賀と在来線の北陸本線に並行して南下し、敦賀からは京都、大阪まで延びたところで全線開通となる壮大なルートなのである。
このうち、敦賀までのルートは確定していて、工事もたけなわ。2023年春の開業を目指している。問題は、その先の区間であって、いくつもの案が出され、政治的な駆け引きもあってなかなか確定しなかった。
敦賀以南のルート、決定までの経緯
敦賀~京都に関しては、米原へ向かい東海道新幹線に接続して京都、新大阪へ向かう案があった。建設費は一番安く済むものの、東海道新幹線に乗り入れるのは2つの新幹線の運行システムが異なるため技術的に難しいとか、東海道新幹線の列車ダイヤが過密すぎて乗り入れる余裕がないといったデメリットがあった。JR東海とJR西日本の調整の問題もあり、名古屋方面からのアクセスが便利というメリットがあるものの見送られた。
湖西線に沿って走るルート、小浜を経て京都へ至るルート、小浜・舞鶴経由で京都に向かうルートなども提案されたが、結局は、小浜経由で京都に向かうルートが採択された。
京都から新大阪までの経路は、箕面あたりを通る北回りとJR片町線沿線の「けいはんな学研都市」を経由する南回りルートが提案された。但し、奈良県内を経由しても奈良県にはメリットがほとんどないため財政支援の面で反対され、結局、京都府と大阪府のみを通りJR片町線の松井山手駅付近に新幹線の駅を造るということで南回り案が採用された。
すぐに全区間で着工ではない…今後の課題は?
こうして、北陸新幹線のすべてのルートは確定したけれど、財源の問題もあって、すぐに全区間で着工というわけにはいかない。
2023年開業予定で工事が進んでいる金沢~敦賀のうち、金沢~福井は、前倒しで2020年にも開業してほしいとの強い要望が地元にはある。敦賀以西に関しては、着工に至っていないので、2040年頃になるのでは、という気の遠くなるような見通しだ。いずれにせよ、大阪までの全線開業に至らないうちは福井あるいは敦賀での新幹線と在来線特急との乗り継ぎが必須となり、大阪と北陸を結ぶ特急列車の直通運転はなくなる。
これまで、「雷鳥」「サンダーバード」といった特急列車一本でつながっていた関西圏と北陸は、かなりの長期間不便を強いられることになろう。その対策として、新幹線の線路幅(1435mm)と在来線の線路幅(1067mm)を変幻自在に直通できるフリーゲージトレインの投入が考えられるが、技術的に困難を極め、営業運転の目途が立っていない状況である。その代案として、九州新幹線が全通するまでの新八代駅のように、同じホームでの新幹線と在来線との乗り換えのような方法が考えられるが、巨額の投資となることは避けられない。頭の痛い話である。
北陸新幹線全通は、地元のためだけではなく、東海道新幹線が大災害による長期間の不通といった不測の事態においてバイパス的な役割を果たすことも期待されている。国にとっての重要路線のひとつとなるだけに、少しでも早い全線開業を望みたいものである。