アウェイUAE戦のスタメンは「まさか」だった

UAEスタメン
ロシアW杯アジア最終予選第6戦に臨んだイレブン。勝利の立役者は久保裕也(前列左から2人目)、今野泰幸(後列右端)と川島永嗣(後列右から2人目)だ(写真:アフロ)

予想外の選手の決定的な活躍で、日本が貴重な勝ち点3をつかんだ。
 

現地時間3月23日夜にキックオフしたUAE(アラブ首長国連邦)とのロシアW杯アジア最終予選第6戦で、日本は2対0で勝利した。勝利の立役者は3人いる。23歳の久保裕也と、ともに34歳の今野泰幸と川島永嗣だ。
 

初得点の久保「冷静に落ち着いて蹴れた」

今年1月にスイスのクラブからベルギーのヘントへ移籍した久保は、新天地でコンスタントに得点をあげていた。このため、ACミランで出場機会のない本田圭佑を押しのけて、昨年11月のサウジアラビア戦に続いてのスタメン出場となった。
 

サッカー日本代表のヴァイッド・ハリルホジッチ監督は、タテに速いサッカーを第一とする。右サイドアタッカーの久保には、DFの背後を狙うことで攻撃にスピード感をもたらす動きが求められていた。
 

果たして、前半14分に狙いどおりのシーンが訪れる。右サイドバックの酒井宏樹のパスに反応し、右サイドからスペースへ抜け出す。GKと1対1になる。シュートコースは限られていたものの、「冷静に落ち着いて蹴れた」という言葉どおりに、右ポストとGKの間の狭い隙間を右足で打ち破った。日本代表として3試合目で、自身初得点をあげたのだった。
 

川島、今野…ふたりのベテランが奮闘

守備では川島が奮闘する。所属するメス(フランス)ではポジションを確保できていないが、ハリルホジッチ監督は「日本代表への意欲はあり、(2軍戦に相当する)リザーブチームではプレーしている」ことを根拠に彼を招集した。
 

そして、日本代表で昨年5月以来の出場となったベテランGKは、1対0とリードした前半20分に危機的なシュートを阻止する。ハリルホジッチ監督がUAE戦のキーワードにあげた「経験」を強みに、W杯最終予選でチーム2度目の無失点試合へ導いた。
 

今野はこの試合のMVPである。持ち味とする運動量とボール際の強さをフル稼働し、相手のエース格の選手を試合の流れから消した。
 

攻撃でも決定的な仕事をする。後半開始直後の51分、久保のラストパスを受けて2点目を蹴り込んだのだ。「彼はほとんど完ぺきな仕事をした」と指揮官が称賛したように、攻守両面への貢献が求められる中盤の役割をスキなくこなした。
 

ハリル「タイに勝たないとUAE撃破の価値はない」

チームは試合後にUAE国内を移動し、24日夕方には帰国する予定だ。当日夜からトレーニングを再開し、28日のタイ戦(19時35分キックオフ/埼玉スタジアム2002)に備える。
 

「タイに勝たないとUAEに勝った価値がなくなる」とハリルホジッチ監督が話しように、最終予選はまだ4試合残っている。ロシアW杯にストレートイン(自動出場)できるのはグループ内6か国のうち上位2か国で、日本はサウジアラビアと並んで勝点13で2位につけている。とはいえ、3位のオーストラリアとは勝点3差、4位のUAEとも4差だ。一戦必勝のトーナメントと同じメンタリティで臨む必要性は、今後も変わらない。
 

もっとも、チームが厚みを増しているのは間違いない。

UAE戦をケガで欠場したキャプテンの長谷部誠だけでなく、後半途中から出場した本田、岡崎慎司、出場機会がなかった清武弘嗣ら、これまで必要不可欠と思われてきた選手に頼ることなく勝利をつかんだのは、タイ戦を含めた残り4試合への推進力となる。久保と今野が象徴するように、クラブで成果をあげている選手がスタメンに名を連ねることで、「正しい競争」が持ち込まれることもプラス材料だ。
 

”7つの肺を持つ男”は今後も起用されるのか?

タイ戦で注目されるのは、今野を引き続き起用するのかだろう。本人は「今後のことは考えられない。ハリル監督のサッカーもまだできていないので」と話すが、10年と14年のW杯に出場したこの経験者は、絶妙なバランス感覚でチームを下支えしている。
 

UAE戦の前半、今野が中盤でボールを持った瞬間に久保が前線で動き出した。だが、今野は久保を狙ったパスを出さなかった。ベンチのハリルホジッチ監督は「コンノッ!」と怒鳴りつけたが、ベテランはその後もプレーの判断基準を変えなかった。
 

「タテに早い攻撃だけでは難しいので。ボールを落ち着かせるところも大事だと、(香川)真司とも話していた」
 

監督が意図する戦いを念頭に置きつつも、臨機応変に対応するのは許容範囲内だ。むしろそれぐらいのほうが、バランスとしてはちょうどいい。
 

今野はプレーで意思表示するタイプだ。チームメイトを鼓舞するような、分かりやすいリーダーシップを見せることはない。それでも、「肺が7ある」ぐらいの運動量を誇る34歳が、このチームの進化を手助けできることは間違いない。
 

停滞気味だった日本代表に、嬉しい悩みが増えている。