改正道交法施行で認知症チェック強化…家族が免許返納を促すコツは?

改正道路交通法が施行され、75歳以上の運転者に3年ごとの免許更新時に課されていた認知機能検査が、信号無視や逆走など違反行為があった際に臨時に課されるようになる。また、認知症の疑いがあれば医師の診断が必要にもなる。一方、自主返納させるためにはどのようにすればよいだろうか。

75歳以上が違反すると臨時認知機能検査を課される

道路

12日、改正道路交通法が施行された。改正により、75歳以上の運転者に3年ごとの免許更新時に課されていた認知機能検査が、信号無視や逆走など違反行為があった際に臨時に課されるようになる。また、認知症の疑いがあれば医師の診断が必要となる。
 

相次いだ高齢者ドライバーによる事故。これを未然に防ぐためにも、今回の改正における認知症等へのチェック機能強化に期待が寄せられる。一方、医師の協力を仰ぐ必要もあり、課題も残す。法律に頼らずとも、まずは家族などが高齢運転者の運転免許証の自主返納を促すことも大事だろう。自主返納を促す際の注意点やコツについて、介護ジャーナリストの小山朝子氏がAll Aboutの『高齢の親に免許返納させた3つの作戦』で解説している。
 

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高齢ドライバーの免許返納には課題も

高齢ドライバーの免許返納を考えるにあたって、いくつかの課題があるが、小山氏は以下の2点を中心に説明している。

 
1点目は公共交通機関が整備されていない地域の高齢者にとって、買い物や通院のために車が必要不可欠なケースがあること。自宅と病院間を送迎するサービスなどはまだ稀なケースで、多くの場合はタクシーを利用するなど、各自で代替手段を確保しなければならないのが実情であるということを忘れてはならない。

2点目は、運転をやめるか継続するかは個人の尊厳に関わることでもあるという点だ。運転を自らの「生きがい」や「楽しみ」と考える人の場合は、それを取り上げてしまうことは、生きがいをなくしてしまうことにつながりかねない。
 
改正道路交通法では、75歳以上の運転免許更新時に認知症の疑いがあると判断された場合、医師の診断が義務づけられた。自分では「まだまだ若い」とは思っていても、年を重ねれば肉体は確実に衰えていくものであり、高齢者の定義である65歳以上の人には、健康診断のようなシステムで運転能力を自覚できる検査の義務づけをするなど、もっと早い段階からのスクリーニングが必要ではないか、と小山氏は問題提起をしている。

こうした課題を踏まえた上で、実際に家族が免許返納を促す際はどうすればいいのか。高齢の父親に免許返納を促すことができた、ある家族の「3つの作戦」を紹介している。
 

作戦1:家族全員による連携プレー

この家族は当初、妻である母親が夫である父親に何度も促していたが、父親は頑として聞き入れなかった。そこで母親は、実家によく遊びに来る、父親とも関係性の良い長女に相談した。長女は説得を試みたが、長女の心配する気持ちも父親には届かず、努力は徒労に終わったのだという。

次に長女は兄である長男に相談。普段は多忙で、両親とは疎遠だった長男だったが、母親と妹の頼みを受け入れ父親に話をしてみたところ、父親はようやく免許返納を受け入れたという。

小山氏は、これは介護にも言えることだといい、「誰か1人が抱え込む」より、家族や友人、介護専門職などの力を借りることは、免許返納の説得という状況においても得策で、いつもとは違う人間が対応することで、人の心が変わることはよくあると指摘している。
 

作戦2:費用対効果を訴えた

説得の方法にも工夫があった。この長男は、「もう高齢だから」「認知機能が落ちているから」という点からの説得ではなく、「お金」のことから切り出したという。

現在、車を所有していることで費用はどれくらいかかっているのか、具体的な数字とともに提示。加えて、父親が所有している車が古い車で、自動車税が割増される点なども強調した。

その上で親が所有する古い車を指し、「この車にそれだけのコストをかける価値があるのかどうか」、さらに、「自治体によっては運転免許の自主返納をすることで、タクシーやバスの割引券配布などの優遇措置がある」ことも伝えた。

「年々リスクが高まることに高額なお金を費やすなら、そのお金をほかの楽しみに使うのも悪くないのではないか」と提案してみたという。コストの話をしてから、これまで母親や長女の話に耳を貸さなかった父親の態度が変わったそうだ。
 

作戦3:「持たないことで若返る」と「父親の深層心理」

長男が、友人から聞いた「過去の思い出の品に執着しているのは、過去に生きていることでもある。不要品を捨てれば今の生活を楽しみ、それが若返りにもつながる」といった内容のインターネット記事が、父親の免許返納にも通じると考えた点も大きかったそうだ。

父親の青春時代は、車は憧れの存在で、車が一種のステイタスと若さの象徴であり、そのため、車を手放したくないという思いが強いのではないかと長男は気付いたのだという。そこで、世間話のように「時代も変わり、現代人にとって車はもはや憧れの存在ではない。いまは持たない選択をする人も増えた」と、それとなく父親に話したそうだ。その後、この父親は免許を返納し、車を業者に買い取ってもらったという。

小山氏は、この例のように、免許返納の一翼を担うのは、子世代の知恵と行動力、そして疎遠になりがちな親子がコミュニケーションをはかるようになったことにあるとしており、運転免許をもつ親を持つ子世代は、我が身のこととして考えてほしいと述べている。

【関連リンク】
高齢の親に免許返納させた3つの作戦

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