虐待の疑い、初の5万人突破…虐待に気づいた時の対処法と注意点

虐待の疑いがあるとして、全国の警察が2016年の1年間に児童相談所(児相)に通告した18歳未満の子どもは初めて5万人を突破し、5万4227人(前年比46.5%増)だったことが9日、警察庁のまとめで分かった。もし身近で虐待に気付いたら、どのように対処すればよいか。

児童相談所への通告、2004年から連続で過去最多

虐待の疑いがあるとして、全国の警察が2016年の1年間に児童相談所(児相)に通告した18歳未満の子どもは初めて5万人を突破し、5万4227人(前年比46.5%増)だったことが9日、警察庁のまとめで分かった。調査を始めた2004年から連続で増加していることになる。


増加の背景には、虐待への関心が高まりや、警察の通報などへの適切な対応が増えていることなどがあると報じられている。児童虐待防止法では、児童虐待を受けたと思われる児童を発見したときの通報(通告)は、国民の義務と定められている。子どもを守り、家族を救い、悲しい事件を生まないためには、こうした通報は今後も重要になる。
 

とはいえ、どのような時に虐待を疑えばよいのだろうか。女性支援を専門とするカウンセラーで、臨床心理士の福田由紀子氏は、All Aboutの『「もしかしてこの子、虐待されてる?」と思ったら』で子どもから発する虐待のSOSの見抜き方などを解説している。

 

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どのようなことが虐待に当てはまるのか

そもそも、虐待は、以下の4つに大別される。

  • 身体的虐待(殴る、蹴る、煙草の火を押しつける、熱湯や冷水をかける、長時間家の外に閉め出す等)
  • ネグレクト/養育放棄(子どもに必要な衣食住の面倒を見ない、必要な医療を受けさせない、家や車の中に放置する等)
  • 心理的虐待(子どもの人格を否定する暴言、言葉による脅し、激しい叱責、きょうだい間での差別的扱い、DVを目撃させる等)
  • 性虐待(性的な行為を強要する、性器を触る/じろじろ見る、性器や性交を見せる、ポルノを見せる、裸の写真を撮る等)
     

虐待が疑われた時にとるべき行動

虐待が疑われたら児童相談所に通報するというのが、周囲の大人ができる最も効果のある行動と福田氏は説明する。なお、子どもを特定するための情報は必要だが、通報者は匿名でも構わないという。
 

児童相談所は、虐待されている子どもを親から引き離すことのできる大きな権限を持っており、通報があると、児童相談所は48時間以内に子どもの安全確認をすることになっている。
 

子どもが発する虐待のSOS…違和感を大事に

一方、どのような行為が「虐待の疑い」になるのかわからない場合もあるが、通報した方がいいかどうかを専門家に相談することなども可能だ。
 

福田氏は、以下のような状況は虐待のサインに当てはまるとしている。

  • 顔や体に不自然な傷やアザがある
  • いつも服や身体が汚れている
  • 態度がおどおどしている
  • がっつくように急いで食べる
  • 頭をなでようとするとビクッと身構える
  • 年齢にふさわしくない性的な話をする
  • 表情が乏しい
  • 家に帰りたがらない
     

「大事にしてほしいのは、あなたがその子に感じる「違和感」です。「虐待の確信を持ってから」と通報を先延ばしにしていると、手遅れになるかもしれません。あなたが抱いた「違和感」を周りの人と共有しておくことも、子どもを見守る目を増やす、とても大切なことです。その子が通う小学校や幼稚園の先生たちの耳にも入れておきましょう」(福田氏)
 

また、子ども自身には声をかけるなど、気にかけているということを、明確に伝えたり、チャイルドラインの情報をメモで渡したりするのも良い対応だと、福田氏は述べている。
 

子どもから虐待を告白されたら

福田氏によると、虐待は家庭という密室の中で巧妙に行われており、口止めされていなくても、子どもは自分の被害を隠そうとする場合があるが、そうした状況でも子どもたちは「信頼できるかもしれないと感じた大人」に、かすかなサインを送っているという。虐待を受けている子どもは、基本的に大人を信用していないため、SOSを受け取ったら、慎重に、誠実に、信頼を裏切らないように関わっていく必要がある。
 

被害が深刻であれば「できるだけ早く、専門的な支援につなぐ」ことが緊急の課題。周囲の大人ができることは限られるが、まずは子どもに意向は聞く必要がある。必ずしも「大人が納得できる答え」が返ってこない場合も多いが、その気持ちをそのまま受け止め「あなたの力になりたい。そのために他の人の力も借りたい」と伝えてほしいと福田氏は述べる。
 

そのほかの注意点として福田氏は以下の点を挙げる。

  • 虐待を打ち明けられたことを「秘密にする」という約束はしない(子どもに「嘘をつかない」)
  • 加害者へ大きすぎるリアクションは控える
  • 虐待の内容を詳しく聞きすぎないこと(子どもに聞いていいのは「だれに」「何をされたか」だけ。意図せず子どもを傷つけてしまう場合もあるため)


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