松本さんと早見さんが線路に立ち入りで書類送検…

先日、松本伊代さんと早見優さんが、無断で線路に立ち入ったということで、書類送検されたとの報道がありました。線路への無断立ち入りは、鉄道営業法という法律で禁止されており、これに反したことを理由として刑事事件になってしまったようです。
 

書類送検という言葉はニュースで頻繁に見るのですが、これはどういう意味なのでしょうか。
 

テレビでよく聞く「書類送検」はマスコミ用語

書類送検というのは、マスコミ用語で、法律にはありません。
 

一般的に、ある犯罪が発生して、捜査機関(主に警察)が捜査を開始し、被疑者がこの人で、こんな被疑事実で・・・と証拠を収集していくわけです。この一連の作業は、最終的にその被疑者の刑事処分を決定するために行っています。刑事処分はおおざっぱに分けると起訴(裁判にする)と不起訴(裁判にしない)の2つです。そして、刑事処分は、必ず検察官が決定することになっています。
 

したがって、捜査機関は、捜査を開始した後に、被疑者はこの人で、被疑事実はこれこれでということについて、証拠とともに、検察官に送致するのです。送致を受けた検察官は、引き続いて行われる捜査の状況を見つつ、刑事処分をどうするか決めることになります。
 

この「検察官に送致」をマスコミ用語で「送検」と表現しているわけです。
 

そして、送検には2パターンあります。被疑者が逮捕されている場合の送検と逮捕されていない場合の送検です。後者のパターンを書類送検といわれているのです。

図
「送検」の流れ


 

逮捕されている時の「送検ルール」は厳格

逮捕されている場合の送検は、送検のルールが厳格です。具体的には、逮捕されてから48時間以内となっています。この際に、被疑者も検察官から言い分を聞かれる手続も行われます(弁解録取手続といいます。)。この手続を行う際に、被疑者自身も検察庁に連行されるのが通常です。テレビで、容疑者がパトカーなどで検察庁に送検されている場面をみますが、これは、まさに被疑者が弁解録取手続を受けるために検察庁に連行されているシーンなのです。
 

他方で、書類送検には明確な制限時間のルールが法律上ありませんし、送検にともなって被疑者の弁解を聞く手続もありません。法律上は、「速やかに書類及び証拠物とともに事件を検察官に送致しなければならない」とあるのみです(刑事訴訟法246条)。この点から、「書類送検」という用語が定着したのかもしれません。
 

送検と書類送検の違いは「逮捕されているか否か」にあり

では、「送検」となるか書類送検となるかの割り振りの基準が気になるところですが、結論としては、基準はありません。
 

つまり、どのような犯罪でも「送検」になるかもしれないし、書類送検になるかもしれないということです。なぜかというと、「送検」と書類送検の違いは、逮捕されているか否かの違いだけだからです。逮捕されているかどうかは、犯罪によって異なるわけでもありません。例えば、スーパーでお菓子を万引きしたとします。これは刑法の窃盗罪に該当する犯罪です。そして、万引きした際に警備員に見つかりその場で捕まったとします。これは現行犯逮捕ですから、法律上の逮捕です(警察官が令状を見せて行う逮捕と同じ)。そうすると、この万引き被疑者が送検されると、「送検」になります。
 

他方で、万引き被疑者がその場で逮捕されず、後に発覚したものの、警察官が逮捕までしないということもよくある話です。このような場合でも事件としては立件されていますから、検察官送致されます。この送検が「書類送検」となるわけです。
 

逮捕はどういう時にされるのか

では、逮捕されるか否かの違いは何でしょうか。

実はこれも犯罪によって違いはありません。逮捕は、被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があり(要するにある程度の嫌疑)、逃亡のおそれ又は証拠隠滅のおそれがある場合に行うことができるとされているにすぎません(刑罰の重さにより若干違いがあったり、現行犯逮捕や緊急逮捕については要件が異なるのですが、説明は割愛します)。
 

したがって、理屈上は、殺人の被疑者でも逮捕されないこともあり、したがって、書類送検もあり得るということになります。もちろんこれは理屈上の話で、殺人のような重大犯罪の場合で逮捕しないことは実務上ほぼあり得ません(ただし、被疑者が例えば病気で全く動けないといった特殊な状況でしたら、書類送検はあり得るかもしれません)。
 

書類送検された後はどうなる?

では、書類送検された後はどうなるのでしょうか。先ほど触れたように捜査が引き続き行われた上で、検察官によって刑事処分(起訴・不起訴の判断)が行われることになります。
 

仮に起訴になれば刑事裁判が始まります。その場合、被告人は法廷に出頭する必要がありますが、逮捕勾留されていませんので、被告人は、自宅から裁判所に向かうことになります。もっとも、裁判の流れ自体については逮捕勾留されている人と変わりありません。
 

仮に不起訴になれば、それにより刑事処分としては完了ですので、それまで通りの生活を以後も続けるだけのはなしです。