文科省の「天下り事件」は何が問題だったのか?国家公務員法とは

最近、文部科学省の官僚(元教育局長)が早稲田大学の教授として再就職したのが、違法な天下りだとされ、教授は辞任、早稲田大学も釈明会見を開くなどして、話題になりました。そこで、国家公務員の天下りのルールについて解説します。

「天下り」事件で早稲田大学も釈明会見…

文部科学省
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最近、文部科学省の官僚(元教育局長)が早稲田大学の教授として再就職したのが、違法な天下りだとされ、教授は辞任、早稲田大学も釈明会見を開くなどして、話題になりました。そこで、国家公務員の天下りのルールについて解説します。
 

天下りとは何か

「天下り」は法律用語ではありません。ざっくりいうと、公務員(特にエライ立場の)が退職した後に民間企業に就職することそのものや、役所による就職のあっせんを指し、官民が癒着することで、官が民に対して不当な便宜を図る温床になっているダメなことだ、というイメージです。
 

この点、内閣官房内閣人事局が公表している「国家公務員が知っておかなければならない再就職に関する規制」という冊子では「予算や権限を背景とした押しつけ的な再就職のあっせん等」を「いわゆる『天下り問題』」と説明しています。
 

どのような規制がされているか

国家公務員法では天下りに関し、次の行為を禁止しています。

① 公務員が、他の公務員や元公務員を企業(※非営利法人も含みますが、便宜上企業と言っておきます。)の何らかの地位に就かせるために、その公務員等の情報を提供等したり、地位に就かせるよう求める等する。

例:他の公務員の名前や職歴を提供する
 

② 公務員が、自分を利害関係のある企業の何らかの地位に就く目的で、自分に関することの情報を提供等したり、地位に就くよう要求等する。

例:自分の名前や職歴を提供する
 

③ 元公務員で、企業に就職した人が、在職していた組織の公務員に対して、再就職先に関する契約事務等について、職務上の行為をするように要求等する。なお、このような要求を受けた公務員は、監察官に届出をする義務がある。

例:天下りした企業の契約を有利にするよう要求する

(※規制の範囲などはさらに詳細に定められています。問題になっている方などは必ず詳しく確認して下さい)
 

①は公務員が、仲間を天下りさせることについての規制

②は公務員が、自分の天下りについての規制

③は天下りした公務員が、元の職場に対して、働きかけをすることの規制

なのです。

 

違反するとどうなるか

①と②の規制に違反した場合は、懲戒処分の対象になります。国家公務員の懲戒処分は、国家公務員法で免職、停職、減給、戒告と定められています。なお、不正な行為等の見返りとして、地位に就かせることを依頼した場合や求職活動を行った場合は、3年以下の懲役刑の処罰を受けます。これは刑罰ですので、窃盗や殺人などを犯した場合に受ける刑罰と同じ性質のものです。
 

③の規制違反については、不正でない範囲の(便宜を図る)行為を働きかけた場合だと10万円以下の過料という罰(※刑罰ではない罰です。刑罰ではないので前科になりません。)を受け、不正な(便宜を図る)行為を働きかけた場合は、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金となります(こちらは刑罰です)。
 

公務員は再就職できないのか

公務員が再就職できないかというと、当然そうではありません。政府は官民人材交流センターというのを設けて公務員の退職後の就職支援を行ったりしています。
 

早大と文科省の「天下り事件」は何が問題だったのか

早稲田大学天下り事件については、先ほど紹介した天下り規制に違反していることもさることながら文部科学省の職員が調査を受けるにあたり関係者に虚偽の供述をさせるなど隠蔽を図っていたことも明らかとなっています。
 

公務員が一生懸命隠蔽工作を図って発覚を免れようとしていたのです。これも報道されていますが、もっともっと強調され、問題視されるべきことのように思います。

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