ある芸能人の淫行疑惑が話題に
最近、あるお笑い芸能人が週刊誌に青少年との淫行疑惑を報じられ、釈明会見を行ったりして話題に上りました。ところで、このような場合にいわゆる淫行条例に触れるかどうかが話題になりますが、これはどのような条例なのか検討してみたいと思います。
青少年との淫行は条例で禁止されている
淫行条例などと言われますが、東京都ですと「東京都青少年の健全な育成に関する条例」(以下、東京条例)という名前で「何人も、青少年とみだらな性交又は性交類似行為を行つてはならない」と規定しています。
ここの青少年というのは、18歳未満の人をいいますから、18歳未満の人と「みだらな性交」又は「みだらな性交類似行為」をすると処罰されるのです(東京条例では、2年以下の懲役又は100万円以下の罰金)。
「みだらな性交又は性交類似行為」というのは最高裁判決で、青少年を誘惑し、威迫し、欺罔し又は困惑させる等その心身の未成熟に乗じた不当な手段により行ったり、自己の性的欲望を満足させるための対象として扱っているとしか認められないような性交又は性交類似行為と判断されています。
ここから分かるのは、真摯な交際をしている人同士の性交等まで処罰の対象にはしませんということです。
過失で未成年者と知らなくても処罰される場合も?
ところで、例えば千葉県の条例(千葉県青少年健全育成条例、以下、千葉条例)でも、いわゆる淫行が処罰されることになっているのですが、「青少年の年齢を知らないことを理由として・・・・・・処罰を免れることができない。ただし、当該青少年の 年齢を知らないことに過失がないときは、この限りでない」(千葉条例28条7項)という規定もあります。
この規定は、過失で未成年者と知らなかった場合でも処罰するという意味です。このような規定は、東京条例にありません。東京条例では過失が処罰されない、つまり故意がある場合(つまり、青少年だと知っている場合)しか処罰されません。要するに、千葉条例よりも処罰される範囲が狭いことになります。ちなみに、各都道府県の淫行条例では、東京条例の扱いがむしろ例外的で、過失も処罰するものが多いといわれています。
なお、青少年の言葉を信じただけでは、過失なしにはならないと言われています。
真剣交際はOK?年齢が近ければ大丈夫?
淫行条例が適用されるか否かのラインはどこか、というのはよく話題になるのですが、実は難しい問題です。例えば、18歳以上の人と青少年が真摯に交際していた場合は、先ほど紹介した最高裁判例の趣旨から処罰されないということになります。しかし、真摯な交際とは何かということもさることながら、真摯か否かは、人の心のなかの問題ですから、当人にしか分からないことです。裁判所がこれを判断にするにあたっては、結局、色々な客観的事情を総合勘案するというしかありません。
年齢が近いならOKと言われることがあるようですが、とはいえ、条例でそのようなルールになっていませんので必ずしもそうだといえません。年齢が近いということは、真摯な交際といえそうだという意味では離れているよりはOKになりやすいとはいえるかもしれません。もっとも、年齢だけでOKかNGかが決まる訳ではないのです。
青少年同士は大丈夫ということも
場所によってはOKなどという噂もあるようですが、これもほとんど信用できません。例えば、自宅とホテルとを比べて、前者だと真摯な交際だけど、ホテルはそうでないと言いやすくなるでしょうか。常識的にそのようなことにならないのは明らかだと思います。
ただ、青少年同士は(おおむね)OKです。なぜなら一般的に条例で青少年が条例違反の行為をしても処罰していないと規定しているからです(全ての条例を確認しているわけではありませんので、その点は気をつけてください)。東京条例だと30条です。
淫行条例、実は憲法違反?
結局、こんな場合はOKとかNGといった安直な結論にはならないということです。
すごく曖昧なんですね~、という声が聞こえてきそうですが、まさにその通りで淫行条例の問題点はここにあるのです。
刑罰は明確でなければならないという原理原則があり、これは憲法に由来する要請なのですが、かつては淫行条例がそれに反しているのではないかということも問題になりました(今も問題だとは思いますが)。実際に、先ほど紹介した最高裁判決で一部の裁判官が淫行条例は憲法違反だと意見している方もいました。