元旦に届けるためには12月25日まで
年賀状の受け付けが始まって一週間。日本郵便では、年賀状を元旦に確実に到着させるために、12月25日までに郵便局へ投函をするよう呼び掛けている。
一方、メールやSNSの発達に伴い、年賀状の利用者は年々減少しており、2017年用の当初発行枚数は前年比10.9%減の28億5329万枚となった。減少傾向に伴い、日本郵便では2017年1月2日の配達を取りやめることを決定するなど、年賀状を取り巻く環境には変化が見られている。改めて年賀状を送ることにはどのような意味が込められているのだろうか。
これに関して、ビジネスマナーや手紙の書き方に詳しいAll Aboutガイドの井上明美氏に解説をしていただいた。師走の忙しい時期、まだ年賀状の準備をしていないという人もいるかもしれないが、これを機に、年賀状の魅力を考えてみてほしい。
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そもそも「年賀状」とはどんな意味? 年賀状にまつわる言葉
「年賀状」と言いますと、新しい年を祝う手紙・はがきを真っ先に思い浮かべますが、この「年賀状」の「年賀」とはどのようないわれや意味をもつのでしょうか。
「年賀」とは
1 新年を祝うこと。また、その祝い。「年賀の客」《季 新年》
2 喜寿(77歳)・米寿(88歳)などの長寿の祝い。賀の祝い。
コトバンク『デジタル大辞泉』より
このような意味をもちます。2のようにその年齢・長寿の祝いという意もありますが、まずは、1の新年の祝い、年が明けたことへの祝いということを思い浮かべる方が多いでしょう。
元々、「年賀」というのは相手の家を訪問して直接会って挨拶を交わしたのが始まりとされています。夏目漱石の『我輩は猫である』の中にも「何でも年賀の客を受けて 酒の相手をするのが厭らしい」と出てきます。現代でも御年賀、御年始、年始回りと言えば、年頭の挨拶としてご近所や友人、知人、世話になった人などのところを訪ねることや新年を祝うために贈る品物のことを指しますね。この年賀の言葉を書いて送る書状・はがきが「年賀状」(年始状)というわけです。
「新年のご挨拶をご遠慮申し上げます」とは?
さて、そこで、身内に不幸があった場合に年賀状を出すことを控える際の言葉に「喪中につき新年のご挨拶をご遠慮申し上げます」「年始のご挨拶を控えさせていただきます」などの表現があります。
これは元来、新年の挨拶に出向いて身分の高い人に拝謁することができるのは、ごく限られた人のみに許されたことでした。しかし、自身の家に不幸があった場合は相手への面会を控えるという習わしが、先の「喪中につき新年のご挨拶をご遠慮申し上げます」「年始のご挨拶を控えさせていただきます」の元来の意味と言われています。
ここで言う「新年のご挨拶」や「年始のご挨拶」などの言葉も、「年賀」という語が新年の祝いという意味をもつために、言い換えて用いられている例です。
ほかにも年賀状に関する言葉で、時折言い換えられる言葉には次のような表現もあります。
「去年」と「昨年」
「去」には「離れる」とか「取りさる」といった意味があるために、「去年」は忌み言葉に通じる感があります。そのため、去年という表現を使わずに「昨年」「旧年」などの語に言い換えられるのが一般的なようです。
「賀詞」のいろいろ・注意点
新しい年を祝う言葉のことを「賀詞」と言いますが、この賀詞にも「謹賀新年」や「賀正」など、さまざまな言葉があります。
それぞれの言葉の意味を見てみましょう。
- 「謹賀新年」……謹んで新年のお喜びを申し上げる。
- 「恭賀新年」……うやうやしく新年のお祝いを申し上げる。
- 「賀正・賀春」……新年を祝う。
- 「迎春」……新春を迎える。
- 「頌春(しょうしゅん)」……新年をたたえる(「頌」はほめたたえる意)。
- 「賀」……祝う
- 「寿」……おめでたい
『最新 手紙・メールのマナーQ&A事典』(井上明美著)より。
新年を祝う言葉としてはどれでも使えるものですが、敬意の度合いという点では違ってきます。「賀」や「賀正」などの1文字、2文字の賀詞は、へりくだる意味の文字が含まれていないため、「謹賀新年」や「謹んで新春のお喜び・お慶びを申し上げます」などの表現よりも敬意は弱くなります。
このように、年賀状に関連した言葉にはさまざまな意があります。新しい年をともに祝うことが目的ですから、そう言葉にとらわれ過ぎなくてもいいものですが、その年に互いに初めて手にする手紙が「年賀状」ですから、その意味ではよりふさわしい言葉を選んでつづりたいものですね。(井上明美)